コールセンター業に必要な感情労働とは?

更新日:2023.02.16コールセンター

ベテランコールセンタースタッフ

感情労働とは、労働を大きく分類したときの肉体労働、頭脳労働に続いて新たに注目されている労働のタイプです。近年、感情労働は、さまざまな職種で必要となってきていますが、感情労働の精神負担が原因で離職率が高くなっていることが問題になっています。今回は、従業員の感情労働の負担・ストレスを減らすために企業が知っておきたいことや、感情労働に従事する人が個人でできる対策などをご紹介します。

感情労働とは?

感情労働とは、仕事をするうえで感情の抑制や忍耐、緊張などの負担が必要とされる労働のことです。感情労働者には、どんな理不尽な要求をする顧客に対しても、臨機応変に適切な感情を表現することが求められます。自身の感情をうまくコントロールする能力が必要になる感情労働は、精神的負担が激しい労働といわれています。

感情労働は、アメリカの社会学者、アーリー・ラッセル・ホックシールドが1983年に発表した著書「管理される心——感情が商品になるとき」で提唱した言葉です。この本が2000年に和訳されると、日本でも徐々に感情労働という言葉が広まって注目されるようになりました。

感情労働を求められる職種

近年、感情労働を求められる労働がさまざまな分野で増えてきているといいます。こちらでは、感情労働の代表的な職種をいくつかご紹介します。

客室乗務員

客室乗務員は、感情労働の提唱者であるホックシールドが感情労働を定義づけるきっかけとなった職種です。客室乗務員は、飛行機という閉ざされた空間の中、すべての乗客が気持ちよく過ごすために礼儀正しい所作や笑顔での対応が求められます。乗客の無理な要求にも同調や謝罪を繰り返しながら、適切な対応をするために感情をコントロールしなくてはいけません。

コールセンタースタッフ

問い合わせやクレーム対応など、相手の感情に合わせた対応が求められるコールセンタースタッフも、感情労働の代表的職種といえるでしょう。どんな理不尽なクレームにも自分の感情を抑えて対応したり、真摯に対応したりと、顧客満足度向上に努めることが求められます。また、対面ではなく電話を通して気持ちを伝えなくてはならないため、声に感情を乗せるスキルなども必要になります。

医師・看護師・介護士

医療従事者や介護士などは、専門家としての知識やスキルに加え、真心のこもったサービスが求められる感情労働です。患者や利用者だけではなく、その家族にまで適切な感情で対応して安心感を与えることも必要になります。

保育士・教師

保育士や教師などのように、生徒の模範として常に正しい言葉遣いや態度が求められる職業も感情労働に該当します。医療従事者と同様、生徒だけではなく、その家族に対しても適切な感情できめ細やかな対応が必要です。

感情労働が増えている要因とは

上記の感情労働が求められる職種以外にも、近年では感情労働が増えてきているといわれています。感情労働が増えている要因としては、産業構造の変化が挙げられます。感情労働を求められるサービス業、すなわち第三次産業に従事する人が増えているのです。

取り扱う商品の質に大差がない分野では、他社との差別化を図るために接客人員を増やして顧客満足度の向上を狙います。また、一次産業や二次産業であっても、商品を売るために感情労働者が必要になっています。このように、ライバルに勝つための差別化の一環として、感情労働者が増え続けているのです。

感情労働が抱える問題

感情労働は、肉体労働や頭脳労働に比べ、仕事とプライベートとの切り替えが難しいという特徴があります。そのため、仕事のストレスが日常にまで悪影響を及ぼしてしまうことも。こちらでは、感情労働によってもたらされる可能性のある問題を、いくつかご紹介します。

バーンアウト(燃え尽き症候群)

バーンアウトとは、まるで炎が燃え尽きてしまったかのように、仕事に対してやりがいを感じられず、情熱を失ってしまった状態のことです。感情労働で自分の感情を抑え込むことは、大きな精神ダメージにつながります。それを解消せずにさらに感情の抑制を続け、精神を酷使し続けた先にあるのがバーンアウトです。バーンアウトは、責任感が強く、熱心に仕事に取り組んでいる人ほど陥りやすいという特徴があります。

メンタルヘルスの不調

感情労働者は、自分の感情を抑えることと引き換えに賃金を得ています。しかし、感情労働者も自分の感情を持つ1人の人間です。日常的に自分の感情を抑え、自分の意思に反することばかりしていると、知らず知らずのうちにストレスが蓄積されてしまいます。感情労働によって精神疲労状態が続くと、うつ病をはじめとしたさまざまなメンタルヘルスの不調へとつながる可能性があるため注意が必要です。

感情労働が引き起こす問題への対策

感情労働者を守るためには、ストレスに対する適切なケアが必要です。こちらでは、感情労働者と企業がそれぞれ取り組める対策についてご紹介します。

個人でできる対策

問題を未然に防ぐための対策と、問題解決のための対処法をご紹介します。個人でできる対策を採り、ストレスから自分の身を守りましょう。

ストレスをためない

まずは、ストレスチェックなどを行い、自分のストレス耐性を確認しておきましょう。ストレスがたまりやすいタイプであれば、早めに解消するようにします。また、アンガーマネジメントを学び、ストレスがたまりにくい思考法を身につける方法もあります。怒りをコントロールし、できるだけストレスをためないようにしましょう。

たまったストレスは早めに解消する

ストレスとしっかり向き合い、早めに解消するよう努めましょう。そのためには仕事とプライベートを切り離し、趣味などに没頭できる時間を意識的に作るようにします。仕事に熱心な人ほど、蓄積されているストレスに気づきにくいものです。感情労働によるストレスをしっかりと認識し、できるだけこまめに発散するなど、セルフケアに努めましょう。

企業ができる対策

感情労働者のストレス軽減のためには、企業からの対策も重要視されています。従業員のストレスを軽減するために、企業が行うべき対策をご紹介します。

カウンセラーの配置

感情労働で危険なことは、自分の感情を抑制した後に本音を話す機会がないということです。慢性的に感情の抑制状態が続き、本音を話さないままでいると、自身の感情の変化に気づきにくくなってしまいます。うれしいことや楽しいことが実感できず、仕事に対する熱意や意欲も失ってしまう可能性があります。社内に誰でも相談できるカウンセラーを配置し、従業員が本音で話すことができる環境を作りましょう。

信頼関係の構築と職場環境の改善

会社が不誠実だったり従業員との間に溝があったりすると、信頼関係が成り立たず、従業員のストレスがさらに増してしまいます。感情労働のストレスを軽減するために、経営陣と従業員の考えや目標をしっかりと合わせ、信頼関係の構築に努めましょう。また、上司と本音で何でも話し合える心理的安全性を伴う職場作りも肝心といえます。

まとめ

コールセンター業務に必要な第三の労働タイプ、感情労働についてご紹介しました。感情労働によって自分の感情を抑制したままでいると、仕事や精神にさまざまな悪影響を及ぼす危険があります。感情労働者はこれからも増えていくと考えられているため、組織には従業員のメンタルヘルスに対する適切なケアが求められています。感情労働者のストレスを適切にケアすることは、仕事へのモチベーション向上や離職率の低下につながるでしょう。

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