ティール組織に進化するための3つのポイント
更新日:2023.06.06ビジネス豆知識ティール組織は、すべてのメンバーが自分で意思決定する組織モデルです。これまでの組織と異なり上下関係や指示命令系統はなく、次世代型のモデルとして注目されています。ただ、従来は見られなかった新しい概念であるため、簡単には実現できないかもしれません。そこで今回は、最初にティール組織の概要を解説し、大まかな進化のプロセスや実践時のポイントなどをご紹介します。
目次
ティール組織の概要
ティール組織は、それぞれのメンバーが指示命令系統なしに自分で考えながら意思決定する、次世代型の組織モデルです。数年前、この新たな概念はフレデリック・ラルーにより提唱されました。
ティールは鳥の羽色
本来、ティール(teal)は、英語で鳥のコガモを意味する言葉です。羽色を指すこともあり、色合いは緑に近い青色といわれています。コガモはカモの仲間です。和名の由来は「小型のカモ」であり、日本に生息するカモ類のなかでは最小種のひとつに数えられています。雌雄とも翼全体は褐色系ですが、一部の羽は緑がかった色合いです。
コガモの羽色の特徴から、ティールは鳥そのものだけでなく、暗い青緑色を意味することもあります。またティールブルー(teal blue)と表現すると緑がかった青色、ダークティール(dark teal)は濃い青緑色です。ティール組織の場合、単純に色を指しているわけでなく、組織が徐々に進化する様子を象徴するニュアンスも含んでいると説明されます。
新たな概念が生まれた背景
組織モデルの新たな概念が生み出された背景は、旧来の手法が必ずしも正解ではないと認識されたためです。当時、ティール組織の提唱者であるフレデリック・ラルーは、マッキンゼーで組織変革のプロジェクトに関わっていました。その一環として、世界中の組織に関する調査を約2年半の期間を費やしながら実施します。
その際に考え出された新概念が、これまで知られていた組織に見られない次世代型の組織モデルです。従来のモデルは多くの成果を上げている場合も組織に悪影響を及ぼす可能性があると指摘し、新たにティール組織の概念を提唱します。詳しい概念の中身は、2014年に発表された彼の著書「Reinventing Organizations」のなかで記されています。
生命体によるたとえ話
ティール組織が目指すスタイルは、とくに決まっていません。どんな進化を遂げるかはメンバーの工夫次第であり、よく生命体にたとえられています。決まった進化モデルのないティール組織は、それぞれの組織のメンバーが独自の工夫により組織づくりを進めていくところが特徴的です。進化の方向性は限定されず、メンバーが何を選ぶかにより多様な道筋が広がると考えられています。
幅広い方向性が選択可能な特徴から、たとえ話として取り上げられるのが、生命体の組織の変化です。生命体における個々の組織が自由に変化し続けるのと同じく、ティール組織では各メンバーが独自の考えで意思決定できると説明されます。このスタイルを導入した際は、社長や上司からの指示なしに、組織や人材の可能性を従来以上に引き出せると考えられています。
ティール組織の進化のプロセス
ティール組織の進化のプロセスは、大きく分けると次の5段階です。それぞれ、進化段階に合わせレッド、アンバー(琥珀)、オレンジ、グリーン、ティール(青緑)の5色に色分けされています。
1.レッド組織
最初のプロセスであるレッド組織は、特定の個人が支配的な立場で力を行使する段階です。残りのメンバーは、支配的な力に従属する形で組織に参加します。組織の目線は短期的であり、競争社会で生き残ることのみ重視しているところが大きな特徴です。
進化プロセスとしては、組織全体が個人の力に大きく依存する原始的な段階といわれます。これらの特徴からレッド組織は、「個人の力で支配的にマネジメントする段階」あるいは「オオカミの群れ」と表現されています。
2.アンバー組織
次のアンバー組織は、組織内に厳しい上下関係が形成される段階です。それぞれのメンバーは、明確なヒエラルキーのもとで個々に役割を配分されます。はっきりした指示命令系統により個々の役割を果たすことが求められ、各種情報は上意下達の方式で管理されます。
レッド組織に比べると個人への依存度は低く、長期的な目線で動いているところも特徴的です。進化プロセスとしては「厳格に役割を全うする段階」に位置づけられ、「軍隊」とも表現されます。
3.オレンジ組織
オレンジ組織はアンバー組織と変わらずヒエラルキーがあるものの、それぞれのメンバーは成果を上げれば昇進できる段階です。アンバー組織に比べるとヒエラルキーは流動的であり、各メンバーは個々の力を発揮しやすい傾向にあります。
また組織全体は、時代の流れに合わせて変化を遂げられる特徴も備えています。ただ、マネジメント体制は徹底的であり、いずれのメンバーも競争社会での生き残りを強いられる段階です。人間らしさを失いがちであり、「機械」にたとえられます。
4.グリーン組織
グリーン組織は、アンバー組織以来のヒエラルキーが残るものの前段階までより多様性を認めているところが大きな違いです。従来通りの上下関係は形成されますが、各々のメンバーの主体性は尊重され個人の能力を発揮しやすい特徴があります。すべてのメンバーを個人レベルで大切に考える傾向が強く、組織の目標達成ばかりを重視しません。これまでより組織内の風通しはよく人間らしさが感じられ、比喩として「家族」と表現されます。
5.ティール組織
進化プロセスの最終段階であるティール組織は、所属メンバーが独自にルールを工夫するとともに相互に感化し合いながら組織の目標達成を目指します。従来の組織との大きな違いは、組織内に上下関係や指示命令系統が形成されないところです。
社長やリーダーをはじめとする役割分担、あるいは上司と部下などのヒエラルキーはありません。組織は個人に従属せず、関係者全員で共有していると見なされます。またメンバーの諸活動が全体の進化につながるため、ひとつの「生命体」にたとえられます。
ティール組織へ進化するポイント
ティール組織への進化に必須といわれるポイントは、「進化する目的」「セルフマネジメント」「ホールネス」の3つです。
進化する目的
企業や職場でティール組織を目指す際は、時代や社会の動きに合わせ日々の目的を進化させることが求められます。かつて組織の目的は、固定化されるケースが多く見られました。あらかじめ企業の上層部が将来的なビジョンを掲げ、現場のメンバーが成し遂げる方式です。トップから判断が下されたら、以降はほとんど変更されません。
一方、ティール組織は、次々に移り変わる時代や社会のニーズを感じ取りながら、進化の方向性を柔軟に改変する姿勢が不可欠です。
セルフマネジメント
ティール組織のセルフマネジメントは、意思決定の権限を特定の個人に限らず全メンバーに分け与えるスタイルです。このスタイルが取り入れられた場合は、いずれのメンバーも日々の目的や将来の方向性を自分の責任で決定します。何かしら目的を設定する際、従来の組織と異なり誰かの指示を仰ぎません。
単に上司から部下へ権限を委譲するのと違い、さまざまな状況の変化に応じて個人や組織全体の目的を流動的に進化させることが可能になります。
ホールネス
ホールネスは全体性を意味する言葉であり、ありのままのメンバーを性格から価値観まで含め全体的に受け入れる姿勢です。ティール組織には、この考え方にもとづき全メンバーが普段通りに過ごせる環境を整備する役割があります。万全の環境が整えられると、いずれのメンバーも自分本来の姿を変える必要が生じません。
実際にティール組織へ進化する場合、これらのポイントを意識すると上記した5つのプロセスは進みやすくなると考えられています。
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