フリーアドレス導入にあたっての課題とメリット
更新日:2023.04.07業界関連情報固定席を持たずに自由な席で働くオフィススタイルを、フリーアドレスと呼びます。フリーアドレス制を導入することで、生産性の向上やコミュニケーションの活性化、コスト削減など、さまざまなメリットを得られます。ただし、フリーアドレス制には集中力や所属意識の低下を招くリスクもあるようです。こちらでは、フリーアドレス導入にあたっての課題をご紹介します。
目次
フリーアドレスとは
フリーアドレスとは、社員が自席を持たずに自由な席で働くオフィススタイルです。従来のオフィスでは、1人1台デスクが与えられ、決まった席で働いていました。しかし、フリーアドレスの場合は自席の概念がなくなり、好きな席で働けます。
フリーアドレスが導入され始めたのは1990年代です。コンサルタントや営業といった、基本的に社外で活動する社員を抱える会社が、コスト削減のために推進しました。当時は導入する企業が少なく、定着するまでには至りませんでした。
しかし、最近になってフリーアドレスを導入する企業が増加してきます。フリーアドレススタイルの企業が増えたのには、「ナレッジワーク」の考え方が関係しています。「ナレッジワーク」とは、専門的な知識を用いて社会や企業に付加価値のある知的生産物を生み出していくことです。そういった働き方をする方は、ナレッジワーカーと呼ばれます。現代は物を消費するだけの社会から、サービスや価値観も消費する社会に変化したため、ナレッジワークが重視され始めました。
知的創造を行うには、垣根のないオープンな環境が最適です。フリーアドレススタイルは、偶発的な出会いや接触を生み出し、労働者のコミュニケーションパフォーマンスを高めてくれるため、ナレッジワーカーと相性が良くなります。ナレッジワーカーの需要が高まったことが、フリーアドレススタイルの会社の増加につながったと考えられています。
フリーアドレスのメリット
フリーアドレスのメリットは以下のとおりです。
コストを削減できる
メリットのひとつはコストを削減できることです。営業や客先常駐が多い会社の場合、オフィスに社員全員分の机があっても、半分も使われないというケースが少なくありません。しかし、フリーアドレス制を導入すれば、実際に出社する社員の分のみのスペースで良くなります。スペースを削減できれば小さなオフィスでも問題なくなり、家賃や電気代を削減可能です。
生産性が上がる
フリーアドレス制を導入すると、生産性の向上が期待できます。自分のデスクがあると、つい気が緩んでしまいがちです。しかし、毎回席が替わることで適度な刺激が維持され、常に新鮮な気持ちで働けます。集中力が保たれ、生産性向上につながるでしょう。
コミュニケーションが活性化する
自由な席に座ると、さまざまな部署の社員の隣に座ることになります。組織内の壁がなくなるため、コミュニケーションの活性化が可能です。今まで関わりの少なかったメンバーと話すことにより、新たなコラボレーションのアイデアが生まれる場合もあります。
セキュリティが向上する
フリーアドレスになると、保管スペースがなくなるため、ペーパーレス化が進みます。自分の席があると重要な書類を置きっぱなしにしてしまうこともありますが、そうすると盗み見されたり社外に流出したりするリスクがあり、危険です。しかし、ペーパーレス化してアクセス権を設定するといったセキュリティ対策を行えば、流出の心配がありません。
レイアウトの変更が簡単に
席が決まっていなければ、レイアウトの変更が簡単になります。固定席があれば、模様替えのたびに荷物を移動させなければなりません。しかし、フリーアドレスであれば荷物を運ぶ手間なくレイアウトを変更できるのです。また、オープンスペースにすれば床面積は同じでも、開放的なレイアウトが可能になります。
フリーアドレスのデメリット
フリーアドレスにはメリットが多い一方、デメリットもいくつか存在します。
どこに誰がいるのかわからない
席が決まっていないと、誰がどこに座っているのかわからなくなります。固定席であればどこに行けば会えるのかすぐにわかりますが、フリーアドレスの場合はどこにいるか聞いたり、社内を探し回ったりしなければなりません。また、不在の時にメモや資料を置いておくこともできなくなります。問題を解決するためには、ネットワーク上に共有フォルダをつくる、連絡ツールを用意するといった方法が効果的です。
帰属意識が低下するおそれがある
社員はオフィスに自分の席があることで、会社に所属していることを感じます。そのため、固定の席がないと、会社や部署に対する所属意識が薄れてしまうおそれがあります。帰属意識の低下を防ぐには、組織の中でのアイデンティティを保持できる工夫が必要です。たとえば、ネームプレートつきのロッカーを用意することで、自席はなくても会社に自分の居場所があるのを意識できます。自分専用の場所をひとつだけでもつくるのがおすすめです。
浸透しない可能性がある
フリーアドレス導入により他部署とのコミュニケーションを活性化しようとしても、同じ部署で固まってしまうケースも少なくありません。また、席が替わると落ち着かないため、毎回同じ席を選びがちになることも考えられます。浸透しにくい場合は、毎日くじ引きで席を決めるといった、必然的に席が替わる仕組みの導入がおすすめです。
集中力が妨げられるケースも
社員の中には、働く場所が変わると集中できない方や、オープンスペースだと周囲の音が気になるという方もいらっしゃいます。そういった方は、フリーアドレスの導入によって集中力が落ちてしまうかもしれません。しかし、オープンスペース以外にも集中できるスペースを設けてあれば、社員は働きやすい場所を自由に選択できます。
フリーアドレスに向いている会社は?
フリーアドレススタイルが適しているのはどの様な会社なのでしょうか。
ひとつは、営業職や派遣の多い社員がメインの企業です。こういった会社は常に社員の半分が外出しているケースも少なくなく、フリーアドレスを導入することでスペースを有効活用できます。毎日の在席率が40%未満の会社は、フリーアドレスを検討してみても良いかもしれません。
また、オフィス外でも仕事ができる環境が整っている会社は、少ない席数でも問題ないため、フリーアドレスと相性が良くなります。フリーアドレスを導入することで在宅ワークの準備が進み、働き方改善のきっかけになったという企業もありました。
社員の年齢的には、20~30代の方が多い職場だと、固定席のない自由な働き方を受け入れられやすくなります。
反対に、フリーアドレスに向いていないのは、電話対応の多い事務職やデスクトップで仕事をするクリエイター職の方がメインの企業です。こういった企業は毎日席を替えるよりも、固定席で仕事をしたほうが効率も良くなります。
また、在籍率が常に50%以上の会社も、スペース削減が難しいため、フリーアドレスから得られるメリットが少なくなります。営業職がメインの会社であっても、夕方にはほとんどの社員が戻る会社は、あまりフリーアドレスに適しません。
さらに、40歳以上の方が多い場合はフリーアドレスに抵抗を持つ方が多いため、注意しましょう。40歳以上の方は、自分のデスクがあるのが当たり前の環境で過ごしてきました。そのため、突然仕組みを変えるのはストレスにつながる可能性があります。フリーアドレスを導入する際は、会社の状態を考慮して、うまくいくかどうか判断してみましょう。
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