ふるさと納税の改正内容とポイント付与禁止について解説
更新日:2024.08.09スタッフブログふるさと納税は、魅力的な返礼品が受け取れ、税控除が適用されるという仕組みで注目されている税制度です。昨今は、ポータルサイトによるポイント付与も、注目度の向上につながっているといわれています。ただし、ポイント付与は総務省から問題があると認識され、2025年10月に禁止される流れとなっています。このような状況をふまえた場合、ふるさと納税を行っている・検討している方は、現行法や今後の動きに目を向けると参考になるでしょう。そこで今回は、2023年10月の法改正について解説し、2025年10月からポイント付与が禁止される理由などをご紹介します。
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目次
ふるさと納税に関する法改正
ふるさと納税で2023年10月に法改正されたポイントは、主に募集適正基準と地場産品基準の2点です。
募集適正基準
募集適正基準は、寄付金を募集する時の必要経費などについて定められた基準です。法改正前の旧法は、必要経費の合計金額について、寄付金総額の5割以下と規定していました。当初の規定内容を見る限り、いずれの費用が経費に含まれるか細かく示されていません。このような規定内容の曖昧さは、法的に問題があると指摘されました。具体例を示すと、費用によっては必要経費に含まれず寄付金控除を受けるケースが見られ、問題視されたといわれています。
ふるさと納税の改正法は、法的な曖昧さを避けるため、必要経費の中身について旧法より明確に記しました。実際の条文を見ると、ワントップ特例事務や寄付金受領証の発行に要する費用は、必要経費に含まれています。この法改正により、必要経費については、改正前より厳格な記載が求められるようになったと考えられます。
地場産品基準
地場産品基準は、ふるさと納税の寄付を受けた時の返礼品に関する規定です。旧法では、地域の生産物や主要な製造・加工プロセスを担った物品全般が、地場産の返礼品として認められました。場合によっては、近隣地域の産物も、地場産での返礼が可能となっています。
一方、ふるさと納税改正では、どこまで地場産の返礼品と認めるかが主なポイントになりました。実際には、加工品の熟成肉と精米に制限が加えられ、原材料が地元産でなければ地場産の返礼品として容認しないと定められます。
以上のように、現行法は、地場産の認定範囲が旧法より限定的です。ただし、ふるさと納税は地域応援を目指す仕組みであり、地元の産物を入手しやすくなる法改正は本来の目的に沿っていると理解されています。
総務省 ふるさと納税の次期指定に向けた見直し (参照 2024-07)
総務省 ふるさと納税に係る告示の改正 (参照 2024-07)
ふるさと納税利用者への影響
改正法は旧法の改善につながりましたが、利用者にとっては、メリットばかりでないと指摘する声も聞かれます。
返礼品の金額・品質低下
返礼品の金額や品質が下がる点は、法改正に伴い懸念されている大きな問題です。改正法で寄付金の募集に費やせる必要経費は、旧法と同じく、寄付金総額の5割以下と設定されています。とはいえ、経費と見なされる費目が増えた場合、各費目の出費は抑えなければならないでしょう。寄付の総額が2万円の場合、必要経費には1万円までかけられます。
ただし、以前より多くの費用が経費に含まれると、それだけ返礼品の調達に使える金額は減る可能性があります。返礼品の調達費が削られた場合、物品自体は従来と同じでも、数量が少なくなり品質は下がるかもしれません。また、高額な物品は、返礼品のラインアップから除外されるリスクもあります。いずれも、ふるさと納税に対する還元率が低下する事態であり、利用者にとってはデメリットになると不安視されています。
返礼品の選択肢が減少
地場産の厳格化で危惧される問題は、返礼品の選択肢が減少する状況です。これまで、熟成肉や精米は、地元で原材料を生産していなくても地場産の返礼品として提供できました。そのため、地域によっては近隣から素材を調達し、ふるさと納税の物品に含めていたといわれています。
改正法では地場産の範囲が限定される影響から、一部の地域で熟成肉や精米を提供しにくくなる可能性があります。主要な製造・加工ラインしか担当していなければ、地場産の物品とは認められないためです。熟成肉や精米を地場産として扱えなくなった場合、費用面の問題がなくても、返礼品の選択肢から除外されるかもしれません。これらを楽しみに納税していた利用者は選択肢の減少を惜しむ可能性が高く、返礼品の魅力が減るともいわれています。
また、寄付金が増加する状況も、法改正の影響で懸念される問題点です。以前と同様に返礼品を提供した場合、必要経費が膨らむ可能性は高いでしょう。それでも、寄付額の5割以下で抑えるには、寄付金を増やす必要が出てくると見られています。寄付金の増額は、利用者にとって重い負担です。ふるさと納税を地域の活性化につなげたいと思っても、出資は難しくなるかもしれません。税負担の増大は好ましい事態とは考えにくく、この点も法改正のデメリットに挙げられています。
