日本女性の社会進出の歴史と国際社会とのギャップ

更新日:2023.07.19ビジネス豆知識

日本女性の社会進出の歴史と国際社会とのギャップ

近年、SDGsの影響もあり女性の社会進出は、世界的に注目を集めています。国連も女性の重要性に理解を示し、男女平等の雇用形態や産休・育休の充実を求めています。一方日本は、世界と比べると女性の社会進出が遅れていると指摘されています。なぜ遅れているかを理解すれば、これから現状を改善する時に活かせるでしょう。そこで今回は、過去の歴史をふまえ、世界と比べて日本で女性の社会進出が遅れている理由や今後の改善が急がれる課題をご紹介します

日本における女性の社会進出

日本における女性の社会進出

近代から現代までの歴史を振り返ると、日本における女性の社会進出は、国内の近代化が開始された明治初期から見られました。ただし、女性を軽視する風潮は強かったといわれています。以下では、近代以降の女性における社会進出の歴史をご紹介します

明治期

明治期は、多くの女性が、日本の近代化に大きく貢献した時期です。世界遺産として有名な富岡製糸場は1872(明治5)年に設立され、多くの工女が勤務していました。1900(明治33)年には女子大学である津田塾大学が誕生し、女性の社会進出を後押しします。

ただし、社会的には、女性を優れた人材と評価する意識が育っていませんでした。師範学校や大学に進めば「結婚できなくなる」と噂され、結婚後も働き続けると世間的な評判はよくなかったと伝えられています。

大正期

大正期は、様々な分野で多くの女性が活躍した時期です。当時、働く女性は、「職業婦人」とも呼ばれました。職業婦人が従事した職種は、事務・医療・教育関係や店舗の販売員・タイピストです。

女性の参政権を求める動きも高まり、1919(大正8)年には日本初の婦人団体「新婦人協会」が設立されます。それでも、女性が働くことに対する社会的な意識は明治期から大きく変わりませんでした。「結婚したら退職し、家庭に入るもの」と考える風潮は、依然として強かったといわれています。

昭和期(戦前・戦中)

昭和期の戦前は、結婚した女性が働き続けるケースも増え始めた時期です。当時の女性は、従来の職種にとどまらず婦人車掌など幅広い仕事に就きました。戦中は、戦況が厳しくなるなか、学生から既婚者まで幅広い年齢層が労働力として動員された時期です。ただし、結婚を理由に退職した時、女性は証明書を提出しないと退職手当を受け取れないなど差別されていました。

昭和期(戦後)以降

昭和期の戦後以降は、女性の社会進出を支える体制の整備が本格化した時期です。具体的な事例としては、男女平等を定めた憲法の制定や婦人参政権の実現が挙げられます。1966年には、結婚を理由に女性従業員が解雇されたケースに対して違憲判決が下されました。

1986年には男女雇用機会均等法も制定され、法的には女性の社会進出を促す体制が充実していきます。とはいえ、男性に比べるとキャリアを積みにくいなど改善の急がれる課題は残っていると指摘されています。

女性の社会進出が遅れている理由

女性の社会進出が遅れている理由

現在、世界と比べて日本で女性の社会進出が遅れている主な理由は、ビジネスの場で旧来の風潮が根強く残っているためでしょう。また、家庭と仕事の両立が難しいとの声も多く聞かれます。以下では、女性の社会進出を妨げている要因についてご紹介します

旧来の風潮が根強い

日本で女性の社会進出が遅れている要因については、「旧来の風潮が根強く残っているため」と指摘する意見が少なくありません。旧来の風潮は。「男性は外で働き、女性は家庭を守るもの」と考える見方です。明治期以降、多くの女性は幅広い職種で活躍してきましたが、結婚後も働き続けると周囲は快く思わなかったといわれています。

