ステルスマーケティングの規制内容と注意点

更新日:2023.12.26スタッフブログ

ステルス(stealth)は、「こっそりした行為」や「内密」「忍び」を意味する言葉です。その意味通り、ステルスマーケティングは、企業による広告・宣伝とは分かりにくい宣伝行為を指します。昨今、このマーケティング手法は公平な売買取引を妨げると指摘され、2023年10月1日から法規制が導入されることになりました。この機会にステマや規制内容について理解を深めておけば、自社製品の宣伝活動を進めやすくなるでしょう。そこで今回は、ステルスマーケティングの概要を解説し、ステマ規制の具体的な内容やステマと見なさないための注意点・対策をご紹介します

ステルスマーケティングの概要

ステルスマーケティングの概要

ステルスマーケティング(ステマ)は、消費者に商品・サービスを広告・宣伝する方法のひとつです。具体的な手法には、いくつかの種類があります。以下では、ステマの特徴・主な種類や問題視される理由をご紹介します

ステマによる広告・宣伝の特徴

ステマによる広告・宣伝は、消費者に商品・サービスの購入を促していると気づかれにくいところが特徴的です。通常、商品・サービスを広告・宣伝する時は、企業名を公表して自社製品の魅力を積極的にアピールします。基本的にメーカーの立場から長所が強調されるため、消費者は販売促進を目的とした内容であると判断しやすくなります。

それに対し、ステマは、企業名を隠して自社製品を広告・宣伝するケースが一般的です。企業の関係者などが第三者を装う場合が多く、販売促進を意図していると気づかれにくい傾向が見られます。そのため、ステマを用いた広告・宣伝は、企業と無関係な立場の客観的な意見として消費者が参考にする特徴があります。

ステマの主な種類

ステマの種類は、大きく分けると「なりすまし行為」と「部外者への利益供与」の2つです

なりすまし行為

企業が自社の名前を出さず一般の消費者を装うパターンが該当します。第三者の立場にあると見せかけて自社製品を高評価し、あるいは他社が販売する類似品の評価を下げます。

部外者への利益供与

企業が関係者以外に報酬を支払ったうえで自社製品の宣伝を依頼する方法です。最近は、人気タレントやSNSで知名度のある人物に、好意的なレビューを発信してもらう事例が増えています。一般的に有名人の口コミは消費者への影響力が大きいと考えられ、商品・サービスの販売促進につながる傾向があります。

問題視される理由

ステマが問題視される理由は、売買取引で消費者の公正・合理的な判断を妨げる可能性があるためです。通常の広告・宣伝は企業名が明確に示され、消費者は販売促進に有利な情報が強調されていると判断できます。商品・サービスを選ぶ時は、宣伝内容に企業の意図が反映されていると考慮し、どれを購入するか冷静に決めやすくなります。

一方、ステマの場合、販売促進の意図が含まれているか的確に判断することは困難です。レビューが企業にとって有利な内容に情報操作されていても、消費者は客観的な評価と誤解する恐れがあります。消費者がレビューに販売促進の意図はないと誤解すれば合理的な判断は難しくなるため、ステマは公正な売買取引を妨げると問題視されています。

ステルスマーケティングの規制について

ステルスマーケティングの規制について

ステマ規制は、売買取引においてステマが消費者の合理的判断を阻害しているとの認識にもとづき導入が決定されました。以下では、この法規制が導入に至った経緯や具体的な規制内容をご紹介します

ステマ規制導入の経緯

ステマ規制に向けた動きは、消費者庁による「ステルスマーケティングに関する検討会」から本格的に始まりました。この検討会は、ネット環境やSNSの発展に伴いステマの問題が深刻化し、消費者庁が発足した議論の場です。2022年9月から、ステマを用いた広告・宣伝の問題点について話合いが進められていきます。

議論の結果は、同年12月28日公表の報告書で示されました。同報告書では、景品表示法にもとづきステマを不当表示に指定するのが妥当と述べられています。続く2023年1月には、ステマを不当表示として扱う告示案と運用基準案が公表されました。これらの案はパブリックコメントの手続きを経て正式な規制となり、最終的に2023年10月1日から施行すると決まりました。

参照:消費者庁「ステルスマーケティングに関する検討会報告書」(令和4年12月28日)
(参照2023-09-27).

具体的な規制内容

ステマを不当表示に指定する告示・運用基準は、禁止対象となる広告・宣伝の要件や法的に規制する目的を記載しています。

  • 事業者が自己の供給する商品や役務の取引について行う表示
  • 一般消費者が当該表示であると判断するのが困難と認められる表示

以上の要件を2つとも満たした表示は、不当なステマと見なされます。

次に、運用基準を見ると、消費者は事業者の表示であれば誇張が含まれると考慮して商品を選べるとの認識が示されています。それに対し、第三者の意見と誤認すれば合理的な判断は阻害されるため、不当表示の規制は必要であると指摘されています。以上の記載をふまえた場合、企業が第三者の表示と誤解される方法で消費者に自社製品を宣伝した時は、法的な規制を受けると理解できます

法規制に伴う注意点

ステマ規制が実施されると、違法行為は罰則対象になるため注意が必要です。事業者による宣伝行為がステマ規制に抵触した場合、消費者庁や都道府県から措置命令が出されます。消費者に向けてステマが行われたと公表され、事業者は再発防止を求められます。

また、措置命令に違反する行為は、刑事罰の罰則対象です。この場合、景品表示法により懲役や罰金が科されます。自社製品の広告・宣伝が不当表示に指定され消費者からの信用を失えば、企業にとっては大きな痛手になるでしょう。そのため、自社の商品・サービスを広告・宣伝する時は、ステマにならないか気をつける必要があると考えられます。

ステルスマーケティングと誤解されない為に

自社製品の表示方法がステマと見なされないためには、消費者から誤解されないように配慮することが大切です。以下では、不当表示を防ぐうえで企業に望まれる対策などをご紹介します

第三者と誤解されない配慮

ステマ規制で不当と見なされない対策としては、消費者に第三者の表示と誤解されない配慮が欠かせないでしょう。企業がネット上やSNSで自社製品を広告・宣伝する場合、企業名や「広告」の表記を添えれば、宣伝行為であると明示できます。その際、表記文字を目立たせると、消費者が見落として第三者の表示と誤解するリスクは減らせます。

社外のタレントや著名人に口コミを依頼する時も、「PR」や「プロモーション」の文字を記載してもらうと、消費者による誤解を避けるのに有効です。また、献品してレビューを求める場合、その旨を記してもらう必要があるといわれています。これらの配慮を怠らなければ、消費者には企業による宣伝行為であることが伝わりやすくなると考えられます。

従業員の教育指導も重要

企業がステマ規制に抵触する違法行為を防ぐには、社内における従業員の教育指導も重要です。ステマ規制について従業員の理解が浅いと、従業員が個人的にネットやSNSへ投稿した内容でも、第三者を装った広告と認識される可能性があります。企業が指示していなくても、投稿内容によっては不当表示と見なされるかもしれません。

そんなトラブルを防ぐうえで、ステマ規制に関する従業員の教育指導は不可欠と考えられます。社内ルールを作成して職場全体で周知徹底すれば、意図せず不当表示に指定されるリスクは低減するでしょう。ただし、個々の従業員が注意を欠かさなくても、ステマ規制に抵触する可能性はゼロではありません。

そのため、法的知識に詳しい人物による最終的なチェックも必要になると考えられます。自社製品の広告・宣伝が不当表示と見なされれば企業のイメージ悪化にもつながるため、しっかり対策することをおすすめします。

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