社会保険の対象者が増える!企業の注意点は?
更新日:2022.11.08スタッフブログ社会保険は、2022年10月から法改正により適用範囲が拡大されます。具体的には、適用対象となる事業所や従業員の要件が変わります。事業所によっては、今度の改正で新たな適用対象に含まれるかもしれません。それでも早めに何が変わるか確認しておけば、改正後に慌てることなく対応できるでしょう。そこで今回は、法改正の流れや企業が注意したい点などをご紹介します。
目次
法改正の基本的な流れ
社会保険の適用拡大は、2016年10月から開始された法改正です。今後、2022年10月と2024年10月にも段階的な範囲拡大が予定されています。
現行法の適用範囲
現行法の適用範囲は、短時間労働者を除く被保険者数が、常時にわたり500人を超える事業所です。もともと今回の社会保険の適用拡大は、少子高齢化や生活スタイルの多様化が進む国内状況に合わせ実施されることとなりました。大きな目的は、あまねく国民全体に適切な社会保険を提供することです。
短時間労働者は、パートやアルバイトとして働く従業員を指します。2016年10月の法改正により、一定の要件を満たす短時間労働者が適用対象に加えられました。現時点で適用対象に認められる要件は、次の通りです。
- 1週あたりの所定労働時間が20時間以上
- 雇用を見込まれる期間が1年以上
- 月額の賃金が88,000円以上
- 学生でないこと
これらの要件を満たす短時間労働者が所定の事業所に勤務している場合、現行法では健康保険・厚生年金保険の被保険者と見なされています。
2022年10月からの変更点
2022年10月からは、事業所の適用範囲および短時間労働者の要件が変わります。具体的な変更点は、以下の2点です。
- 事業所の適用範囲:被保険者の総数が常に100人を超える(短時間労働者を除く)
- 短時間労働者の要件:雇用期間が2カ月を超えると見込まれる
事業所については、被保険者数の範囲が500人超から100人超へ拡大されます。同時に短時間労働者の要件は、見込みの雇用期間が1年以上から2カ月超になる流れです。
さらに2024年10月以降は、事業所に関する条件が改正され常時の被保険者数(短時間労働者を除く)が50人超まで広がります。そのため、今後の改正法で適用対象に含まれる事業所は事前に準備しておく必要があると考えられます。
なお、短時間労働者の要件のうち1週あたりの所定労働時間と月額賃金は現行法と変わりません。また雇用が見込まれる期間は、2022年10月と2024年10月に実施される2回の法改正ともに2カ月超が要件です。現行法を含む3つの改正法は、適用範囲に細かな違いが見られます。新たな法改正の実施時期が近づいてから慌てないためには、早めに変更点の詳細を確認しておいたほうがよいでしょう。
業種による違いなど
2022年10月から実施される法改正の適用範囲は、業種によって違いが見られます。たとえば士業は、一般企業と異なるケースのひとつです。また場合によっては、老齢厚生年金や保険料が支給停止あるいは免除される可能性もあります。
改正法が適用される士業
日本年金機構の公式ホームページによると、2022年10月以降の改正法が適用される士業は弁護士・沖縄弁護士・外国法事務弁護士・公認会計士・公証人・司法書士・土地家屋調査士・行政書士・海事代理士・税理士・社会保険労務士・弁理士です。
これらの士業を扱っている事業所では、常時5人以上の従業員を雇用している職場が健康保険および厚生年金保険の適用対象になります。雇用形態は、正社員や契約社員からパートタイマーあるいはアルバイトまで名称を問いません。
従業員が被保険者となる要件は、正規雇用またはパート・アルバイトのうち1週あたりの所定労働時間および1カ月の所定労働日数がフルタイムで働く労働者の4分の3以上になる場合です。なお、すでに任意で適用事業所になっている時、今回の法改正に伴う申請手続きなどは必要ありません。
老齢厚生年金の支給停止
老齢厚生年金を特例により受給している場合、2022年10月から厚生年金保険の被保険者になると年金の定額部分が全額支給停止となる経過措置が実施されます。この措置の対象者は、65歳未満で障害厚生年金の1級から3級に該当するか保険の加入期間が44年以上となる長期加入者の特例対象者です。これらのケースで以下の条件に当てはまると、経過措置の対象に含まれます。
- 法改正以前から上記の特例対象として老齢厚生年金を受給
- 2022年10月以降も同じ事業所で勤務を継続予定
- 上記の2条件を満たし以下のいずれかの理由で2022年10月から厚生年金保険に加入
- 1. 事業所の適用範囲に関する要件の見直し
- 2. 短時間労働者の勤務期間に関する要件の変更
- 3. 適用事業所への士業の追加
これらの理由により経過措置の実施対象となる場合、所定の手続きを済ませると年金の定額部分を継続して受給できます。どんな手続きが必要になるかは、管轄窓口や公式ホームページで詳細をご確認ください。
保険料の免除
保険料の免除は、2022年10月の法改正以降に従業員が短期間の育児休業を取得した場合などへの対応です。いまのところ当該の免除規定は、育児休業が同月中に14日以上となる時や育児休業の期間に同月の末日が含まれるケースで適用されます。また育児休業などが1カ月を超えると、賞与にかかる保険料も免除されます。
被保険者である従業員が育児休業を取得あるいは延長する際は事業主に申請し、事業主が必要書類を日本年金機構に提出するシステムです。所定の手続きを終えると、従業員および事業主は保険料を負担せずに済みます。保険料の免除についても細かい規定があるため、詳細は時間のあるうちに調べておくのが賢明といえます。
企業が注意したいポイント
2022年10月からの法改正に伴い、これまで適用外であった企業は新たに適用対象になるか注意が必要です。また適用範囲に含まれる場合、被保険者になる従業員の把握や社会保険料の算出も欠かせないでしょう。
適用対象になるか
現行法が適用されていなかった企業は、まず今度の法改正で適用範囲に含まれるか確認する必要があります。2016年10月時点で、社会保険の適用範囲は被保険者の総数(短時間労働者を除く)が常時500人超の事業所に限られました。2022年10月から、事業所の要件は同被保険者の総数100人超まで拡大されます。
さらに弁護士や公認会計士の士業事務所は、常に5人以上の従業員を雇用していると適用対象です。こちらは、上記の要件と異なり短時間労働者を除く常時の被保険者数が判断基準ではありません。どちらのケースも一定規模の従業員が勤務する職場では、早めに現状を確認しておくことが望ましいと考えられます。
被保険者の把握
すでに社会保険が適用されている企業と新規に適用対象となる場合のいずれも、新たな被保険者に加えられる従業員の把握は必須です。現行法は、短時間労働者(学生を除く)が1年以上の継続勤務を見込まれると適用されます。今度の法改正では上記の要件が1度撤廃され、新たに2カ月を超える勤務期間が見込まれると適用範囲に含まれます。
2022年10月以降に社会保険が適用される企業は、改正後の要件に該当する短期労働者が勤務しているかどうかのチェックを怠れません。そのうえで事前に社会保険料も算出しておくと、給与計算などの経理業務をスムーズに進められるでしょう。改正法が実施されてから慌てないためにも、これらの準備は余裕をもって済ませておくことをおすすめします。
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