弁理士のキャリア|資格の難易度や年収について
更新日:2024.05.01スタッフブログ弁理士は、知的財産の専門家といわれる業種です。8士業の一つであり、特許出願の代理などが主な仕事に挙げられます。具体的な業務内容は幅広いため、今後のキャリアを考えて資格取得を検討している人も多いのではないでしょうか。弁護士資格に興味がある場合、試験の難易度や年収は気になるでしょう。そこで今回は、資格の概要・平均的な学習時間・資格取得後のキャリアなどをご紹介します。
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目次
資格の概要
弁理士は、弁理士法で規定された条件を満たすと取得できる資格です。ただし、一部の項目に該当する場合、原則として弁理士になる資格は認められません。
弁理士になれる人
弁理士法第7条によると、弁理士になれる人は、次の条件を満たしている場合です。
- 弁理士試験に合格
- 弁護士になる資格あり
- 特許庁で審判・審査事務の従事期間が7年以上あり
弁理士試験に合格した時は、弁理士登録を済ませると弁理士になれます。また、この試験を受けなくても、弁護士になる資格があれば、同時に弁理士として活動する資格も得られます。特許庁の審判・審査業務については、通算7年以上にわたり審判官、または審査官として従事することが必要です。以上のうち、いずれかの条件を満たした場合、所定の実務修習を修了すると弁理士になる資格が認められます。
弁理士になれない人
弁理士法第8条によれば、以下のケースに該当する時、弁理士になる資格を有しないと規定されています。
- 刑事処分を受けた者
- 業務上の処分を受けた者
- 制限行為能力者など
刑事処分を受けた者とは、禁固以上の刑に処せられた場合、また特定の法律で罰金の刑に処せられ所定の期間が経過しないケースです。弁理士法や特許法の罪で罰金刑を受けた時は5年を、関税法などの罰金刑では3年を経過しない者が該当します。業務上の処分を受けた者は、公務員で懲戒免職を受け、あるいは弁理士登録の取り消し処分を受けて3年を経過しないケースです。
また、弁理士法による業務禁止や弁護士会からの除名を受け、3年を経過しない場合なども含まれます。制限行為能力者などは、未成年者や破産手続き開始の決定を受けて復権を得ない者です。以上のいずれかに該当する場合、資格試験に合格するなどの条件を満たしても、弁理士になる資格は得られません。
参照:日本弁理士会 弁理士になるには (参照 2024-04)
難易度や合格率、受験者層
弁理士試験の合格率は1割に達しない傾向があり、難易度は比較的に高いといえるでしょう。特許庁の資料によると、2021年度~2023年度の合格率は、3年連続で6.1%でした。また、2019年度・2020年度は8.1%・9.7%にとどまり、ここ5年間を見る限りでは1割に届いていません。さらに、同様の傾向は、以前から見られました。
近年の合格率を見る限り、弁理士試験は急に難化したわけでなく、基本的に難しいと考えられます。それでも、最近の動向として、受験者層は広範囲に及ぶ状況です。実際、2023年度の試験結果を見ると、20代~70代の会社員・公務員・自営業者・学生・教員などが合格しています。また、性別による合格率の差は大きくないため、この資格に興味があるなら年齢・職業や性別を気にせず挑戦してみるとよいでしょう。
参照:特許庁 令和5年度弁理士試験の結果について (参照 2024-04)
資格取得に向けて
弁理士資格は、試験の難易度が高めであることで知られています。一般的には、合格するまでに数年がかかるといわれている資格です。
平均的な学習時間・受験回数
弁理士試験で合格するまでに必要とされる平均学習時間は、2,000~3,000時間です。資格試験の関連サイトを見ると、効率よく勉強を進めた場合、約2,000時間かかるとの意見が多くを占めています。また、独学で取り組む時は、3,000時間以上が必要ともいわれています。とくに3,000時間を目安と考える意見が主流であり、この時間を300~365日で達成するには、1日8~10時間の勉強が必要になる計算です。
他の資格試験は、弁護士が平均3,000~6,000時間、税理士は約2,500時間・行政書士は約600時間といわれています。これらと比べた場合、弁理士試験では、比較的に多くの学習時間が必要といえるでしょう。ただし、日々の仕事や学業があると、資格試験に向けて十分な学習時間を確保できるとは限りません。
