不動産営業でも非接触が当たり前に?
更新日:2023.10.23ビジネス豆知識ここ数年、不動産営業は非接触の接客が増える流れを見せています。かつて多くの事業者は直接に対面しながら業務を進めましたが、昨今は電子契約の全面解禁もあり、オンライン上で取引するケースが広がり始めています。職場で新しい契約方法を導入すれば紙の書面を作成する手間を省くことができ、業務負担の軽減につながるでしょう。そこで今回は、電子契約が全面解禁になるまでの動き、主な導入メリット、今後の課題などをご紹介します。
目次
電子契約の解禁
最近、不動産営業で非接触の取引が増えた大きな要因は、法律における電子契約の解禁です。コロナ禍の影響で不要不急の外出が控えられるなか、法的規定の改正により新たな動きは加速すると予想されています。
従来の原則
従来の宅地建物取引業法によると、これまで不動産取引は書面による契約締結が原則でした。旧法の35条や37条は、不動産取引で用いる重要事項説明書や賃貸契約書について紙での交付が必要であると定めています。実際に契約を交わす時は、これらの書類に押印および記名が不可欠です。
かつて日本は、とくに重要性の高い書類を作成する場合に本人による署名と捺印が重視されていました。この傾向は不動産取引にも反映され、従来の規定では電磁的な方法を用いた契約締結が認められていません。パソコン上では契約を結べず、結果的に当事者は対面しながら契約書にサインしました。
法律改正
今回の宅地建物取引業法の改正に深く関わっている行政の動きは、デジタル改革関連法の制定です。2021年5月、デジタル分野に関わる法律が成立すると、そのなかで不動産関係の改正も盛り込まれました。主な改正内容としては、電磁的な方法による書類交付の認可が挙げられます。
改正法の適用対象には不動産取引の契約書も含まれ、必要書類の作成時に紙で交付する必要はなくなりました。同時に宅地建物取引士の押印も不要になり、電子契約へ移行する動きが進みます。不動産業務におけるデジタル方式の促進により、オンライン上で契約する傾向は強まりました。
電子契約の全面解禁
今後、不動産営業で電子契約が主流になると予想される主な理由は、電子契約の全面解禁です。不動産関係の電子契約は、先のデジタル改革関連法の成立から約1年後の2022年5月に全面解禁されました。現在、当事者の合意があれば各種書類はデータの電子化や電磁的な方法による交付が法的に認められています。
一連の業務をオンライン上で完結できる場合、事業者とユーザーの双方にメリットがもたらされると期待されています。数年後には多くの事業者が電子契約を導入しているであろうとの予測も見られるようです。実際の不動産営業も、オンライン内見など非接触で接客するケースが広がり始めています。
法改正がもたらすメリット
2022年5月の法改正による電子契約の全面解禁は、不動産事業者とエンドユーザーのいずれにも多くのメリットをもたらすと見られています。電子契約の基本的な仕組みや主なメリットをチェックしていきましょう。
電子契約の仕組み
不動産取引の場合、電子契約は従来型と異なり、紙面による書類交付を必要としません。契約者は紙で作成された書面に記名・押印する代わりに、オンライン上で電子署名します。印鑑証明書に代わる書類は、電子証明書です。契約が成立した日時は、タイムスタンプの刻印により証明されます。
またタイムスタンプは、契約成立の日時以降に文書が改ざんされていないことも証明します。最新のテクノロジーは文書の偽造防止に効果的であり、十分に信頼できるといわれるレベルです。すべてのデータは企業のサーバー内やオンライン上に保管されるため、安全確保の担保になります。
事業者にとってのメリット
電子契約の全面解除が事業者にもたらす主なメリットは、さまざまな業務を効率的に進められる点です。不動産業者は、これまでの方式で作業すると契約書の作成や不備のチェック、書類の発送などに多くの手間と時間を要しました。契約が成立するまでの負担は、軽くなかったといえます。
それに対し電子契約の場合、すべての作業がオンライン上で完結します。記載事項に不備があっても修正に時間はかからず、書類の発送手続きは不要です。作業負担は大幅に減り、契約締結はスピードアップすると見込めます。必要な機器の導入時にコストは発生するものの、ペーパーレス化が進めばトータルで経費節減も可能です。
ユーザーにとってのメリット
不動産事業者による電子契約の実施は、エンドユーザーの利便性が高まるメリットもあります。さまざまな不動産取引を希望するユーザーは、全国各地に暮らしています。例えば、地方から東京へ移転する場合、近くの不動産会社へ足を運んでも都内の物件を探せる保証はありません。
そんなケースでは、居住したいエリアの事業者にオンライン上でアクセスできると便利です。在宅地域から遠距離を移動せずに済めば時間や費用がかからず、多くの手間を省けます。電子契約なら不動産会社を訪れる面倒はなく、引っ越しの準備が忙しいなか契約締結する日時も調整しやすくなります。
電子契約に伴う課題
電子契約の導入に伴い、将来的に不動産会社が直面するといわれる課題は社内体制を整備する難しさです。これから新スタイルを広めるうえでは、いろいろな準備が必要になると考えられています。
体制整備の必要性
不動産会社が業務スタイルを従来型から切り替える場合、まず社内の体制を整えることが必要です。現時点で、電子契約に対応している事業者は多いといえません。従来型よりメリットは大きく注目を集めていますが、新たな契約スタイルを導入していない会社は少なからず見られます。
未対応であれば、現在の業務フローを一通り見直す必要があります。どこかで紙の書類が生じると、完全には電子化できません。業務の進め方を改変するなら、一定の時間がかかるでしょう。すぐに全作業が完了するとは限らないため、社内の体制整備は計画的に進めることが望まれます。
人材教育は重要
スムーズに電子契約の手続きを進めるうえで重要なもののひとつが、職場での人材教育です。社内で電子契約の体制が整った後は、いずれの従業員も業務を担当する可能性があります。ただ、社員全員がIT技術に通じているとは限りません。場合によっては作業に手間取ることもあるでしょう。
すべての担当者が電子契約に必要なスキルを得るには、日頃からオンライン業務に慣れておくことが大切です。専門的な知識に詳しくない従業員も、必要に応じて周りがサポートすればレベルアップを目指せます。職場内の技術レベルが全体的に向上すれば、誰が電子契約を担当しても手間なく処理できるでしょう。
ユーザーへの告知も
不動産会社が電子契約を実施する時は当事者の合意やエンドユーザーへの告知が必須です。賃貸借契約の場合、契約関係の当事者には物件の貸主(オーナー)、貸借人、不動産会社、保証会社(あるいは保険会社)などが該当します。いずれかが電子契約を承諾しないと、従来の方法で手続きする必要が生じます。
すべての関係者が電子化に前向きというわけではありません。紙の契約書に馴染みのある貸主が、書面の電子化に不安を感じているケースもあるようです。現状では、エンドユーザーに広く告知しながら意識改革する活動が避けられないと指摘されています。
今後、こうして不動産業界全体が電子契約の普及活動に取り組むことで、非接触によるオンライン上での取引は一般化すると考えられています。ユーザーニーズを満たし、業務効率化を促進するためにも、電子契約についての理解を深めておくことがおすすめです。
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