プレゼンティズム・アブセンティズムの原因と対策
更新日:2022.11.09ビジネス豆知識企業の生産性を測る方法のうち、従業員のパフォーマンスに焦点を当てた生産性評価の指標として「プレゼンティズム」と「アブセンティズム」というものがあります。とくにプレゼンティズムが企業に与える損失の割合は高く、健康経営に取り組むうえでは早急な対策が必要です。今回は、プレゼンティズム・アブセンティズムが発生してしまう原因や改善のメリット、対策などを紹介します。
目次
プレゼンティズムとアブセンティズムとは?
生産性向上、健康経営の観点から注目が集まっている言葉、「プレゼンティズム」と「アブセンティズム」。まずは、それぞれの言葉の意味や、注目されている背景などをご解説します。
プレゼンティズムとは
プレゼンティズムとは、英語の「presenteeism」が由来となっており、「疾病出勤」を意味します。何らかの病気や疾患など、健康上の問題を抱えつつ仕事に従事している状態を表す言葉です。辛うじて出勤することができていても、集中力の低下によるケアレスミスや作業効率の低下などを引き起こす恐れがあります。たとえば、風邪の引き始めで咳が出て仕事に集中できない状態や、片頭痛、二日酔い、花粉症、月経痛、PMSなどもプレゼンティズムに含まれます。
アブセンティズムとは
アブセンティズムとは、英語の「absenteeism」が由来となっており、「欠勤」を意味します。心身の不調によって、仕事自体を行えない状態を表す言葉です。いわゆる欠勤や休職、遅刻、早退などを指します。従業員のうち、ひとりでもアブセンティズムの状態が出た場合、残された従業員の負担が増えたり生産量の低下を招いたりすると考えられます。
プレゼンティズムが発生してしまう背景
では、なぜプレゼンティズムが発生してしまうのでしょうか。その背景には、古くから日本社会に根深く残っている「多少の体調不良くらいでは欠勤は許されない」という企業風土があります。
自分が休むことによって仕事仲間に迷惑がかかることや、仕事が遅れてしまうことなどを考えて、その責任感から無理して出勤してしまう人が多いようです。任されている仕事へのプレッシャーや不安が、プレゼンティズムを発生させているといえます。プレゼンティズムやアブセンティズムを改善するためには、このような古い企業風土を、企業主体となって改める必要があるといえるでしょう。
プレゼンティズムが問題視されている理由
一般的に、明らかに人手が不足しているアブセンティズムのほうが、生産性損失への影響が大きいと思われる傾向にあります。しかし、近年はアブセンティズムよりもプレゼンティズムのほうが、はるかに生産性損失が大きいということが、国内外の研究で分かってきました。ここでは、プレゼンティズムが問題視される理由についてご紹介します。
周囲に理解されづらい
咳や鼻水など、目に見えて分かりやすい不調もありますが、周囲に分かりづらい体調不良を抱えている場合があります。とくに片頭痛や月経痛など、目に見えないうえに個人差がある不調は、理解が得られにくいでしょう。従業員が体調不良を抱えていることを知らぬまま、いつも通り仕事を任せてしまうと、思わぬミスやトラブルに発展してしまうことがあります。このような生産性の低下が続けば、企業にとって大きな損失になるでしょう。
長期的な労働生産性の低下
プレゼンティズムを軽視してしまうと、従業員の体調が万全ではない状態が続いたり、悪化させてしまったりする可能性が高くなります。プレゼンティズムを長引かせると、労働生産性や業績の低下に大きく関わります。従業員の本来のパフォーマンスが十分に発揮できない状態が長引けば長引くほど、生産性損失の長期化につながってしまうのです。プレゼンティズムの問題解決は、企業にとって深刻な課題といえるでしょう。
医療費負担の増加と人材不足
プレゼンティズムの問題は早急に解決しないと、さらに重大な病気を招いてしまうことがあります。プレゼンティズムの状態が続くと、うつ病などのメンタルヘルス疾患や、心臓病などの冠動脈疾患を患うリスクが高くなるという研究結果もあるといいます。その場合、通院や入院が必要になったり、退職を迫られたりすることもあるでしょう。つまり、プレゼンティズムを軽視してしまうと、企業が負担する医療費や保険費の増加や、新たな人材確保・育成のためのコストなど、大きな損失につながる可能性があるのです。
プレゼンティズムとアブセンティズム改善のメリット
企業にとってさまざまな悪影響を及ぼす恐れのある、プレゼンティズムとアブセンティズム。ここでは、企業が主体となってこれらの問題を改善させるメリットについてご紹介します。
医療費や保険費の削減
プレゼンティズムとアブセンティズムの問題の解決を後回しにすると、新たな病気を引き起こしたり悪化させたりするリスクが伴います。通院が必要になれば、その分企業の医療費や保険費の負担が増えてしまうのです。従業員が健康に仕事に従事できるようになれば、医療費や保険費の費用を削減できます。
従業員の退職リスクの軽減
プレゼンティズムやアブセンティズムが長引いたことにより病気が悪化してしまった場合、病気を理由に退職してしまう従業員が出る恐れがあります。病気を理由に退職する従業員を減らすことができれば、新しい人材を探したり採用・育成したりするコストの削減にもつながるでしょう。
労働生産性の向上
従業員一人ひとりが、十分にパフォーマンスを発揮できる状態が続けば、労働生産性の向上につながります。従業員の労働意欲の向上や企業の業績アップにもつながるため、企業にとって大きなメリットといえるでしょう。
企業のイメージアップ
病欠や体調不良の人が多い職場は魅力的とはいえません。従業員が皆生き生き働いている企業は、従業員や求職者などからのイメージアップを狙えるでしょう。
プレゼンティズムとアブセンティズムの対策
プレゼンティズムとアブセンティズムの対策として、健康経営の促進は欠かせません。健康経営とは、経営の視点から企業が主体となり従業員の健康を配慮したり管理したりすることです。
健康経営では、企業を支える従業員の健康を企業が支えることで労働生産性や業績を向上させ、さらには、企業イメージアップにつなげるという考え方をします。健康経営の取り組み内容は企業により異なりますが、具体的な内容としては以下が挙げられます。
- 健康診断の受診率向上
- 再検査費用のサポート
- 食事や運動のサポート
- 休暇制度の見直し
- ヘルスリテラシー向上のためのセミナーやイベントの開催
まずは、プレゼンティズムとアブセンティズムの改善のみに焦点を当てずに、従業員が健康で快適に仕事を行えるような環境を整えましょう。健康経営の実現に向けたこのような取り組みを続ければ、さまざまな問題の予防につながります。つまり、健康経営実現のためのステップを通して従業員一人ひとりが健康になることが、プレゼンティズムやアブセンティズムの改善の近道になるのです。
まとめ
企業の生産性を測る指標である、プレゼンティズムとアブセンティズムについてご紹介しました。プレゼンティズムが企業に与える生産性損失はアブセンティズムよりも大きく、早急な解決が求められています。これらの問題の解決には、生産性と健康を同時にマネジメントしていく健康経営の促進が欠かせません。プレゼンティズムとアブセンティズムの対策として、健康経営の実現に向けて取り組みを進めてみてください。
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