2023年の酒税法改正|どんな影響がある?

更新日:2024.10.21スタッフブログ

2023年の酒税法改正|どんな影響がある?

2023年10月から酒税法が改正することにより、ビールが安くなると歓迎する声が多く聞かれます。ただし、法改正の主な目的は、中小企業にかかる税負担の軽減です。また、税率が上がる酒類もあるといわれています。この機会に改正法の理解を深めれば、家計への影響を考えるうえで参考になるでしょう。そこで今回は、酒税法における酒類の分類をふまえ、改正法の目的・適用範囲・軽減内容や消費者への影響をご紹介します

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酒税法における酒類の分類

酒税法における酒類の分類

現行の酒税法によれば、「酒類」とはアルコール分1度以上の飲料のことです。酒類の種類は、発泡性酒類・醸造酒類・蒸留酒類・混成酒類の4つに分けられています。以下では、各酒類の現行法による内訳や定義をご紹介します

発泡性酒類の内訳・定義

発泡性酒類の内訳は、ビール・発泡酒・その他の発泡性酒類です。それぞれ、以下の通りに定義されています。

ビール 麦芽・ホップ・水などを原料に発酵、アルコール分20度未満
発泡酒 麦芽か麦が原料に使われ発泡性がある酒類、アルコール分20度未満
その他 ビール・発泡酒以外の発泡性がある酒類、アルコール分10度未満

醸造酒類の内訳・定義

醸造酒類には、清酒・果実酒・その他の醸造酒が含まれます。それぞれの定義は、次の通りです。

清酒 米・米麹・水などを原料に発酵、アルコール分22度未満
果実酒 果実を原料として、もしくは果実に糖類を加えて発酵、それぞれアルコール分は20度未満と15度未満
その他 穀類・糖類などを原料に発酵、アルコール分20度未満・エキス分2度以上

蒸留酒類の内訳・定義

蒸留酒類は、ウイスキー・ブランデー・蒸留焼酎などです。蒸留焼酎は、連続式と単式に細分されます。

ウイスキー 発芽した穀類と水を原料に糖化させて発酵、アルコール含有物を蒸留
ブランデー 果実(と水)を原料に発酵、アルコール含有物を蒸留
蒸留焼酎 アルコール含有物を連続式か連続式以外の蒸留機で蒸留、連続式はアルコール分36度未満、単式は45度以下

混成酒類の内訳・定義

混成酒類は、合成清酒・甘味果実酒・リキュール・みりんなどです。みりんは調味料として知られますが、酒税法では酒類に含まれます。

合成清酒 アルコール・焼酎(もしくは清酒)・ブドウ糖などが原料、香りや色合いが清酒に類似、アルコール分16度未満・エキス分5度以上
甘味果実酒 果実酒に糖類(もしくはブランデーなど)を混ぜた酒類
リキュール 酒類と糖類などが原料、エキス分2度以上
みりん 米・米麹に焼酎(アルコール)を加えて製造、アルコール分15度未満・エキス分40度以上

なお、蒸留酒類と混成種類には上記以外の酒類(原料用アルコールや粉末酒)も含まれ、詳しい定義は酒税法第3号から第6号に示されています。

改正法の目的・適用対象や軽減内容

改正法の目的・適用対象や軽減内容

2023年10月の酒税法改正では、所定の要件を満たす場合に全品目の酒税が軽減される予定です。以下では、法改正が実施される目的・改正法の適用対象や具体的な軽減内容をご紹介します

改正法の目的

国税庁が公表した「酒税法等の改正のあらまし」によると、2023年10月から施行される改正酒税法の目的は、酒類業に関わる中小企業の支援です。同資料は、2023年4月に国税庁から報告されました。資料によると改正法の目的は「地域性などをふまえた多様な酒類の製造などに積極的に取組み、酒類業の健全な発達に寄与する中小企業者の支援」と記されています。

以前の改正では、清酒や地ビールをはじめ一部の酒類に限り、酒税が軽減されています。これらの酒税軽減は、酒類間の税負担の格差や小規模なビール製造業の活性化を目指していました。すでに酒類間の税負担格差は縮小され、地ビール業者の税負担は軽くなっていると見られ、現行法を見直す必要が生じたと説明されています。

参照:国税庁「酒税法等の改正のあらまし」(令和5年度税制改正)
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.nta.go.jp/taxes/sake/sozei/pdf/01.pdf
(参照2023-09-01).

