業務委託のつもりが雇用契約になる?主な注意点
更新日:2023.02.24ビジネス豆知識業務委託契約は仕事の結果に対し、報酬の支払いが行われる契約形態です。通常、業務にかかった時間は問われないため、委託会社にとっては雇用契約より出費を抑えやすいことがメリットといえます。ただし、受託者の業務状況によっては雇用契約と見なされる可能性があり、注意が欠かせません。そこで今回は、最初に業務委託契約と雇用契約との違いをふまえ、業務委託契約のメリット・デメリットや締結時の注意点をご紹介します。
目次
業務委託契約と雇用契約との違い
業務委託契約と雇用契約との主な違いは、業務の委託者と受託者が対等か、労使間の雇用関係が成立しているかの差です。以下では、それぞれの契約形態の特徴などをご紹介します。
業務委託契約の特徴
業務委託契約は、特定の業務について委託者と受託者が対等な関係のもとで委託契約を締結するスタイルです。この契約形態の場合、業務の受託者は委任・依頼された仕事の成果に応じて委託者から報酬を受け取ります。委託業務の内容や報酬額について契約時に受託者と委託者が対等な立場で交渉できる点は、大きな特徴に挙げられます。
また、両者の間に労使関係が成立しないところも特徴的です。業務の受託者は委託者の会社に在籍しないため労働基準法や労働契約法は適用されず、有給休暇の取得・厚生年金保険への加入などはできません。いまのところ厳密な定義はなく、業務の請負契約から委任・準委任契約まで幅広い契約形態が含まれています。
雇用契約の特徴
雇用契約は、会社をはじめとする使用者と労働者との間に労使関係が成立するスタイルです。会社と雇用契約を交わした労働者は、正社員・派遣社員・契約社員・パート・アルバイトとして職場に勤務します。勤務中は、会社の指示のもと担当業務に従事する特徴があります。
また雇用契約は、契約内容にもとづき、仕事の対価として使用者から労働者に給与が支払われる仕組みです。さらに職場で会社から指示を受けて働く労働者には労働基準法や労働契約法といった法律が適用されます。雇用契約した労働者は会社から業務を委託されるわけではなく、業務内容や給与額を使用者と対等に交渉する関係にはありません。
以上の特徴をふまえた場合、業務委託契約と雇用契約の違いは、会社が業務の委託者になるか労働者を指示する立場にあるかで区別できます。ただし業務委託契約の定義が不明確な影響もあり、昨今は雇用契約との区分が曖昧になる事態も生じています。
業務委託契約のメリット・デメリット
業務委託契約に見込める主なメリットは、労働関係の法律が適用されず出費を抑えやすいところです。一方、ニーズに見合う委託先が見つかる保証はありません。以下では、業務委託契約に伴う代表的なメリット・デメリットをご紹介します。
業務委託契約で得られるメリット
企業が外部業者と業務委託契約した際に得られるメリットは、出費の抑えやすさや必要な時だけ仕事を頼める点です。
出費を抑えやすい
出費の抑えやすさは、社内業務を外部委託した場合に得られる代表的なメリットです。業務委託契約で委託者となる会社が求められる主な出費は、受託者の仕事に対する報酬に限られます。業務の受託者には労働関係の法律が適用されず、委託会社は有給休暇や厚生年金保険の加入にかかる費用などを抑えられます。
必要な時だけ仕事を頼める
業務を委託する会社にとっては、必要な時だけ仕事を頼めるところも業務委託契約のメリットです。会社が労働者を雇用した場合、勤務時間中に従業員の手が空いた時は別の仕事を用意することが必要です。それに対し業務委託では、仕事を無理に考える面倒はありません。
給与計算などは不要
業務委託契約は委託者と受託者との間に雇用関係が成立しないため、委託会社は受託者の給与計算や確定申告も不要です。社内業務を外部委託した会社は、受託者の成果に対して委託報酬を支払います。受託者を社内の労働者として使役するわけでなく、給与計算や確定申告などの事務手続きを省けるメリットもあります。
業務委託契約に伴うデメリット
業務委託契約に伴うデメリットは、委託者のニーズに見合う受託者の見つけにくさや仕事の質が保証されないところです。
受託者を見つけにくい
委託者のニーズに見合う受託者の見つけにくさは、業務委託契約に伴うデメリットの代表例です。会社の業務を外部でも扱っているとは限りません。業務の特殊性が高い場合、人手不足で外部委託する必要が生じても簡単に委託先を見つけられないことがあります。
仕事の質が保証されない
社内業務を外部委託した時は、必ずしも仕事の質が保証されない点も大きなデメリットです。業務委託は委託者と受託者の立場が対等であり、委託者が仕事の進め方に注文をつけるのは難しくなります。ただし受託者の業務レベルが高いとは限らず仕事の質は保証されないため、トラブルへと発展してしまう可能性があります。
社内にノウハウを蓄積できない
外部委託した業務は委託者の目が届きにくいため、社内にノウハウを蓄積するのは困難です。委託業務の多くは、委託者の職場でなく受託者のもとで進められます。また委託者は基本的に業務を管理する立場になく、受託者から仕事の成果を受け取った時にノウハウまで得ることは難しくなります。業務委託契約は委託者にとってメリットだけではなくデメリットもあるため、実際に契約する際は契約内容や報酬額を慎重に検討することが大切です。
業務委託契約で気をつけたい注意点
会社が業務委託契約を締結したら、仕事の進め方によっては雇用契約と見なされる可能性があり注意が必要です。以下では、形式的には業務委託でも、実質的に雇用契約と判断されるケースや、認識の食い違いを防ぐための注意点をご紹介します。
受託者に仕事を指示すると雇用契約
会社が外部業者と業務委託契約を交わした際、委託会社が受託業者に仕事を指示すると雇用契約になる可能性があります。ビジネスの場で会社が仕事を指示できる相手は、基本的に社内の従業員です。会社と雇用契約を交わし使役される立場になった従業員は、使用者の指示にしたがい社内業務に従事しなければいけません。
一方、社外で業務委託を受けた業者は、委託会社と対等な関係です。業務レベルや仕事の進め方に関係なく、委託会社から業務内容や作業の進捗を指示・管理される立場にはありません。受託者の業務姿勢や仕事の質に不安があるとの理由で委託会社が指示を出して使役した場合、実質的に雇用契約したと見なされます。
業務委託契約は対等な関係が不可欠
会社が業務委託契約を雇用契約と判断されないためには、契約が満了するまで受託者と対等な関係を保つことが不可欠です。形式的には外部委託であっても業務実態から事実上の雇用契約と判断された場合、委託報酬に加えて残業代などを請求されることがあります。また、労働関係の法律の適用を避けるための業務委託は、一般に「偽装請負」と呼ばれています。
適切な理由で業務委託する時に認識の食い違いを防ぐには、委託会社が仕事を指示するとしても受託者が拒否できる自由を保障する配慮が大切です。受託者が業務スタイルを任意に選べる状況であれば、雇用関係にあるとは見られにくくなります。
たとえば、仕事の繁忙期に社内の人手が足りず業務委託契約を交わした時、雇用契約と判断されると、メリットよりデメリットのほうが大きくなるかもしれません。そんな事態を避けるには、委託会社が受託者の業務方法や勤務時間を拘束していないか十分に注意する姿勢が求められます。
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