近年は男女平等を訴える声が強まり、「女性は家庭を守るもの」とする先入観は問題視され始めました。それでも、ビジネスシーン全体で女性に対する先入観が排除されたわけでなく、様々な場面で男女格差をめぐるトラブルが発生しています。そのため、旧来の風潮が根強く残る現状は、女性の社会進出を遅らせている根本的な要因と認識されています。

家庭と仕事を両立しにくい

家庭と仕事を両立する難しさは、既婚女性の社会進出の遅れを招いている要因の代表例です。ここ数十年、日本では女性の社会進出を支える法制度が整えられ、就職する機会については男女差が小さくなりました。かつて男性ばかりであった職種でも、女性が働き始めています。

ただし、結婚した場合、家事全般、または大半を女性が負担している事例が目立ちます。以前に比べ、男性の家事・育児を負担する割合は増えてきているとはいえ、女性に比べると約4分の1と依然として低いのが現状です。既婚女性は日々の家事に追われる場合が多く、仕事との両立が難しくなり社会進出の遅れにつながっています。

“社会生活基本調査(2021)”.総務省.
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.stat.go.jp/data/shakai/2021/pdf/youyakua.pdf
(参照2023-07-12).

出産後の職場復帰も困難

出産後の職場復帰が困難な状況も、女性が社会進出するうえで妨げになっている大きな要因です。日本では、数年来、出産・育児しやすい労働環境を整えるため関連法案の制定が進められてきました。現在、多くの国内企業は、出産・育児休業制度を積極的に導入しています。ただし、女性が育児休暇で数年にわたり職場を離れると、元の部署や職務に戻れないケースは珍しくありません。

同じ職場に復帰しても家族が増えると長時間労働は難しくなるため、キャリアアップは望みにくいといわれています。出産後の女性は休暇前のキャリアを十分に活かせない場合が多く、社会進出を続けにくい状況にあります。

国際的な評価や今後の課題

国際的な評価や今後の課題

日本における女性の社会進出について、現在の国際的な評価は高くありません。今後は、さらに労働環境の改善を進める必要があるでしょう。以下では、2021年に発表された国際的な評価や改善の急がれる課題をご紹介します

2021年発表の国際的な評価

男女平等の進み具合について2021年に発表された評価によれば、日本は156カ国のうち120位でした。この順位は、ジェンダー平等の度合いを示したジェンダーギャップ指数(GGI)にもとづく評価です。政治・経済・教育・健康の4項目について測定され、日本のスコアは総合評価で0.656でした。

各項目の内訳は、政治0.061・経済0.604・教育0.983・健康0.973です。教育と健康はハイスコアですが、政治と経済はロースコアになっています。とくに政治は、世界の平均値を大幅に下回りました。以上の結果をふまえた場合、近年の日本における女性の社会進出は、政治・経済の分野を中心に遅れていると判断できます。

「共同参画」(2021年5月号).内閣府男女共同参画局.
https://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2021/202105/202105_05.html
(参照2023-07-12).

今後の課題

今後、日本が女性の社会進出を促すうえで、社会全体が旧来の風潮を改める姿勢は不可欠でしょう。結婚した女性が「家庭を守るもの」と見られなくなれば、家事の負担は減ると考えられます。いずれの家事も男性と等しく分担できた場合、家庭と仕事の両立は容易になると期待できます。また、女性に対する先入観が取り除かれると、企業が貴重な人材として評価する傾向は強まるかもしれません。

その場合、育児休暇を終えた女性は、元通りの立場で職場に戻りやすくなると見込めます。女性がキャリアアップを望める環境が整えば、様々なジャンルで社会進出は活発化するでしょう。結婚・育児を経験した女性が幅広く社会進出を果たした場合、夫婦が家事や子育てを上手に分担しながら働くことは当たり前になると考えられます。

世界的に女性の社会進出が著しいなか、日本が旧来の風潮に縛られている状況は望ましくありません。日本の女性が結婚・出産した後も安心して働ける社会を実現するために、旧来の風潮が取り除かれた労働環境の整備は急がれます。

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