企業版ふるさと納税とは?方法やメリット
更新日:2023.03.16ビジネス豆知識各メディアで「ふるさと納税」の返礼品が話題ですが、法人向けならぬ「企業版ふるさと納税」があることをご存じでしょうか?これは個人向けとは異なり、寄附可能な自治体に制限があったり、返礼品や税額控除などの内容が変わったりします。本記事では、企業版ふるさと納税の仕組みや基礎知識、各自治体による活用事例などをご紹介します。
目次
企業版ふるさと納税とは?
企業版ふるさと納税とは、自治体が実施する「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業(以下、地方創生事業)」に寄附することで、法人税などの税額控除が受けられる制度をいいます。対象となるのは民間企業であり、地方活性化を目的として2016年4月に開始された制度です。
企業版ふるさと納税の正式名称は、「地方創生応援税制」です。“応援”という言葉にも意味があり、基本的に寄附を行った企業は、経済的利益を得ることを禁じられています。法人税や法人住民税の税額控除は受けられますが、自治体からの返礼品は用意されていません。あくまでも地方創生を“応援”する立場で寄附することになります。
具体的な制度活用の流れは、以下となります。
□STEP1.自治体が地方版総合戦略を策定
□STEP2.自治体が地域再生計画(地方創生事業)を企画立案
□STEP3.自治体が企業に寄附依頼を行う
□STEP4.自治体が地域再生計画を内閣府に提出・承認
□STEP5.自治体が地方再生事業を実施
□STEP6.地方創生事業に対して企業が寄附
□STEP7.自治体が発行した領収書に基づいて、税務署への申告を行う
□STEP8.国と自治体が税額控除を行う
実際に寄附を行うのは、STEP5の「自治体が地方再生事業を実施」したタイミングとなります。これは事前に事業費を確定させる必要があるためです。ただし、寄附できるのは「企業の本社が所属していない自治体」に限られます。寄附自体は可能ですが、企業版ふるさと納税による税額控除は受けられないため注意しましょう。
また、東京都および首都圏・中京圏・近畿圏といった日本三大都市圏の自治体は、地方交付税の不交付団体にあたります。これらの自治体は企業版ふるさと納税の対象外となり、たとえ寄附しても税額控除は受けられません。地方創生事業への寄附を検討する場合、寄付先が企業版ふるさと納税の対象自治体であるかしっかりと確認しましょう。
個人向けふるさと納税との違いは?
一般に知られるふるさと納税は、個人が自治体に寄附し、返礼品および税額控除が受けられる制度です。ここでは、個人向けふるさと納税と、企業版ふるさと納税の違いを解説します。
返礼品の有無
個人向けふるさと納税は、少額の寄附でさまざまな返礼品を受け取れることが話題となりました。一方の企業版ふるさと納税は、寄附の見返りに経済的利益を得ることが禁止されています。返礼品などは用意されていませんが、寄附額の6割にあたる税額控除が受けられます。
その内訳は、通常の寄附による損金算入が3割、企業版ふるさと納税による税額控除(法人住民税+法人税が2割、法人事業税が1割)が3割、合わせて6割となります。例えば、企業が2,000万円を自治体に寄附した場合、実質負担額は800万円です。返礼品が用意されていない分、税制面に大きなメリットがあるわけです。
寄附額の下限
個人向けふるさと納税は、寄附額が2,000円以上でなければ税額控除を受けられません。それに合わせて、2,000円以上相当の返礼品を用意する自治体が大半です。対する企業版ふるさと納税は、10万円を寄附額の下限としています。企業目線で考えると、比較的利用しやすい制度といえるでしょう。
もうひとつ、企業版ふるさと納税を利用するメリットがあります。日本政府は地方自治体に対し、企業版ふるさと納税を利用した民間企業を、Webサイトなどで公開するよう促しています。つまり企業は、10万円の寄附で企業PRが行えるわけです。一般的な 広告宣伝費よりも安くなるほか、「CSR(企業による社会貢献活動)に取り組む企業」というイメージを周知できます。
また、企業版ふるさと納税による税額控除には、控除額の上限が存在します。
□法人税:寄附額の1割かつ法人税額の5%が上限
□法人住民税:法人住民税法人税割額の20%が上限
□法人事業税:法人事業税額の20%が上限(地方法人特別税廃止後は15%)
寄附額が各税金の控除上限を超える場合は、一定額しか控除されません。各上限を加味した上で、どれだけの額を寄附するか精査しましょう。なお、PR活動の一環で企業版ふるさと納税を利用する場合、申告時の勘定項目は広告宣伝費となります。
企業版ふるさと納税を利用する際の注意点
企業版ふるさと納税を利用する際は、以下の注意点を抑えておきましょう。
□返礼品などは一切用意されていない
□対象外となる自治体がある
□ステークホルダーの理解が必要
上記2点は先述しているため、「ステークホルダーの理解」について触れます。前提として、企業が行う寄附は、事業活動とは因果関係を持ちません。PR活動の一環で利用しても、寄附した分だけ利益が減るのは必然でしょう。これを株主や社員などのステークホルダーが良しとするかは別問題です。
よって、自治体の地方再生事業に寄附する前段階で、ステークホルダーから理解を得ることが求められます。関係者への説明責任を果たさずに、無断で寄附を行った場合は、ステークホルダーの信頼を失う可能性があるでしょう。また、自治体への寄附を隠し通すことも不可能です。これは寄付金を経費に計上するため、決算書類にその旨が記載されるためです。
企業版ふるさと納税は2016年に開始された制度であり、未だ知名度が高いとはいえません。そのメリットを理解するステークホルダーは少なく、「なぜわざわざ寄附するのか?」と疑問を持つ方もいるはずです。これから寄附を検討するならば、制度を利用するメリットや配当・給与、返済計画への影響をステークホルダーに説明し、関係者の理解を得た上で行いましょう。
企業版ふるさと納税の活用事例
ここでは、企業版ふるさと納税の活用事例をいくつかご紹介します。
新生Jヴィレッジによる地方創生推進プロジェクト(福島県)
東日本大震災で被災した福島県による地方再生事業です。こちらは震災当時、原爆事故の対応拠点となっていたスポーツトレーニングセンター「Jヴィレッジ(福島県双葉郡楢葉町)」を全天候型サッカー練習場に整備するプロジェクトとなります。2016年から事業を開始し、3年後の2019年に整備が終わりました。
結果、同施設の所在地である双葉地域の交流人口および雇用創出を実現しました。本事業に寄附した代表企業は、「株式会社ツルハ」や「武田薬品工業株式会社」、「株式会社アドバンス」などの計82社です。福島県は「Jヴィレッジ」を復興のシンボルとして扱い、それに共感を示した企業が寄附を行いました。
「佐久の空が熱い!」バルーンを活用した交流人口創出プロジェクト(長野県佐久市)
長野県・佐久市の地域イベントである「バルーンフェスティバル」において、漫画「北斗の拳」のキャラクターデザインを取り入れたPR用バルーンを作成するプロジェクトです。これには同市出身の原作者である「武論尊」氏および作画担当の「原哲夫」氏が賛同し、キャラクターデザイン画を無償で提供しました。
本事業の推進により、2020年における「バルーンフェスティバル」の観客動員数は約31万人に増加しました。2016年時点での観客動員数が約26万人であったため、約4万人を新たに動員したことになります。この様に、有名クリエイターとコラボレーションする地方創生事業は少なくありません。さまざまな手法で地域に人を呼び込み、地方創生に取り組んでいます。
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