ESG経営に企業が取り組むメリットと問題点
更新日:2023.04.19スタッフブログ最近のビジネスシーンに登場する「ESG」とは、環境・社会・ガバナンスの3つを意味する言葉です。これらを意識した投資家が増えていることから、企業側も新しい経営スタイルとしてESGに注目しています。これからESG経営に取り組むのであれば、それぞれの言葉の意味合いや期待される効果について理解しておくと参考になるでしょう。そこで今回は、ESGの概要とともに企業で取り組むメリットや注意したい問題点をご紹介します。
目次
ESGの概要
ESGは、Environment(環境)・Soial(社会)・Governance(ガバナンス)の頭文字を組み合わせた言葉です。ビジネスシーンでは、企業経営や投資判断の観点を表現する時などに用いられます。
言葉の意味合い
ビジネスの場でESGが指し示す「環境」「社会」「ガバナンス」の意味合いは、およそ次の通りです。まず「環境」では、企業が取り組む事業活動のうち地球環境にかかる負担の軽減を意識しています。実際に環境への影響が懸念される問題としては、CO2を含めた温室効果ガスの排出や過度な資源利用が知られます。
「社会」について企業が意識している内容は、主に従業員や地域住民の人権に関する問題です。いくつか代表的な事業活動を挙げると、雇用条件の改善や労働者間の不平等の撤廃があります。また「ガバナンス」の部分では法令順守や情報開示を意識し、不正や不祥事の隠ぺいが起きない透明な企業運営を目指します。
ビジネスにおける使い方
近年のビジネスシーンで広まっているESGの使い方は、おおまかに分けると「ESG経営」と「ESG投資」の2つです。ESG経営は、環境・社会・ガバナンスの3点に配慮した事業スタイルを指します。実際、企業が環境問題をはじめ不当な雇用形態の是正や業務の透明化にも取り組む場合などに使われます。
一方、ESG投資は、どれくらい企業が環境・社会・ガバナンスの3点に取り組んでいるかを主な判断基準として、投資先を決める方法です。それぞれの企業の知名度や業績よりESGへの貢献度を重視したスタイルは、この名で呼ばれます。2006年に国連がESGの観点を投資判断の新基準として紹介するとESG投資が増え、企業がESGを意識する傾向も強まり始めています。
SDGsとの違い
ESGとSDGsとの違いは、いろいろな活動を展開する行動主体の差異です。ただ言葉の意味合いが近く、よく混同されます。先述の通り、ESGの主体は企業または投資家です。環境・社会・ガバナンスを意識した事業活動は企業の担当分野であり、ESGの3点を基準に投資先を判断する役割は投資家が担います。
それに対しSDGsは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発ゴール)」の略語であり、世界各地の国や地域が主体です。2015年に国連サミットで採択され、世界全体が2030年までに持続可能な社会の実現を目指します。具体的な活動内容は類似する部分もありますが、SDGsの主体は企業や投資家に限られず広範囲に及びます。
企業にとってのメリット
企業がESG経営に取り組むと得られる大きなメリットは、投資分野における評価や社会的なイメージの向上です。また、想定外の経営リスクを減らせる利点もあると考えられています。
投資分野における評価向上
ESGの3点に意識を傾ける経営スタイルは、投資家からの評価が向上する効果を期待できる方法です。もともとESGを視野に入れた投資判断は、1920年代に米国内で登場したといわれています。それから半世紀以上が過ぎた1990年代、この考え方は環境問題への関心が高まるにつれ広まっていきました。
その後、本格的に普及した要因は、2006年当時の国連事務総長であったコフィー・アナン氏による「責任投資原則(PRI)」の発表です。そのなかでESGの観点が示されると、投資家の間で新たな判断基準のトレンドになりました。この動きに合わせ企業もESGの考え方を取り入れたところ、投資分野における評価が上がる状況に結びついています。
社会的なイメージアップ
ESGを考慮した事業活動は消費者の評価につながる可能性があり、社会的なイメージアップにも有効です。ここ数十年、環境や人権に対する問題意識は社会全体で強まっています。国内外のメディアの多くは地球温暖化や労使間トラブルに焦点を当て、その影響は世界各地の消費行動にも反映されています。
よく各方面で欧米より動きが遅いといわれる日本も例外でなく、最近の国内企業はエコ活動や社内の環境整備に熱心です。新商品やサービスを開発する時も、ESGへの意識をアピールするケースは以前より増えました。この経営姿勢が消費者層から理解された時は、企業のブランドイメージや信頼性の向上につながっています。
想定外の経営リスク低減
企業がESGの3点を重視しながら事業活動を進めると、想定外の経営リスクを低減するにも効果的です。昨今は通信技術が著しく発達し、不正や不祥事が発覚した時に関連情報が消費者層へ伝わるまで多くの時間はかからなくなりました。また、ここ数年、コンプライアンス違反を批判する社会的な声は厳しくなったといえます。
そんな状況でも、ESG経営を積極的に進める企業は社会に好印象を与えるメリットが見込めます。とくにガバナンスを重んじる姿勢は、消費者からの信頼を得るのに大きな効果を発揮すると考えられます。これらの点をふまえた場合、ESGに力を入れると直接の利益は得にくいものの、トータルでは多くのメリットがあるといえるでしょう。
注意したい問題点
企業がESG経営に取り組むなかで注意したい問題点は、短期的な効果が見えにくいところです。いまは複数の指標が乱立しているため、適切な評価を得られているか判断することも難しくなっています。
短期的な効果が見えにくい
一般的にESG経営は、地道な活動を長く続ける姿勢が求められる方法です。即効性がなく、十分な成果が上がっているか短期間では判断しにくい特徴があります。ビジネスの場においてESGの3つは、いずれも長期的な目標として設定するのに向いていると見られています。いろいろな新システムを導入する時と同じく、すぐ効果を実感できるとは限りません。
職場で実践し始めてから即座に結果が出なくても、焦りは禁物です。基本的な特徴を考慮すると、長い目で見続ける心がまえは欠かせないでしょう。そのため、あくまで長期的な目標として取り組む意識が必要になります。
複数の指標が乱立
現在のESG経営は、いくつも評価の基準となる指標が乱立している点も大きな特徴のひとつです。さまざまな企業のESGについて評価する際、いまのところ複数の調査会社で算出した指標が参考データに使われています。ESG投資のニーズは多岐にわたり、まだ統一的な指標はありません。
現時点で共通の評価基準は確立していないため、各企業で取り組んでいる事業活動が適切に評価されているか判断するのは難しい状況です。その意味でも、ESG経営の成果について即断するのは妥当でないと考えられています。さらに現在、ESGの担い手は大企業が中心です。
その背景には、大規模な資金力があると指摘されています。予算面に余裕がないと環境に配慮した設備投資などは容易でなく、これから中小企業にも浸透するかどうかは評価基準の統一とともに将来的な課題として挙げられています。今後、ESG経営に取り組む場合、長期的な視点を忘れず資金繰りも工夫しながら各種事業活動を進めるとよいでしょう。
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