グリーン成長戦略の基本や取り組み方とは
更新日:2023.05.26スタッフブロググリーン成長戦略は、環境問題の解決に向けて考案された政策です。現在、地球の温暖化は軽視できないレベルであり、この戦略では温室効果ガスの排出量の削減が主な目標に掲げられています。基本的な情報や今後の取り組み方を理解しておけば、様々な事業を進めるうえで役立つでしょう。そこで今回は、グリーン成長戦略の概要や同戦略が重視する分野をご紹介します。
目次
グリーン成長戦略の概要
グリーン成長戦略は、グリーンエネルギーを積極的に活用してカーボンニュートラルの実現を目指す政策です。以下では、グリーンエネルギーとカーボンニュートラルが何を指すか解説し、政府が描くグリーン成長戦略の筋道をご紹介します。
グリーンエネルギーとは
グリーンエネルギーは、自然環境に対する負担が少なく地球に優しいエネルギーの総称です。同エネルギーを生成する時は、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスなどが使われます。バイオマスは、化石資源(石油や天然ガス)を除いた生物由来の有機性資源を指します。
これらの資源は、化石資源に比べて枯渇するリスクが小さく、再利用できるところが特徴的です。また、発電した時、地球温暖化につながる二酸化炭素や有害ガスを排出しにくいという特徴もあります。グリーンエネルギーは、以上の特徴からグリーン電力や再生可能エネルギーとも呼ばれています。
カーボンニュートラルとは
カーボンニュートラルは、温室効果ガスの排出が全体でゼロになった状態を意味する言葉です。温室効果ガスは、地球温暖化の原因となるガス全般を指します。代表的な種類は、二酸化炭素とメタンです。関連法によると、ほかには一酸化二窒素や政令指定のハイドロフルオロカーボンが含まれています。
「温室効果ガスの排出が全体でゼロ」の状態は、排出量と吸収・除去量が差し引きでゼロになった状態です。温室効果ガスを吸収・除去する手段としては、植林や地中に埋める方法が挙げられます。カーボンニュートラルを実現するには温室効果ガスの大幅な削減が必要であり、簡単には達成できないとの声も聞かれます。
政府が描く筋道
グリーン成長戦略について現在の政府が描く筋道は、2050年までにカーボンニュートラルを実現する流れです。経済産業省の資料によると、エネルギーの生成に伴う2018年のCO2排出量は10.6億トンでした。政府の成長戦略では、この排出量を基準として2030年に25%減を目指し、2050年には温室効果ガスの実質ゼロを達成する計画です。
2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略(2020).経済産業省 .
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https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201225012/20201225012-1.pdf
(参照2023-05-18).
温室効果ガスの排出量を減らす方法としては、化石燃料だけに頼らない太陽光パネルや省エネ住宅の活用が挙げられています。同時に、植林などで温室効果ガスの吸収量を増やす予定です。なお、カーボンニュートラルの実現は簡単でなく、様々な状況に対処する複数のシナリオが用意されています。
グリーン成長戦略が重視する分野
グリーン成長戦略が重視する分野は、エネルギー産業や輸送・製造産業に関わる14の領域です。以下では、産業ごとの政府に掲げられている課題や、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みをご紹介します。
エネルギー関連産業
エネルギー関連産業においてグリーン成長戦略が重視する分野は、洋上風力産業・燃料アンモニア産業・水素産業・原子力産業です。
洋上風力産業は、市場の拡大が主な課題に挙げられます。現在、アジア市場の競争が激しいなか、国内には風車製造の拠点がありません。また、欧州とは環境面の条件が異なり、海外進出は難しくなっています。これらの現状をふまえ、今後は世界に通用する次世代技術の開発を進め、アジアをはじめ海外市場での競争力を強化する方針です。
