紙ストロー導入は環境汚染問題解決になる?

更新日:2023.10.18スタッフブログ

近年、大量のプラスチックごみは、世界的な問題になっています。プラスチックの廃棄量を減らすため、国内外ではプラスチック製ストローの代わりに紙ストローが導入されはじめました。ただし、この対策には問題点もあります。紙ストロー導入を環境問題の解決へつなげるには、メリットとデメリットを理解する必要があるでしょう。そこで今回は、プラスチックが引き起こす環境問題をふまえ、紙ストローに伴うメリットや問題点をご紹介します

プラスチックが引き起こす環境問題

プラスチックが引き起こす環境問題は、大きく分けるとメソプラスチックが原因になる場合とマイクロプラスチックに由来するケースの2種類です。以下では、それぞれのプラスチックに伴う環境問題の実状をご紹介します

プラスチックが抱える問題点

環境問題に関してプラスチックが抱える大きな問題点は、動物が食べた時に消化・分解できないところです。もともとプラスチックは、石油から生成されています。本来、プラスチック自体に毒性はありません。とはいえ、ポリ塩化ビフェニル(PCB)などの有害な汚染物質が吸着しやすい性質を有しています。

無毒のプラスチックが問題視される主な理由は、多くの動物が誤って摂取しているためです。摂取した後に消化・分解できないことから、汚染物質も吸着した状態で体内に残ります。汚染物質が体内に残っている動物を他の動物が食べると、消化・分解されず毒性は蓄積される一方です。多くの動物の健康を害する恐れがあるため、プラスチックは自然生態系に悪影響を及ぼすと懸念されています。

メソプラスチックに伴う環境問題

環境問題でメソプラスチックが問題視されているケースは、さまざまな動物が誤食などにより被害を受けている事例です。さまざまな大きさのプラスチックのうち、長さ5mm超~5cmのものがメソプラスチックと呼ばれます。このサイズの身近な例としては、ペットボトル・包装袋の細片や釣り具が代表的です。これらが川や海を漂流するうちに細かく破砕されると、魚や鳥が誤食する事態につながっています。

また、釣り具については、釣り糸や漁網が動物に絡まり傷つける問題も多発しています。いずれも、自然生態系にとっては好ましくない状況です。そのため、世界の国々では問題解決に向けた対策を推進しています。

マイクロプラスチックに対する見解

マイクロプラスチックについては、いまのところ地球環境への影響が明確に把握できていませんプラスチック片の長さ5mm以下のものがマイクロプラスチックと呼ばれます。サイズが非常に小さく追跡が難しいため、自然生態系に対する影響は不明確といわれています。

ただし、微細な破片は動物の口に入る可能性が高く、マイクロプラスチックも誤食は確実に起きていると見られています。現状では、明確な被害状況が報告されていないに過ぎません。また、マイクロプラスチックは回収も困難であり、メソプラスチック以上に注意が必要と指摘する声も聞かれます。

紙ストロー導入に対する期待

紙ストロー導入に対する期待

現在、プラスチックごみの削減は世界的な課題であり、問題解決に向けて進められている施策がプラスチック製ストローに代わる紙ストローの導入です。以下では、紙ストロー導入で期待されるメリットをご紹介します

プラスチックごみを減らせる

プラスチック製ストローが紙ストローに切り替えられた場合、プラスチックごみの量を減らすのに効果的です。昨今、プラスチック製ストローは多くの飲食店で利用されています。普通のストローは1本あたりのプラスチックが1gに満たないものの、廃棄されるトータルの量は小さくありません。

プラスチック製ストローは相当量が廃棄されていると考えられるため、紙ストローが代用されればプラスチックごみの削減につながると期待できます。その場合、動物が誤食するリスクも低減するでしょう。紙ストローの導入はプラスチックの廃棄量を減らせると見込まれるため、自然生態系を保護するうえで好ましいと考えられます。

リサイクルしやすい

紙は、プラスチックよりリサイクルしやすい点からも地球環境にやさしいと期待されている素材です。プラスチックは消化・分解できないものの、リサイクル後に劣化しやすい傾向が見られます。この影響もあり、世界全体のリサイクル率は1割に満たないといわれています。

一方、紙のリサイクル率は、約6割程度といわれています。また、プラスチックと異なり手早く分解できるため、リサイクルに回せなかった場合も焼却処分しやすい利点があります。これらの特徴から、ストローをプラスチック製から紙製に変えれば、地球環境にかかる負担は軽くなると見込まれています。

石油資源を節約できる

プラスチック製ストローから紙ストローへの移行は、石油資源を節約できる効果も期待されています。これまで、多くのプラスチックの生成に石油が使われてきました。ただし、石油の産出量は無限でなく、このままプラスチック製品を大量に生産すれば石油資源の枯渇が進むと懸念されています。

プラスチック製品の生産量を減らした場合、石油の使用は控えられ資源の枯渇を抑えるのに効果的です。そのため、ストローの素材を紙に移行する方法は、石油資源の保護にも役立つと見られています。紙ストローはプラスチックごみを減らせるうえリサイクルしやすいなどのメリットがあり、国内外で導入が進められています。

紙ストローに伴う問題点

紙ストローに伴う問題点

紙ストローの導入は、プラスチックごみの問題解決に効果のある選択肢です。ただし、短所も見られ環境問題全体を解決に導く万全の策とはいえません。以下では、紙ストローに伴う代表的な問題点をご紹介します

森林伐採は避けられない

飲食店などで紙ストローを導入した場合、それに伴う森林の伐採は避けられなくなります。紙の主要原料は、木材です。紙製品を生成する時は、木材を確保するため森林を伐採する必要があります。過去30年を見ると、紙を生成するために世界各地で200万ヘクタールの森林が伐採されたといわれています。

紙ストローを生成する時も、森林伐採は避けられません。プラスチック製に代わり大量に生産された場合、多くの木材が必要になり広大な面積の森林が伐採対象になると考えられます。石油資源の枯渇は抑制できても、自然林は大きく失われる可能性があり軽視できない問題点に挙げられています。

温室効果ガスの排出量も少なくない

紙ストローは、製品加工や廃棄に伴い排出される温室効果ガスが少なくないところも大きな問題点です。ストローを紙から生産する場合、森林で原料となる木材を確保してから加工工場までトラックなどで運搬する必要があります。紙ストローが製造されると販売店や飲食店に運ばれ、利用後は廃棄されます。これらの過程で、製造機械の稼働時やトラックの運転中に排出されるものが、温室効果ガスの二酸化炭素です。

海外の研究機関からは、紙ストローの製造や廃棄などに伴う温室効果ガスの排出量はプラスチック製の4.6倍になる可能性もあると指摘している論文も見受けられます。現時点で、紙ストローの廃棄までに排出される温室効果ガスは少ないとはいえない状況にあり、地球環境への悪影響はプラスチック製より大きいとの声も聞かれます。

紙ストローは、メリットばかりでなく森林伐採の面積や温室効果ガスの排出量に関してデメリットも抱えている製品です。そのため、プラスチック製ストローの代わりに導入しても環境汚染の問題を大幅に改善することは難しいかもしれません。

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