特商法改正によるネット通販事業者への影響は?

更新日:2022.11.08ビジネス豆知識

特商法改正によるネット通販事業者への影響は?

昨今、ネット上の通信販売などでトラブルが急増した背景をふまえ、特定商取引法が改正されました。ECサイトの運営者に限らず、通販事業に関わる人は影響を受けると考えられるため、改正内容を理解しておくことは重要でしょう。そこで今回は、特定商取引法の概要を解説するとともに、今回の法改正の主なポイントや販売関係の事業者が気をつけたい注意点などをご紹介します

特定商取引法の概要

特定商取引法の概要

特定商取引法とは、事業者と消費者との契約について一定の規制を設けた法律のことです。消費者の保護が主な目的であり、とくに消費者が損害を受けやすい取引事業が適用対象になっています。

特定商取引法の適用対象

日本で特定商取引法の適用対象に含まれる取引事業は、大まかに示すと以下の7つのタイプです。

      訪問販売
      通信販売
      電話勧誘販売
      連鎖販売取引
      特定継続的役務提供
      業務提供誘引販売取引
      訪問購入

これら7タイプは、数多くある取引事業のなかでも事業者と消費者の間でとくにトラブルが生じやすいといわれています。国は国民生活を守る立場にあり、悪質な勧誘行為などから消費者を保護するため特定商取引法を制定しました。

主な規制や義務規定

消費者の保護を主要目的とする特定商取引法は、取引における広告表示の規制や書面の交付義務に関する規定が中心です。広告表示については、もともと誇大広告などが禁止されていました。また、旧法によると、契約内容やクーリングオフに関する情報は、書面での通知義務が事業者に課されています。

通信販売で売買契約する際、事業者は撤回・解除に関する事項の表示が義務づけられています。また、事業者が売買契約に基づかない商品を送付した場合、消費者は14日間にわたり対象商品を保管しなければなりませんでした。特定商取引法の適用対象となる事業者は、これらの法的規制や義務規定に違反すると行政処分の対象になります。

法改正が実施された背景

今回、特定商取引法が改正された主な背景は、ネット上の通信販売における定期購入被害の増大です。実際に報告されている事例としては、お試しコースをアピールするケースが挙げられます。このケースは、スマホやパソコンの画面上で格安の販売価格を大きく表示しているところが特徴的です。

しかし、細部まで見ると、メイン画面から離れた場所に小さな文字で数カ月の継続購入などが契約条件として示されています。目に入りにくい位置や文字サイズであり、たいていの消費者が見落としてしまうと指摘されています。また、解約が可能であっても一定期間の試用が条件となるケースも見られ、法改正の必要が生じる結果となりました。

今回の主な改正ポイント

今回の主な改正ポイント

2022年6月から施行された新法の主な改正ポイントは、通信販売における規制強化をはじめとする次の4点です

1.通信販売の規制強化

ネット上の取引に限らず、通信販売に対する規制は強化されました。改正法では、規制対象になる広告表示事項が追加・拡大されています。「誇大広告等の禁止」について、今回の改正からは役務提供契約の撤回・解除に関する事項が含まれました。また新たに、申し込みの撤回・解除をなどを妨ぐための不実告知を禁止する旨が定められています

事業者が定める書式やウェブサイトで契約を申し込む場合(以下、特定申し込み)、所定の書面やウェブサイトの表示を義務づけました。さらに消費者には、特定申し込みの意思を表示した後の取消権が新たに設定されています。

2.クーリングオフの通知方法

取引契約の成立後にクーリングオフする際、以前は書面での通知が必要でしたが改正後は電子化した方法による通知も可能になりました。クーリングオフは、売買取引の契約締結後に一定期間内なら無条件で契約を撤回・解除できる仕組みです。通信販売だけにとどまらず、あらゆるタイプの取引事業で適用されます。