燃料アンモニア産業は、石炭の火力でアンモニアを燃焼すると窒素酸化物が大量に発生する課題を抱えています。窒素酸化物(とくに二酸化窒素)は人体や自然環境に悪影響を及ぼすため、世界的に問題視されている有害なガスです。人体や自然環境への配慮から、政府はグリーンエネルギーを用いてアンモニアを燃焼する方法の開発・普及に力を入れています。
水素産業は、水素で発電するタービンや電力で動くFCトラックの実用化が大きな課題です。水を電気分解して水素を製造する装置の開発は欧州より遅れており、還元した水素を製鉄に用いる技術は確立していません。それぞれの課題に対し、政府は、水素発電タービン・FCトラックの市場の設立や水電解装置・水素還元製鉄の開発支援に取り組むと表明しています。
原子力産業は、新しい技術の開発や安全性・経済性の検証が必要な状況です。技術開発や発電に関わるノウハウの蓄積とともに、実用化に向けた運営体制の整備も求められています。最近、国内企業は海外のプロジェクトに参加するケースが見られ、政府は海外との共同プロジェクトを支援する考えです。
輸送・製造関連産業
輸送・製造関連産業でグリーン成長戦略が重視する分野は、次の7つです。
1.自動車・蓄電池産業
自動車・蓄電池産業が直面している大きな課題は、電気自動車や燃料を低価格で販売できていないことです。この問題を解決に導くため、政府は電気自動車の供給体制を強化しながら燃料・蓄電池の技術開発を支援すると述べています。
2.半導体・情報通信産業
半導体・情報通信産業の主要課題は、国民生活のデジタル化を中核で進めるデータセンターの設立です。政府には、データセンター設立に関わる設備投資をサポートする考えがあります。
3.船舶産業
船舶産業では、自然環境への負担が少ない燃料を大型船のエンジンに用いる技術が開発されていません。今後の技術開発は目下の課題であり、政府は実用化に向けて支援する姿勢を示しています。
4.物流・人流・土木インフラ産業
物流・人流・土木インフラ産業は、グリーンエネルギーの輸送手段の確立や物流施設の省エネ化が主な課題になっています。政府は、交通網の利便性を高めたうえ省エネにつながる設備の導入を推進する方針です。
5.食料・農林水産業
食料・農林水産業は、それぞれの地域で得られるグリーンエネルギーの活用が求められています。この政府方針のもと、各地の農林水産業では化石燃料に由来するCO2の排出量をゼロにする活動が進められています。
6.航空機産業
航空機産業は、装備品や動力系統の電動化が技術面の課題です。近年、世界規模で技術開発が開始され、今後は燃料を従来型からグリーンエネルギーに転換する技術の確立も目指すといわれています。
7.カーボンリサイクル産業
カーボンリサイクル産業が抱える課題は、CO2を吸収する技術の市場拡大や生物由来の燃料にかかるコストの低減です。いずれも現在は低価格での供給が難しく、政府は公的な需要などを増やしてコスト低減につなげたいと考えています。
家庭・オフィス関連産業家庭・オフィス関連産業
家庭・オフィス関連産業についてグリーン成長戦略が重視する分野は、住宅・建築物産業/次世代型太陽光産業・資源循環関連産業・ライフスタイル関連産業です。
住宅・建築物産業/次世代型太陽光産業は、自然環境に配慮した住宅・建築物の普及が主要課題に挙げられます。政府は、制度改革などでカーボンニュートラルに貢献できる建物の築造を促す予定です。
資源循環関連産業は、資源を循環させるシステムの構築により温室効果ガスの排出量をゼロにすることが課題です。今後、政府は技術面の向上や運用設備の充実化に取り組みます。
ライフスタイル関連産業が求められている課題は、自然環境に配慮した住宅や電気自動車を用いた暮らしの実現です。政府は、コスト低減や市場拡大によりグリーンエネルギーを活用した生活の普及を目指しています。
カーボンニュートラルは、企業努力だけで達成できる目標ではありません。グリーン成長戦略では、消費者にも自然環境に優しいライフスタイルを送ることが求められていると考えられます。
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