新時代に必要なダイナミックケイパビリティとは?
更新日:2023.11.01ビジネス豆知識ダイナミックケイパビリティは、自社の強みを活かして企業を変革する能力です。近年はビジネスを取り巻く環境が目まぐるしく変わり、多くの企業では社会情勢の変化に応じて自己変革する力が重視され始めています。この能力について理解を深めて今後の事業に活かせば、ビジネスを優位に進めやすくなるでしょう。そこで今回は、ダイナミックケイパビリティの概要を解説し、最近のビジネスシーンで注目を集める背景や具体的な事例をご紹介します。
目次
ダイナミックケイパビリティの概要
ダイナミックケイパビリティは、企業が自己変革する能力です。外的環境の変化に対応し、組織自体が変わる力を指します。以下では、この能力の定義や基本的な構成要素をご紹介します。
ダイナミックケイパビリティの定義
ダイナミックケイパビリティは、外的環境が変化するなかで企業が自己変革し、市場競争を生き抜く能力です。この概念は、もともとカリフォルニア大学バークレー校のデイヴィッド・J・ティースにより提唱されました。
一般的に、自社の強みである経営資源を活用しながら変革を進め、競合他社に対する優位を実現する手法と説明されています。日本では、行政機関が公表した「ものづくり白書2020」で取り上げられ、製造業などの課題を考えるうえで重要な戦略経営論であるとの見解が示されています。
基本的な構成要素
ダイナミックケイパビリティを構成する基本的な要素は、Sensing(感知)・Seizing(捕捉)・Transforming(変革)の3つです。
Sensing(感知)
Sensing(感知)は、企業経営に関わる環境の変化を迅速・的確に認識する能力を指します。具体的な環境変化には、顧客ニーズ・同業他社の動向や社会情勢の移り変わりが含まれます。
Seizing(捕捉)
Seizing(捕捉)は、企業が所持する経営資源を環境変化に応じて適切に再構築・再利用する能力です。社内の資金力や技術力を、新しい顧客ニーズや市場の動きに合わせて有効活用する力を指します。
Transforming(変革)
Transforming(変革)は、企業が変貌する能力です。
実際には、市場や競合他社の動向をふまえた経営スタイル・既存事業の見直しや、組織編成・社内ルールの変更を意味します。企業は、自分たちを取り巻く外的環境を感知し、社内資源の有効活用と経営組織の変革を通して市場競争における優位性の確保を目指します。
ビジネスシーンで注目を集める背景
ダイナミックケイパビリティがビジネスシーンで注目を集める背景には、ビジネス環境の変化の激しさがあるでしょう。以下では、世界経済・顧客ニーズ・デジタル技術などの著しい変化が企業に及ぼしている影響をご紹介します。
世界経済のグローバル化
世界経済はグローバル化が進み、さまざまな企業に大きな影響を及ぼしています。近年、多くの国内企業は、経済のグローバル化により海外企業との競争が激しくなりました。これまで国内市場で蓄積してきた経営ノウハウが国外で通用せず、他国企業との競争で苦労するケースは少なからず見られます。
国内企業が海外市場で生き抜くには、従来の業務スタイルを大幅に見直す必要が出てきました。現在、海外進出を目指す企業は、諸外国の価値観を視野に入れて組織運営する姿勢が求められています。そのため国内企業は、経営環境の変化に応じて企業が自己変革する能力を意味する「ダイナミックケイパビリティ」に注目しているのです。
顧客ニーズの多様化
顧客ニーズの多様化も、多くの企業に経営姿勢の変化を促している大きな要因です。国内では、第二次大戦後に物不足が続くなか、新商品をつくれば売れる傾向が見られました。ただし、次第に人々の需要は満たされ、消費者の間では個々の好みを重視する動きが強まっていきます。
その結果、近年の顧客ニーズは多様になりました。また、特定の顧客に限っても、時間とともにニーズが変わるケースは珍しくありません。多くの企業は、売上を伸ばすため、変化の激しい顧客ニーズの把握に力を注いでいます。現在、企業にとって顧客情報の収集は必要性が増し、ニーズの変化を察知するダイナミックケイパビリティは重視されています。
デジタル技術の進歩
デジタル技術の進歩は、ビジネスシーンに大きな変化をもたらしている要素です。近年、情報処理システムは著しく進歩し、企業では膨大な顧客情報のスピーディーな分析が可能になりました。また、通信技術も急速に発展し、顧客にアプローチする手段は増えています。さらに、AI分野の技術革新とビジネスへの応用も盛んです。
ただし、すべての企業が、新しいデジタル技術の導入に成功しているわけではありません。企業によっては新システムの導入で業務の効率化を達成していますが、技術革新に対応できず市場競争で出遅れるケースも見られます。そのため、最新のデジタル技術を活用して市場での競争力を強める必要からも、多くの企業はダイナミックケイパビリティへの関心を高めています。
ダイナミックケイパビリティの事例
企業がダイナミックケイパビリティで変革した事例としては、フィルムメーカーや衣料品メーカーが挙げられるでしょう。以下では、この戦略で企業の自己変革に成功したケースをご紹介します。
フィルムメーカー
フィルムメーカーが既存事業で培った技術力を新規事業に活かしたケースは、ダイナミックケイパビリティで成功した代表的な事例です。もともと、同フィルムメーカーは、写真フィルム事業において高度な技術を有していました。ただし、デジタルカメラが普及するにつれ、写真フィルムの市場規模は次第に縮小していきます。
この市場動向をふまえ、同メーカーは、これまでに蓄積した技術力を活かして新規事業を展開しました。フィルム事業の技術は化粧品や医薬品の製造に転用され、成功を収めます。その後、業績は好調が続き、経営環境が変化するなかダイナミックケイパビリティで事業転換を成し遂げた事例として知られています。
衣料品メーカー
衣料品メーカーの事例は、コロナ禍でマスク不足が起きるなか、顧客ニーズをマスクの商品化に結びつけたケースです。同メーカーには、以前から顧客の声を取り入れる仕組みが構築されていました。この仕組みはコロナ禍でも有効に機能し、社内に抵抗があったもののマスクの開発が進められていきます。
マスク開発では、自社製の機能性肌着に用いている素材が再利用されました。速乾性と通気性に優れた素材は夏場でも快適な装着感があり、ヒット商品になったといわれています。この事例では、マスクに対する顧客ニーズをふまえ、社内にある肌着の素材を活かして新商品の開発に成功しています。
インテリア販売
インテリア販売を手がける企業は、オンラインで顧客ニーズに応えるシステムを構築した事例です。このシステムの導入により、商品に関する相談は、オンライン通話で受け付けられるようになりました。遠くに暮らす顧客からも相談が寄せられ、これまで以上に顧客のニーズを把握しやすくなったといわれています。
そのため、このケースは、顧客をサポートする体制を変革することで競合他社との差別化に成功した事例と認識されています。以上の成功例は、絶えず変化する市場動向や顧客ニーズを素早く察知し、速やかに新規の事業展開や新システムの導入につなげているところが特徴的です。
今後も市場動向や顧客ニーズが激しく変わり続けた場合、従来通りの業務スタイルで市場競争を生き抜くのは難しくなるかもしれません。外的環境の著しい変化に合わせて経営体制を再構築する時は、スピード感が求められるでしょう。そのため、これから各種事業を競合他社より優位に進めるなら、ダイナミックケイパビリティにより企業を迅速に変革する戦略は重要性が増すと考えられます。
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