1日平均4時間なら2年以上、平均2時間になると約4年で3,000時間に到達します。通常、毎日の生活に追われると試験勉強の時間は確保しにくくなり、1発合格のハードルは上がると考えられます。実際、特許庁の資料によると、ここ3年における合格者の平均受験回数は3.7回(2021年度)・3.4回(2022年度)・2.8回(2023年度)です。これらの受験回数が示すように、一般的には、数年で合格を目指すケースが多く見られます。
参照:特許庁 令和5年度弁理士試験の結果について (参照 2024-04)
参照:特許庁 令和4年度弁理士試験の結果について (参照 2024-04)
参照:特許庁 令和3年度弁理士試験の結果について (参照 2024-04)
予備校の比較・予備校と独学の費用
弁理士試験に向けた勉強法は。大きく分けて予備校に通う方法と独学の2つです。予備校に通った場合、試験勉強を効率的に進められるメリットがあります。具体的には、2,000時間ほどの学習で1発合格するケースが少なからず見られます。現在、おすすめといわれる予備校は、次の通りです。
- LEC
- アガルート
- スタディング
- 代々木塾
- 資格の学校TAC
- 資格スクエア
LECは多くの受講生が1回で合格し、アガルートは合格率34.4%であり、いずれも実績の高さが特徴的です。また、アガルート・スタンディング・代々木塾は、初学者向けのコース料金が安めに設定されています。資格の学校TACは、週1回だけ学習するカリキュラムであり、仕事や学業が忙しい人に適しています。さらに、資格スクエアは講師が親しみやすいと評され、講義の分かりやすさも魅力的です。
一方、独学は、予備校に通うより出費を抑えられるところが主なメリットです。多くの予備校は受講料に数万~数十万かかるといわれますが、独学であれば、テキストや参考書の購入費だけで済みます。そのうえ、自分のペースで勉強できる利点もあります。講義の時間に合わせて通学する面倒はなく、仕事や学業に差し支える心配はありません。
予備校通いと独学はメリットが異なるため、予備校の特徴や予算・時間の都合をふまえ、自分に合った勉強法を選ぶとよいでしょう。
試験日程
特許庁の資料によると、2024年度の弁理士試験は、次の日程で実施される予定です。
試験 | 日程 |
---|---|
短答式筆記試験 | 2024年5月19日(同年6月10日に合格発表) |
論文式筆記試験(必須科目) | 2024年6月30日(同年9月24日に合格発表) |
論文式筆記試験(選択科目) | 2024年7月21日(同年9月24日に合格発表) |
口述試験 | 2024年10月19日~21日のいずれかに受験 |
最終的な合否の結果は、2024年11月11日に発表予定です。なお、受験願書の受付期間は2024年4月4日に終了していますが、受験票は5月10日に発送する予定となっています。また、いずれの試験も、免除者が受ける必要はありません。最終合格者には2024年11月13日に合格証書が送られる予定であり、その後に実務修習を修了すれば、弁理士として登録できます。
参照:特許庁 令和6年度弁理士試験受験案内 (参照 2024-04)
資格取得後のキャリアについて
弁理士資格を取得した後の主な就職先は、特許事務所や一般企業です。また、弁理士になると仕事の幅が広がるため、転職するケースも多いといわれています。
平均年収
弁理士の年収は、厚生労働省の資料によれば平均で971万4千円です。この金額は、同省が公表した令和4年賃金構造基本統計調査の結果にもとづき算出されています。また、あくまで全国平均の数値であり、東京都の平均額は1,008万3千円になるなど地域差が見られます。
また、職業関係の情報サイトでは、平均年収について600万~700万円程度との金額も示されました。こちらは、様々な求人サービス会社の統計データをふまえた数値と説明されています。これらの金額から、弁理士の平均年収は、基本的に600万~1000万円と考えてよいでしょう。
参照:厚生労働省 弁理士-職業詳細-jobtag (参照 2024-04)
弁理士の活動場所
多くの弁理士が活動する職場は、特許事務所や一般企業の知的財産部です。特許事務所の場合、特許・実用新案・意匠・商標の出願・権利化が、主な業務になっています。また、企業の知的財産部は、社内の研究開発や経営企画に関わる仕事を担当しています。
他には、特許庁・知財コンサルティングや大学・研究機関も、弁理士の勤務先に挙げられる場所です。特許庁は特許出願の審査が中心的であり、知財コンサルティングや大学・研究機関はそれぞれ知的財産や研究成果の活用方法を検討します。
現在、日本の弁理士は、国内の特許出願件数に比べて人数が少ないといわれる状況です。そのため、この資格を取得すれば、年齢や性別を問わず活躍できる機会は広がると考えられます。
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