「ピグマリオン効果」で部下のモチベーション向上
更新日:2023.04.13ビジネス豆知識部下のモチベーションをアップさせるためには、ピグマリオン効果を活用するのがおすすめです。ピグマリオン効果とは、期待された人間はそうでない人間よりも優れた成果を出しやすくなるというものです。ピグマリオン効果を活用することで、部下の能力を最大限に引き出せます。こちらでは、ピグマリオン効果の働きについてお伝えします。
目次
ピグマリオン効果とは
ピグマリオン効果とは、他者から期待された人間は、期待されなかった人間と比べて、優れた結果を出しやすくなるというものです。アメリカの教育心理学者ロバート・ローゼンタールによって提唱されました。ギリシア神話のキプロス王ピグマリオンが、自らつくった彫刻を愛し続けた結果、本物の人間になった話が由来になります。「教育期待効果」や「ローゼンタール効果」と呼ばれるケースもあります。
ローゼンタールは、小学校のあるクラスを対象に知能テストを行いました。この時行われたのは一般的な知能テストですが、ローゼンタールは学級担任に対して「今後成績が伸びる生徒がわかるテストだ」と説明します。
テストの後、結果に関係なく無作為に「成績が伸びる生徒」が選ばれ、教師に伝えられました。教師が選ばれた生徒たちに対して期待を込めて指導した結果、実際に生徒たちの成績が向上します。
生徒たちの成績が伸びたのは、教師が選ばれた子どもに対して期待を示したため、それに応えようとしたからだと考えられています。適度な期待は相手のやる気を引き出し、成果をあげてくれるのです。現在ピグマリオン効果は、教育現場だけでなくビジネスのマネジメントや人材育成にも応用されています。
ピグマリオン効果発見のきっかけとなったネズミの実験
ピグマリオン効果が発見されるきっかけとなったのは、1964年に行われたネズミの迷路実験です。ローゼンタールは学生に対し、利口な系統のネズミと利口でない系統のネズミを伝えます。すると、利口だと定義づけられたネズミのほうが、利口でないと定義づけられたネズミよりも良い結果を出しました。
ローゼンタールは利口なネズミに対して学生は丁寧に接し、そうでないネズミにはぞんざいに接したため、能力に差がついたのだと考えます。ネズミの実験は人間にも当てはまるのではないかと予想し、教育現場で実験を行った結果、ピグマリオン効果が発見されました。
ゴーレム効果とは
ピグマリオン効果と反対の効果を生むものに「ゴーレム効果」があります。こちらは、期待を込められない人間は、そうでない人間に比べて優れた結果を出しにくいというものです。ピグマリオン効果と同じく、ローゼンタールによって提唱されました。ユダヤの伝承に登場する、額の文字を消されると泥に戻ってしまう人形(ゴーレム)が元になっています。
ローゼンタールはピグマリオン効果の実験に続き、成績の良い生徒と成績の悪い生徒を分け、担任教師に対して反対に伝える実験を行いました。担任教師がそれを信じて指導した結果、実際に成績の良かった生徒の成績が下がり、悪かった生徒の成績が上がります。実験の結果、期待された時だけでなく、期待されなかった時も生徒の出す結果に影響があるとわかりました。
ゴーレム効果に陥ると人間の能力は下がってしまうため、部下や子どもを教育する際はご注意下さい。
ハロー効果やホーソン効果との違い
ピグマリオン効果と似たものに、「ハロー効果」や「ホーソン効果」があります。
「ハロー効果」とは、相手の目立つ特徴に影響されて印象が変化することです。有名大学出身の方が業務の始まる前から仕事ができそうだと評価されたり、ヨレヨレの服を着ている方が気配りのできなそうな人物だと評価されたりといった例があります。また、先生や弁護士といった肩書きがあると、実際以上に正しい人物だと評価をしてしまう傾向があるため、注意が必要です。
ハロー効果は、無意識に働きかける点でピグマリオン効果と共通しています。しかし、ピグマリオン効果が期待することで相手を変えるのに対し、ハロー効果は相手の特徴によって自分の評価が変わるという違いがあります。両者の混同に気をつけましょう。
一方、「ホーソン効果」は、相手から注目された際に、期待に応えるために成果を出そうとする心理を指します。ピグマリオン効果が相手の期待を感じ取って報いようとするのに対し、ホーソン効果は自分への注目が嬉しくて努力するのが特徴です。医療の場面で使われるケースが多くなります。ビジネスでは、ライバルがいたり、競い合う環境にいたりすると、ホーソン効果が期待できるとされています。
ぜひ、ピグマリオン効果と合わせてハロー効果やホーソン効果をビジネスに活用してみて下さい。
ピグマリオン効果の効果的な活用方法
ピグマリオン効果をビジネスに活用するにはどうすれば良いのでしょうか?
ピグマリオン効果を発揮するために重要なのは、上司が部下を仕事のできる社員だと信じることです。加えて、その信念に従って部下に好意的な態度で接します。さらに、部下に対してあなたは仕事ができると伝えて励ますことで、部下のやる気を引き出せます。
たとえば、営業成績の悪い部下がいる場合、上司は「もっと良い成績出せる能力がある」と期待することが効果的です。期待することで上司は無意識に部下の面倒をよく見るようになり、期待を感じ取った部下も応えようと頑張ります。結果的に、成績が上がりやすくなるのです。
上司が部下を信じていないと、指導内容が甘くなってしまいがちです。また、些細なミスを厳しく叱責すると、部下のモチベーションが下がってしまいます。部下を信頼して励ましながら接することで、部下の能力を最大限に引き出せます。部下の能力を伸ばしたい時は、ぜひピグマリオン効果を活用してみましょう。
ピグマリオン効果を自己暗示に使う
ピグマリオン効果は自分にも活用できます。たとえば、スポーツ選手は試合の前に大きな目標を宣言する場合もあります。宣言することで自分に期待できるようになり、望む結果を出しやすくなるのです。
また、小さな目標を達成し続けることも、自分への期待を高めることにつながります。「15時までにこの仕事を終わらせる」「資格に関する本を読み切る」といった目標を一つずつ達成することで、自分への期待値が上がり、ピグマリオン効果が期待できます。
モチベーションがなかなか上がらない方は、ピグマリオン効果を発揮するため、自己暗示を行ってみてはいかがでしょうか。
ゴーレム効果に注意する
ゴーレム効果によって部下の能力が下がってしまうケースもあるため、注意しましょう。たとえば、避けたいのは同僚や顧客がいる前で叱責することです。人前で大げさにミスを注意すると、部下のモチベーションは下がり、成果を上げにくくなってしまいます。
また、仕事内容ではなく人格を否定することも避けて下さい。「こんなこともできないなんてだめなやつだ」、「お前は使えない」といった否定をされると、部下は落ち込んでかえってミスが増える可能性があります。また、とげのある言葉や大声で叱るのも避けたほうが無難です。
ほかには、実績を評価しないこともモチベーションダウンを招きます。新しい契約を結んだり、業績が上がったりしても、上司の反応がないと部下のやる気が上がりません。部下が成果を上げた時は、ぜひ褒めてモチベーションアップに取り組んでみましょう。
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