2025年10月にポイント付与禁止に
ふるさと納税に伴う利用者へのポイント付与は、同制度の改変により、2025年10月から禁止される見通しです。
ポイント付与禁止の理由
ふるさと納税のポイント付与が禁止される主な理由は、ポイント付与に絡む競争が過熱していると見られるためです。
ポイント付与に絡む競争が過熱
総務省は、2024年6月28日付けの告示で、ふるさと納税のポイント付与をめぐる競争が過熱している状況を問題視しています。そもそも、ふるさと納税のポイント付与は、寄付の手続きを仲介するサイトが利用者にポイントを提供する仕組みです。最近、多くのポータルサイトは、ふるさと納税や買い物で使えるポイントをサイトの利用者に還元しているといわれています。基本的にポータルサイトは情報発信力があるため、寄付の仲介は、ふるさと納税の認知度アップや関連手続きの円滑化につながると理解されています。
それに対し、総務省は、2024年6月の告示でサイト間の競争が激化しているとの見解を示しました。具体的には、ポイント付与をめぐる現状について、募集適正基準への適合性に疑義が生じている事例等と表現しています。ポータルサイトの競争激化は法的基準に沿っていないとの認識から、2025年10月以降はポイント付与を禁止すると説明しています。
総務省 ふるさと納税の指定基準の見直し【令和6年6月28日付け告示第203号】 (参照 2024-07)
ふるさと納税の趣旨に合わない
総務省がポイント付与に絡む競争の過熱を問題視する大きな要因は、ふるさと納税の趣旨に合わないと判断しているためです。もともと、ふるさと納税は、地方創生・地域応援や自治体のアピールを主な目的として開始されました。納税者からの寄付で各地を活性化し、地方の支援につなげることを目指しています。ポータルサイトによる寄付の仲介も、その仕組み自体は、総務省の告示で禁止されていません。
ただし、ポイント付与に伴う費用は、寄付を受けた自治体が負担していると見られています。この見解は、総務省が2024年7月2日に公表した資料のなかで示されています。同資料は総務大臣の記者会見に関する概要であり、寄付金の一部がポイント付与の資金として使われているのではないかと指摘されているものです。寄付金がポイント付与に費やされている場合、本来の趣旨である地域応援と結びつきにくいため、ふるさと納税の適正化に向けて付与禁止を決めたと述べられています。
総務省 ふるさと納税の理念 (参照 2024-07)総務省 会見発言記事|松本総務大臣閣議後記者会見の概要 (参照 2024-07)
返礼品を強調した宣伝も禁止
総務省の告示によると、返礼品などを強調する広告宣伝も禁止となる予定です。2024年6月の告示は、ふるさと納税の募集適正基準に言及しています。同基準は、ふるさと納税を募集する時、寄付の対価として金銭の支払いを業とする者の仲介や返礼品等の過度な宣伝による寄付の誘因を認めていません。これらの基準にもとづき、寄付に伴うポイント付与の過熱化は問題視されました。同時に、ポータルサイトや返礼品の取扱業者が宣伝広告で返礼品などを強調している状況も不適切と判断しています。
以上の見解から、告示改正では、民間事業者等による返礼品等の過度な宣伝行為も禁止事項となる旨が明確に示されました。現在、ふるさと納税は地方創生の趣旨から外れた部分で寄付を募る競争が激化していると見られ、本来の趣旨に沿って制度上の改変が進められていると考えられます。
総務省 ふるさと納税の指定基準の見直し【令和6年6月28日付け告示第203号】 (参照 2024-07)
ポイント付与禁止後はどうなる?
ふるさと納税のポイント付与が禁止された後は、寄付の手続きで仲介サイトを利用した際、ポイント還元の特典は受けられなくなるでしょう。この変化は、利用者がポイント還元を重視していた場合、マイナスに作用する可能性があります。一部の関連サイトでは、ふるさと納税に対する興味・関心が薄れ、ポータルサイトを介した寄付は減るリスクがあると予想されています。情報発信力のある仲介サイトのアクセス数が減少した場合、各地の自治体は、これまで以上に利用者へのアピールが必要になるかもしれません。
また、仲介サイトも、アクセス減少を防ぐ工夫が欠かせなくなると考えられます。それでも、自治体のアピール活動が盛んになり、ポータルサイトの使い勝手もよくなれば、利用者にとってはメリットとなるでしょう。一見すると、今回のルール変更は改悪に思えるかもしれませんが、デメリットばかりではないといえます。
さらに、ポイント付与の禁止は、ふるさと納税の趣旨に沿った寄付金の活用につながると考えられます。自治体から仲介サイトへ支払われる手数料が減れば、行政サービスの強化などに回せる費用は増えるでしょう。結果的に、多くの寄付で行政サービスが充実すれば、ふるさと納税は本来の意図通り地域の活性化に結びつくと期待できます。
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