SDGsにも関わるアニマルウェルフェアとは
更新日:2023.07.21スタッフブログアニマルウェルフェアとは、広く動物の心身における状態を指します。畜産業では、家畜を大切に考える思いが強く、以前からアニマルウェルフェアの改善が進められてきました。近年は、SDGsが掲げる飢餓問題の解決に効果が期待され、アニマルウェルフェア改善の必要性は世界的に高まっています。そこで今回は、アニマルウェルフェアの概要をふまえ、改善が必要な理由や畜産関係者・消費者などが実践できる取組みをご紹介します。
目次
アニマルウェルフェアの概要
アニマルウェルフェアとは、動物の身体的・心的状態を意味する言葉です。動物の状態に目を向ける考え方は、ヨーロッパで生まれました。以下では、アニマルウェルフェアの定義や歴史をご紹介します。
言葉の定義
言葉の定義については、国際獣疫事務局(OIE)により示されました。OIEは、世界の動物衛生の向上を目的とする政府間機関です。同機関が提示した勧告のなかで、アニマルウェルフェアは「動物の生活とその死に関わる環境と関連する動物の身体的・心的状態」と説明されています。この定義をふまえた場合、アニマルウェルフェアの改善とは、動物の生活環境や衛生状態を向上することです。
畜産関係では、家畜を快適な環境下で飼育すれば、家畜のストレス軽減や疫病の防止につながるため重要と考えられています。また、動物の家畜利用を認めた考え方であり、家畜利用を否定するアニマルライツや動物の保護を主目的とする動物愛護とは異なります。
概念の発祥・歴史
アニマルウェルフェアに示された動物の状態を重視する考え方は、ヨーロッパ発祥の概念です。この概念は、19世紀頃から広まりました。当時、科学の発展に伴い、ヨーロッパでは「動物も人間と同じく心身の苦痛やストレスを感じる存在である」との認識が浸透したといわれています。1960年代には、アニマルウェルフェアの基本原則として「五つの自由」が確立されました。「五つの自由」の内容は、次の通りです。
- 空腹と渇きからの自由
- 不快からの自由
- 痛み・損傷・疾病からの自由
- 恐怖と苦悩からの自由
- 正常行動発現の自由
また、1990年代にはアニマルウェルフェアの法的基準も定められ、この基準をもとに世界各地の畜産業者は動物の生活環境や衛生状態の改善を求められています。
最近の動向
現在、アニマルウェルフェアの世界的な基準は、世界動物保健機構(WOAH)と世界の科学者により作成されています。動物の状態については、動物科学や家畜行動学の視点で科学的に評価する手法が一般的です。また、畜産関係にとどまらずフードビジネスの分野では、基本ルールの一部として定着し始めています。さらに近年、アニマルウェルフェアの改善は、持続可能な社会の実現につながると期待され注目を集めています。
アニマルウェルフェアの改善が必要な理由
アニマルウェルフェアの改善は、家畜の快適な生活環境や食の安全性を確保するうえで必要です。また、飢餓問題の解決にも寄与すると見込まれています。以下では、アニマルウェルフェアの改善が必要とされる主な理由をご紹介します。
家畜に快適な生活環境を提供
畜産業において、アニマルウェルフェアの改善は、大切な家畜に快適な生活環境を提供するうえで必要と認識されている取組みです。日本も海外も、動物の命を大切に考える姿勢は変わりません。畜産業も、昔から家畜に多くの愛情を注ぎながら育ててきました。日本の場合、家族と同様に考えて供養塔がつくられるケースも各地で見られます。
動物の命を尊重する考え方から、アニマルウェルフェアの改善は、家畜に気持ちよく生活してもらう方法として重視されています。家族同様の家畜に余計なストレスや痛みを与えないため、これまで各種の環境改善が進められてきました。ヨーロッパ発祥の概念であり、日本の取組みは遅れているといわれますが、近年は農林水産省が示した指針にもとづき法制度が整備され始めています。
食の安全性を確保
消費者の目線で考えた場合、アニマルウェアの改善は、食の安全性を確保するうえで必要です。家畜は、様々な部位を食材に利用する目的で育てられています。毛皮や角・牙が衣類や装飾品に用いられるケースもありますが、多くの家畜の肉や母乳は、やがて食料として消費者の口に入ります。
病気になった家畜が出荷された場合、摂取した消費者に感染するかもしれません。病気の感染拡大や食中毒の発生は問題であり、安全な食材を提供するには衛生環境の向上が必須と考えられています。また、病気を発症した家畜は出荷前に処分する必要があり、命を粗末にしないためにもアニマルウェルフェアの改善は不可欠と認識されています。
飢餓問題の解決にも寄与
畜産業におけるアニマルウェルフェアの改善は、飢餓問題の解決に寄与できる取組みとしても有用です。現在、飢餓に苦しんでいる国や地域は少なくありません。アニマルウェルフェアの改善により家畜の快適な生活環境が保たれると、畜産物の品質向上につながります。
良質な食品が世界各地に広く供給されれば、飢餓問題の解決に効果的です。現在、世界の飢餓問題は深刻であり、その対策としてもアニマルウェルフェアの改善は必要性が増しています。
生産者や消費者が進められる取組み
アニマルウェルフェアの改善は、畜産関係の生産者だけでなく消費者や他業種も参加できる取組みです。それぞれの立場で取組みを進めれば、家畜の環境改善につながります。以下では、生産者や消費者が実践できる取組みをご紹介します。
生産者が実践可能な取組み
畜産関係の生産者は、家畜の気持ちに寄り添ったアニマルウェルフェアの改善が実践可能です。家畜を育てている生産者は動物と深く関わっているため、異変が起きた時には即座に気づけるでしょう。常に家畜が何を求めているか考えながら、動物の心情をふまえた生活環境や衛生状態の改善を進められます。
また、アニマルウェルフェアの改善について社会の認知度を上げる取組みも、畜産の関係者が進められる活動です。現在、国内では家畜の問題に対する関心が低いと見られ、関係者はアニマルウェルフェアの概念を広める必要があるといわれています。家畜の問題に関する社会的関心を高めるため、アニマルウェルフェア畜産協会は、アニマルウェルフェア改善の普及にも力を入れています。
消費者などが参加できる取組み
アニマルウェルフェアの改善について消費者が参加できる取組みは、自治体や畜産関係の組織に認証された食品を購入することです。近年、国内では、農林水産省の指針をもとにアニマルウェルフェアの認証制度を定めるケースが増えてきました。代表的な事例としては、アニマルウェルフェア畜産協会や山梨県の制度が挙げられます。食料品を購入する時、アニマルウェルフェア認証食品を選べば、家畜が悩まされている問題の改善に貢献できます。
また、畜産業の現状に理解を深める姿勢も、アニマルウェルフェア改善を推進するのに効果的です。畜産の関係者を訪問する、あるいは関連イベントに参加すると、畜産現場が抱える問題について詳しく話を聞けるでしょう。さらに他業種も、様々な方法で家畜関係の問題可決に寄与できます。アニマルウェルフェア認証食品を積極的に扱ったり、家畜の環境改善やイベント開催費用を支援したりする方法があります。
近年、アニマルウェルフェアの改善は、畜産業だけの問題でなく持続可能な社会を実現するうえで重要な世界的課題になりました。そのため、日本も、畜産関係者にとどまらず消費者や他業種の企業まで社会全体で取り組む姿勢が求められています。
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