電子帳簿保存法改正による主な変更点と注意点
更新日:2022.11.08ビジネス豆知識電子帳簿保存法は、2022年1月に改正が施行されました。大幅な要件緩和は、当該法の普及につながると見込まれるものの、法的に認められる保存方法などについては注意が必要です。罰則内容も強化されたため、どこが変わったか理解しておくと経理業務の円滑化に役立つでしょう。そこで今回は、電子帳簿保存法の概要、主な変更点、さらに適用対象となる書類や注意点などをご紹介します。
目次
電子帳簿保存法の概要
電子帳簿保存法は、国税に関係した帳簿や書類の電子データによる保存を認める法律です。実際に電子化した方法で保存する場合は、法的に示された一定の条件を満たさなければなりません。
原則は紙での保存
国税関係の帳簿、または書類を保存する際、法律上は紙での保存が原則です。この点は、現在も変わりません。日本で紙面による保存の原則が変わった要因は、コストや事務的な手続きにかかる負担が小さくなかったためです。職場の負担を減らす目的のもと、紙以外に電子データで保存する特例が認められました。
最初の法律施行は、今回の改正から20年ほど前の1998年です。それ以降、時代の変化に合わせて法改正が繰り返されてきました。ここ数年だけ見ても、2016年や2020年に要件緩和や認定範囲の拡大が認められています。ただ一方で、現在も国税関係の書類を紙で保存するルールを継続している企業は珍しくないといわれています。
電子帳簿保存法が認める方法
電子帳簿保存法が認める電子化した形式での保存方法は、大きく分けると「電子データ保存」・「スキャナ保存」の2つです。電子データ保存の対象には、国税関係の帳簿全般が含まれます。具体的な書面類としては、仕訳帳や総勘定元帳が挙げられます。また、ネット上の売買やクラウド契約などの電子取引も適用対象です。
スキャナを使用した保存が認められる書類は、国税関係のうち決算関係と取引関係が該当します。前者には賃貸対照表、損益計算書、棚卸表が、後者には、自分で作成あるいは取引先から受領した見積書、領収書、請求書、契約書などがあります。これらの帳簿や書類は、法律の定める条件を満たせば紙以外に電子化した方法でも保存可能です。
近年の法改正の流れ
近年施行された法改正の流れを見ると、いずれも職場の負担軽減を目指している点が特徴的です。2015年は、電子署名の義務化を廃止するとともに、金額の上限も撤廃しました。2016年に緩和された項目は、スキャナ保存に関する要件です。2020年には、電子決済した時の利用明細データも証拠能力のある記録として認められます。
今回の法改正が掲げる主な目的は、経済社会のデジタル化をふまえた経理の電子化と、それによる生産性の向上と記録水準の向上です。従来型を継続する企業に対し、電子化した方法によるデータ保存の促進を目指しています。現在は、電子取引を導入する職場が増え始めているため、今後は国税関係の帳簿、または書類を作成するうえで欠かせない法制度になると見込まれています。
法改正の主な変更点
今回の法改正による主な変更点は、さらなる要件緩和、電子データ保存の義務化、罰則内容の強化の3つです。新法に基づき経理業務を進めれば、職場の作業負担は以前より軽くなると期待できます。
さらなる要件緩和
2022年1月施行の改正法は、国税関係の帳簿・書類について要件を緩和しているところが大きな特徴です。
主な改正項目は、次の5つが挙げられます。
- 事前承認制度の廃止
- システム要件緩和
- 検索対象を限定
- 適正事務処理要件の廃止
- スキャナ保存の要件緩和
事前承認制度の廃止は、税務署長などへの事前申請から受理まで一通りの手続きが不要になる改正です。この変更点は、国税関係帳簿・書類や電子取引のデータ保存すべてに対して適用されます。
システム要件緩和は、電子データの真実性や可視性の確保に求められる保存要件の簡素化です。旧法の保存要件は細かく規定されていましたが、改正後は最低3つまでに絞り込まれています。
検索対象は、日付・取引金額・取引先の3項目に限られました。不正防止の目的で設けられた、事務処理を適正化する要件は廃止されています。また、スキャナ保存で3日以内のタイムスタンプ付与を求める規定は、日数が概ね7営業日以内に延長されました。
電子データ保存の義務化
今後、電子取引で授受したデジタル形式の各種情報は、電子データによる保存が義務になります。これまでは、原則通り紙に出力した保存方法も認められていましたが、改正法の施行以降は紙面による保存ができなくなります。また、電子取引した際は、国税関係のデータ保存に紙の文書は使えません。
具体的な義務規定の対象には、EDI取引、クラウドサービスの請求書をPDFファイルでメール送信するケース、あるいはWeb請求書発行システムを活用する方法などが該当します。実際に電子データを授受したら、所定の日数までにタイムスタンプを付与し、法的条件を満たした状態での保存が必要です。
罰則強化の流れ
今回の改正法は従来に比べると、法規定に違反した場合の罰則内容が強化されています。旧法まで、各種の規定は詳しく設定される傾向が見られました。それに対し新法は、デジタル方式によるデータ保存を広める目的もあり、全体として要件を緩和する方向に向かっています。
一方で、税務処理に不備があると罰則は厳しくなります。スキャナ保存で事前承認は必要ありませんが、申告漏れに対する重加算税は10%です。電子取引も例外でなく、同様のペナルティが科されます。以前より厳罰化された罰則内容は、2022年1月1日以降に申告期限が訪れる国税から適用されます。まだデジタル方式の税務処理に慣れていない場合は、注意しましょう。
改正法の適用対象や注意点
改正法の適用対象は、従来と大きく変わりません。大まかに分類すると、電子帳簿での保存が適した種類とスキャナでも保存できるタイプの2種類に分けられます。
電子帳簿での保存が適した種類
電子帳簿でのデータ保存が適していると考えられる種類の代表例は、帳簿類や決算関係書です。帳簿類の場合、近年は最初に情報入力を開始する時点からデジタル方式を用いる方法が主流です。先に示した仕訳帳や総勘定元帳のほか、現金出納帳や買掛金元帳が該当し、経費帳や売上帳などの補助簿まで含めるかどうかは任意で選べます。
決算関係書の中身は、すでに触れた賃貸対照表や損益計算書など決算内容について作成された各種書類です。既述の通りスキャナ保存を認められていますが、電子帳簿が利用可能との声も聞かれます。
スキャナで保存できるタイプ
電子帳簿を使わなくてもスキャナで保存できるタイプは、基本的に重要書類と一般書類の2つです。重要書類には、資金や物資の動きを記した書類が当てはまります。具体的には、契約書や請求書だけでなく納品書、預金通帳、小切手、約束手形借用証書や振替依頼票などです。
一般書類は、重要書類に含まれない残りの書類全般です。こちらには見積書以外に自社で作成・交付した注文書や検収書の写しに加え、取引先から受け取った貨物受領証などが入ります。
改正法に伴い気をつけたい注意点
改正法の施行に伴い気をつけたい注意点は、スキャナでの保存状態や社内の運用体制についてです。書面データをスキャナで保存する場合、白黒のグレースケール設定は一般書類のみ認められています。重要書類は、カラーでスキャンもしくは撮影しなければいけません。サイズが大きければ、無理せず複数回に分けて保存しましょう。
法律違反した時の罰則が厳しくなった点を考えると、社内の運用体制についても注意は怠れません。そのため、これからデータ保存の電子化を進める予定なら、十分に準備してから着手することをおすすめします。
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