公益通報者保護法が改正!注意すべきことは?

更新日:2022.11.08ビジネス豆知識

公益通報者保護法が改正!

公益通報者保護法は、企業で不祥事が見つかった時に通報者を保護するため制定された法律です。2022年6月施行の改正法で、企業に対する義務は以前より明確になり、通報者を保護する規定は強化されました。具体的な改正内容について理解すれば、万が一の際にも適切に対応できるでしょう。そこで今回は、この保護法の概要や今回の主な改正ポイントをご紹介します

公益通報者保護法とは

公益通報者保護法とは

公益通報者保護法は、企業の不祥事について内部通報した従業員などを保護する法律です。法律を制定した後、十分に機能していないとの指摘があり、2022年に改正法が施行されました。

法律の目的

公益通報者保護法の主な目的は、企業の従業員をはじめとする通報者の保護です。職場で不祥事を発見した際、安心して通報できる環境づくりを目指しています。たとえば、経営状態が悪化した時などは、大手企業でも不祥事を起こすケースが見られます。その際、内部通報は問題の早期発見や被害の拡大防止に有効です。

ただ、従業員は企業の一員であり、職場の利益や自分自身の保身を優先的に考える可能性があります。頭では不祥事が望ましくないと分かっていても、立場的に内部通報するのは簡単でありません。それでも早めの通報を促すため、通報者を守る目的で考案されたルールが公益通報者保護法です。

法律制定の背景

日本で公益通報者保護法が制定された背景には、従業員を含め内部通報者が不利益を受けると危惧される状況があります

これまで、日本企業では数々の不祥事が発生してきました。経営不振が原因の場合、組織全体で不祥事に関わっていたケースも知られています。内部通報すると公共の利益に貢献できますが、当事者である企業から歓迎されるとは限りません。

メディア報道によると、過去には内部通報者が解雇される事態も生じたと伝えられています。実際に解雇されたかどうかに関係なく、その可能性を示唆されたら従業員は通報を控えても仕方ないでしょう。通報を試みた従業員に不利益が及ぶと懸念されたため、公益通報者保護法は2006年に施行されました。

法律改正の理由

今回、公益通報者保護法が改正された大きな理由は、従来の法的規定が十分に機能していないと指摘されたためです。2006年に施行された法律も、改正法と変わらず通報者の保護を主な目的に掲げていました。法律上は、一定の要件を満たした「公益通報」により解雇などの不利益を受けないように求めています。

とはいえ、企業には内部通報に対する体制を整える義務が課されませんでした。通報者が何かしら不利益に見舞われた時も、事業者が負うペナルティは明確に示されていません。結果的に大きな効力を発揮していないとの声が聞かれ、通報者の保護を強化するため法律の改正が進められました。

今回の主な改正ポイント

今回の主な改正ポイント

公益通報者保護法に関する主な改正ポイントは、内部通報に対応する体制の整備義務をはじめ、次の6つです。今回の改正では、事業者による不正の是正および従業員による通報の円滑化、また通報者の保護の強化を目指しています

1.対応体制の整備義務

2022年6月から施行された「公益通報者保護法の一部を改正する法律」の最初のポイントは、内部通報に対する体制整備が義務化された点です。改正公益通報者保護法は、内部通報があった時に企業が適切に対応する体制の整備義務を定めました。同法11条1項では「公益通報対応業務従事者」の選定、同2項では公益通報に対応する必要な措置の実施を義務づけています。公益通報対応業務従事者は、公益通報に伴い社内調査や是正措置を進める担当者を指します。

2.情報の守秘義務

次に挙げられる改正ポイントは、内部通報や社内調査で得た一通りの情報に関する守秘義務です。同法12条で公益通報対応業務従事者は、当該業務で知り得た内容のうち公益通報者を特定できる情報を正当な理由なく漏洩してはいけないと定められました。正当な理由には、通報者本人の同意などが示されています。

3.通報の要件緩和

今回の改正法により、従業員などが行政機関や報道機関に通報する時の要件は緩和されました。同法3条2号および3号は、通報を理由とする企業の解雇が無効となる要件を追加しています。これは、従業員などが内部通報しても職場を解雇されるリスクが減ったことを意味します。

4.通報者の保護範囲拡大

改正法は、旧法に比べると公益通報した時に法律上の保護対象となる通報者の範囲が広がりました。旧法を見ると、公益通報者のうち退職者や役員は保護対象に含まれていません。それに対し改正法では、これらの立場の通報者とともに派遣社員も法的保護の対象として加えられました。

5.通報の保護範囲拡大

今回の改正法は、通報者とともに通報内容(通報対象事実)の保護範囲も旧法より拡大しています。これまで通報内容の保護範囲は、旧法に定める規定に違反する犯罪行為(刑事罰の対象行為)に限られました。今後は、過料の対象となる行為(行政罰の対象行為)を通報した場合も保護対象に含まれます。

6.保護内容の拡大

改正法は、同法7条により通報者や通報内容の保護範囲だけでなく保護の内容も拡大しました。具体的には、通報を理由とする解雇の無効、降格・減給の禁止に損害賠償責任の免除が追加されています。同7条は、「事業者は(中略)公益通報者に対して、賠償を請求することができない」と定めました。以上の改正により、これからは社内で不正が見つかった時に従業員などが以前より通報しやすくなると期待されています。

企業に求められる対応策

企業に求められる対応策

今回の法改正で企業に求められる対応策としては、内部通報窓口の設置など以下の4つが挙げられています

内部通報窓口の設置

2022年6月施行の改正法にもとづき企業が最初に求められる対応策は、内部通報窓口の設置です。今回の法改正によると、パートタイマーを含む従業員が300人を超える企業は内部通報に対応する体制の整備が法的義務になりました。そのため対象の企業は、通報窓口の設置が急がれます。なお役員は従業員にカウントされず、同法11条3項により従業員300人以下の企業は努力義務にとどまります。

利害対立の除外

社内で通報窓口を運用する時は、信頼性を高めるため利害の絡む関係者を除外する配慮が必要です。通報窓口が実際に通報を受けた際、担当者が不正に関わっていると中立性や公正性を保てなくなる恐れがあります。適切に機能させるには、利害の対立を避けるため窓口の担当者から関係者を外す工夫が欠かせません。職場全体の関与が考えられる場合などは、社外から専門家や第3者機関を招く方法も有効でしょう。

不利益な扱いの防止

通報窓口の信頼性を維持向上するうえでは、通報者に対する不利益な扱いを防止する措置も不可欠です。従業員などが職場の不祥事を是正するため内部通報を考えても、解雇や降格・減給のリスクがあれば実行しにくくなるでしょう。早期の通報を促すなら、不利益な扱いを禁止するなどの防止策が求められます。また実際に通報者が不利益を受けた場合、すぐ救済措置を施すなどフォローする姿勢も重要と考えられています。

社内研修の実施

企業全体で内部通報の重要性などについて理解を深めたい場合、社内研修の実施も効果的です。従業員や役員に対する研修内容としては、内部通報の意義や通報者を保護する必要性についての説明が挙げられます。また通報窓口の担当者には、実際に通報があった時の対応方法や注意事項も伝える必要があります。これらの対応策を適切に進めておけば、万一、職場で不祥事が起きた時に迅速かつ適切な社内環境の改善を実施できるでしょう。

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