人的資本経営とは?戦略や手法、開示方法を紹介

更新日:2023.10.04ビジネス豆知識

人的資本経営とは?戦略や手法、開示方法を紹介

人的資本経営は、人材を資本と認識する経営戦略の考え方です。以前から人材は企業にとって重要な資源と見なされてきました。ただし、この概念は、単に「貴重な人材を大切にすべき」とする姿勢とは、また違ったものです。人的資本経営の考え方は、まだ日本では十分に浸透していないといわれています。そこで今回は理解を深める一助として、人的資本経営の概要や情報開示の手順などをご紹介します

人的資本経営の概要や国内外の動き

人的資本経営の概要や国内外の動き

人的資本経営は、人材を一種の「資本」と見なす経営姿勢です。すでに海外では導入が進んでいるといわれており、経営スタイルの移行に向けて動き始めている日本企業も見られます。

人的資本経営の基礎情報

近年、ビジネスシーンが注目する人的資本経営は、人材を企業にとっての資本と考える概念です。これまで人材は、社内において「コスト」や「人的資源」と認識される傾向にありました。従来型の人事は経営戦略と連動せず、従業員は職場が管理する対象として位置づけられていました。

それに対し、人材を資本と見なす考え方の場合、従業員は企業が投資する対象となります。その能力やスキルを最大限に活かすために企業は費用を投じ、競争力やブランド価値の向上を目指します。従来の人事と異なるこれらの特徴により、人的資本経営は企業の経営戦略と強く結びついています。

国内の動き

国内では、行政と企業のいずれも人的資本経営の導入、また促進へ向けた新たな動きを見せています。政府は「人的資本経営」の実施を政策に掲げ、経済産業省は実現に向けた検討会の報告書を公表しました。そこでは人的資本の重要性が論じられ、今後は人材に関する情報開示の新たなルールが示される予定です。

企業の多くは、新たな経営スタイルへの切り替えを急速に進めています。人材開発などを手がける会社の調査によれば、これから日本で人的資本の情報を開示する必要性は高まるとの回答が約9割に達しました。それぞれの動向を見ると、官民を問わず人的資本経営への移行に意欲的であると理解できます。

海外の動き

海外は、数年前から人的資本経営の導入が顕著です。欧米を中心として、盛んな動きが見られます。まず欧州の場合、2017年から企業に対する人的資本に関する情報開示が義務づけられました。米国でも、同国の証券取引委員会は2021年6月に契約形態ごとの人員数をはじめ人的資本の8項目について情報開示を義務化しています。

さらに国際標準化機構は、2018年4月に発表したガイドラインで人的資本に貢献するため組織に適用できる11の領域を提示しました。ここには、能力・スキルや後継者計画が含まれています。他には国外の非財務情報を開示する国際的な枠組みも用意され、人的資本にとどまらず情報公開する組織・団体は増えています。

世界的に重視される要因

世界的に重視される要因

ここ数年来、人的資本が世界的に重視される主な要因は、人材の価値向上働き方の多様化投資家の影響の3つです。

人材の価値向上

昨今は社会環境が大きく変化したこともあり、さまざまな人材が企業にもたらす価値は向上したといわれています。多くのビジネス分野で技術的な進歩は著しく、かつてに比べると同じ職場でも必要とされるスキルは増えました。業務の幅も広がり、これまで継承してきたノウハウだけで処理するのは難しくなっています。

そんな状況のなか、労働市場では種々の人材に対する需要が高まりました。以前なら価値が低いと考えられていた能力やスキルも新たな必要性が生まれ、市場での評価が変わるケースは少なからず知られています。人材の価値は総じて上昇する傾向にあり、従来の考え方から重要な資本として見直される流れにつながっています。

働き方の多様化

ここ数十年は人々のライフスタイルが大幅に変化するのに伴い、各々の働き方も多様化しました。かつて国内では正規雇用が一般的でしたが、近頃は業種に関係なく非正規社員が多くなっています。同時に全員が定刻通りに働くスタイルは当たり前でなくなり、それぞれの都合に合わせ勤務シフトを選択するパターンも目立ちます

これらの動きにより、従来通りの画一的な管理体制には限界があると認識され始めました。職場からは、スムーズに業務を進めるため個々の従業員の事情を尊重する必要があるとの意見も聞かれます。企業では一律に管理する代わりに従業員の個性を活かす方法が模索され、新たな戦略として人的資本経営の手法が注目を集めます。

投資家の影響

近年になり国内外の企業が人的資本経営に目を向ける姿勢は、投資家の影響とも無縁ではありません。人材への投資状況は、投資家が企業の成長性を評価するうえで重視する判断基準のひとつです。とくに近年は人材の価値が全体的に向上し、評価対象として関心が高まる傾向にあります。

あらゆる人材を資本と考える動きが生じると、投資家は人的資本の情報開示を企業に要請し始めました。その影響も受け、世界の企業は人的資本経営を重視する方向へ転換しているとされます。

人的資本を情報開示する手順

人的資本を情報開示する手順

企業が人的資本を情報開示する手順は、簡単に分けると「人材の現状把握」「シナリオ作成」「ニーズの把握」の3段階です。この順番で作業を進めれば、ストーリー性があり戦略面も考慮した人材情報を示せると考えられています。

人材の現状把握

人的資本について情報を開示する際、それぞれの職場が有する人材の現状把握は不可欠です。社内の人材情報を整理するため、最初は計測環境を整えます。最新の技術を活かした計測システムを用いると、さまざまな従業員の勤務状況に関する細かい分析が可能になります。

実際の計測では、できるだけ多くの項目について詳細なデータを集めると、分析結果の精度を高めるのに効果的です。計測項目によっては、職場にある勤務管理システムなども使えます。いろいろな計測方法を活用しながら一通りの情報を数値化すれば、社内で働く人材の客観的なデータを得られます。

シナリオ作成

企業による人的資本の情報開示では、詳細なデータ分析とともに一貫性のあるストーリー性が重要です。投資家は、企業を評価するうえで人材情報だけでなく人材マネジメントのポリシーや具体的な施策についても知りたいと望んでいます。単に一通りの情報を網羅しただけでは、不十分といえます。

そのため社内の現状を把握した後は、どんな企業理念にもとづき各種施策を進めているか、首尾一貫した説明も欠かせません。この点で説得力を増すには、人材情報にストーリー性を与えられるシナリオを作成すると役立ちます。一貫性のあるシナリオで人材情報にストーリー性が加われば、投資家の理解は得やすくなると期待できます。

ニーズの把握

企業が経営戦略の一環として人的資本の情報を開示する場合、幅広いニーズの把握も必須です。人的資本の情報開示は、単なる事務的な作業になると企業にとって負担ばかり増える可能性があります。そんなリスクを避けるには、人材情報のストーリー性にとどまらず、戦略面にまで目を向ける姿勢が大切です

情報開示の戦略性について検討する時は、他企業や投資家から何を求められているかを把握する意識が必要と考えられています。より多くのニーズに応える人材情報を開示すれば、企業にとってもプラスに働くでしょう。現在、日本は海外より人的資本経営の導入が遅れていると指摘されています。具体的なノウハウが分かりにくいとの声も聞かれますが、この機会に理解を深めていくことが大切です。

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