改正法の適用対象

国税庁の報告資料によると、改正法の適用対象は、「承認酒類製造者が製造する全品目」です。承認酒類製造者は、事業計画書を作成し、税率軽減が適用される承認を受けた製造者を指します。また、改正法が定める全品目は、製造免許を受けている酒類です。

所定の製造者および酒類に該当した場合、改正法の適用対象と見なされます。現行法では清酒・合成清酒・単式蒸留焼酎・連続式蒸留焼酎・ビール・発泡酒・果実酒の7品目が減税対象であるのに比べると、軽減税率の適用範囲は広がります。

ただし、企業規模や生産規模も要件を満たさないと、改正法の軽減税率は適用されません。企業規模は中小に限られ、みなし大企業や特定大法人は適用外です。生産規模は、原則的に前年度の総課税移出数量が3000kl以下と規定されています。2023年10月の改正法では、以上の要件すべてを満たした場合、酒税軽減の適用対象になります。

酒税の軽減割合

国税庁の資料を見ると、酒税の軽減割合は酒税累計額に応じて決まる仕組みです。
酒税累計額ごとの軽減割合は、次の通りに示されています。

  • 5,000万円以下:20%
  • 5,000万円超~8,000万円以下:10%
  • 8,000万円超~1億円以下:5%

改正法の施行後、酒税は製造免許を受けた酒類全品目にかかる税額により、段階的に軽減されます。また、製造者ごとの減税額は最大1,400万円です。酒税軽減で中小規模の酒類製造者は、現行法より税負担が軽くなると見込まれています。

法改正による消費者への影響

法改正による消費者への影響

2023年10月の法改正に伴い、ビールや清酒で税率が下がるとの期待感が高まっています。ただし、すべての酒類が減税されるわけではありません。以下では、減税および増税が予想される酒類をご紹介します

発泡性酒類の予想

発泡性酒類のうち、改正法で減税が予想される飲料はビールです。発泡酒とチューハイは現状維持、第3のビールと呼ばれるジャンルは増税になると見られています。ビールは、350ml換算でこれまでより7円近く税率が下がる見通しです。それに対し、第3のビールは10円ほどの増税になると予想されています。発泡酒とチューハイは、2023年10月の法改正で税率が変わる予定はありません。

飲料メーカーは、減税によるビールの消費拡大に期待し、新商品の開発に力を入れているといわれています。2023年10月以降は、美味しいビールが買い求めやすい価格で店頭に並ぶかもしれません。

醸造酒類の予想

醸造酒類については、清酒が減税、果実酒が増税になる予定です。350ml換算でこれまでより清酒は3円ほど税率が下がり、果実酒は3円ほど上がると見られています。この減税と増税により、2023年10月以降は、醸造酒類の清酒と果実酒で税率の差がなくなる見通しです。

昨今、清酒は人気が低迷しているとの声も聞かれますが、法改正による減税は販売促進につながる可能性があります。一方、果実酒は数円の増税にとどまるため、大きく消費が落ち込むことはないでしょう。

家計への影響

法改正で一部の酒類が買い求めやすくなるとしても、購入量が増えれば家計への負担は重くなるかもしれません。ビールは、法改正の影響で値段が安くなると予想されるものの、購入量が増えれば出費は多くなります。発泡酒や第3のビールとの価格差が縮小されても、買い過ぎには注意する必要があるでしょう。

また、国税庁は、最終的な税率の統一を目指しているといわれています。ビールに比べて税率の低い発泡酒や第3のビールは、今後も税率が上がる予定です。将来的には、ビール以外の発泡性酒類が、一律に高くなる可能性もあると指摘されています。2023年10月の法改正で一部の酒類が安くなっても、家計の負担を軽くするには、これまで通り出費を抑える工夫が大切です。

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