これまで特定商取引法では、電磁的な方法を用いた通知について明記していませんでした。今後は、この規定の追加により電子メール、FAX送信、あるいは必要なデータを記録したUSBメモリを送付する方法も認められます

3.行政処分の強化

今回の法改正に伴い、行政処分の内容も実効性を高める必要があるとの認識から強化されました。具体的な変更部分には、処分対象の範囲拡大や立入検査権限の拡充があります。処分対象は、業務停止命令あるいは業務禁止命令の適用範囲が、法人の役員まで広がりました

事業者が法律に違反すると、違反条項に応じて懲役または罰金のペナルティが課されます。個人と法人ともに、不実の表示や告知だけでなく、誤認表示があっても罰則対象になります。

4.海外執行当局への情報提供

改正法の施行により、行政機関は外国の執行当局に向けて、職務遂行に役立つと期待される情報を提供することが認可されました。この点に関しては、電子商取引の国際的な広がりが大きく影響しています。日本の消費者が海外業者とトラブルになるケースが増え、国内の行政機関は外国の執行当局との情報交換が欠かせなくなりました。

近年は、電子商取引を規制するうえでも国際協力が不可欠と見られています。その認識が今回の法改正に反映され、トラブル発生時には必要に応じた国家間での情報提供が認められました。なお「送り付け商法対策」では、すでに2021年7月から消費者に対する保管義務はなくなっており、対象商品は送付された直後から処分できます。また2023年6月以降は、事業者が交付する契約書も電子化が許容される予定です。

法改正に関する注意点

法改正に関する注意点

取引事業を手がける事業者が改正法に抵触しないためには、ネット販売を中心に広告などの表示方法について注意が必要です。とくに気をつけたい項目としては、商品やサービスの分量、販売価格、文字のサイズや色が挙げられます。

商品やサービスの分量

商品やサービスの分量は、契約内容や取引条件に合わせ、適切かつ明確に表示する必要があります。1回限りの販売契約であれば、取引する数量を示せば問題ないでしょう。一方、定期購入を契約する場合、1回ごとの数量だけでなく取引回数や契約の有効期間、さらに最終的な総量の明記まで求められます

有効期間を設けず無期限で自動的に契約更新するシステムなら、その旨の明記も怠れません。さらに無期限のケースでは、取引する分量について一定期間ごとの目安を示すのが良心的です。また、一定期間にわたり特定のサービスを提供する時は、期間内に利用できる回数の提示も不可欠です。

販売価格

販売価格の項目は、個々の商品・サービスの値段とともに、送料やトータルの金額の表記も必須です。定期購入の契約であれば、1回あたりの単価とともに、契約期間の全体でかかる総額も明記が求められます。契約期間中に料金設定が変わる時は、その旨も明確に示さなければなりません。

最初にお試し価格を設定する場合、試用期間の料金以外に価格設定を変更する時期や通常価格の表示も必要です。また、有効期限がなく無期限で自動更新される時は、上記の分量と同じく一定期間ごとの目安となる価格の記載が望まれています。料金の支払い関係では、支払い方法や支払い時期、さらに前払いか後払いかまで詳しく示すことが必要といわれています。

文字のサイズや色

今回の改正法では、消費者の誤認につながる行為は禁止です。そのため、事業者は広告表示などで用いる文字のサイズや色にも配慮が求められます。法規定は、これらの項目について「その表示事項の表示それ自体並びにこれらが記載されている表示の位置、形式、大きさ、及び色調等を総合的に考慮して判断」すると記しています。

この記載にしたがうと、文字のサイズや色をはじめ、表示する場所や形式まで工夫する姿勢が欠かせません。消費者が見落とす可能性の高い表示方法は認められず、可能な限りの分かりやすさが求められていると理解できます。また、定期購入契約で解約条件を設ける場合、「お試し」や「いつでも解約可能」といった表現は契約内容の誤解を招くと見なされます。他にも新たな禁止事項が増えたため、この機会に詳細を確認しておくとよいでしょう。

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