デジタルマネーによる賃金の支払い
更新日:2023.03.31スタッフブログ賃金のデジタル払いは、労働基準法の一部改正により2023年4月1日から解禁される給与の支給方法です。企業でデジタル払いを導入すれば、コスト面の負担軽減につながると期待されています。ただし導入時には、経理部門の作業負担が増える可能性もあり注意は怠れません。そこで今回は、デジタル払いの定義や解禁の理由、企業・従業員にとってのメリット・デメリットをご紹介します。
目次
デジタル払いの定義や解禁の理由
デジタル払いは、賃金がデジタルマネーで支払われる方式です。賃金のデジタル払いが解禁される背景には、キャッシュレス決済の普及などがあります。以下では、デジタル払いの定義や国内で解禁される理由をご紹介します。
デジタル払いの定義
デジタル払いは、デジタル方式による賃金の支払方法です。企業がデジタル方式を導入した場合、従業員は電子マネーやスマホ決済で給与を受け取れます。これまで企業による賃金の支払方法は、銀行口座に振り込む方法が一般的でした。その理由は、労働基準法により賃金は通貨払いが原則であり、例外として銀行口座・証券総合口座への振込が認められていたためです。
2023年4月1日からデジタル払いが解禁された場合、従業員の同意があると企業はデジタル方式で賃金を支給できます。あくまで強制でなく、従業員は従来通りの銀行振込とデジタル払いのいずれも選択可能です。なお、「労働基準法の省令改正案」によると、現金化できないポイントや仮想通貨は使用できません。
デジタル給与の仕組み
デジタル給与の支払方法は、資金移動業者を介して企業から従業員に賃金が支給される仕組みです。資金移動業者は、電子マネーなどの決済サービスを提供している業者です。デジタル給与に対応した資金移動業者のアカウントを取得すれば、その業者が用意する口座に賃金を入金できます。
実際に企業がデジタル給与を支払う時は、まず従業員の意思確認が不可欠です。それぞれの従業員の意思を確かめたら、次はすべての従業員について賃金の支給額を計算します。給与計算を済ませた後は、デジタル給与を希望する従業員の賃金を、アカウントのある資金移動業者の口座に入金すればデジタル払いは完了です。
国内で解禁される理由
デジタル払いが国内で解禁される主な理由は、キャッシュレス決済が社会全体に普及したためです。近年、キャッシュレス決済は、世界的に広まっています。日本でも電子マネーなどの利用率は上昇傾向にあり、政府は国内のデジタル化を推進するためデジタル払いの解禁を決定しました。
さらに、デジタル給与に対するニーズも、デジタル払い解禁の主要な理由に挙げられています。厚生労働省から賃金のデジタル払いが可能になれば一定水準の企業が利用するとの見解が示され、この意見もデジタル払いの解禁を後押ししました。以上に加え、「日本に銀行口座のない外国人労働者の受け入れ拡充」や「金融サービスの拡大」もデジタル払いの解禁理由といわれています。
企業・従業員にとってのメリット
賃金のデジタル払いは、企業と従業員の双方にとって有益です。それぞれ、デジタル給与の導入で得られるメリットは異なります。以下では、企業と従業員の各々にとってのメリットをご紹介します。
企業にとってのメリット
企業にとって、賃金のデジタル払いを導入する大きなメリットは、コスト負担を軽減できるところです。賃金を銀行口座に振り込む場合、振込手数料が発生します。1件あたりは少額でも、従業員の人数が多ければ負担は重くなります。銀行のATMに足を運ぶと、移動にかかる時間や労力も小さくないでしょう。
資金移動業者の口座の多くは、振込手数料が銀行より低額です。業者によっては、手数料が発生しません。いずれの場合も、振込手数料の負担は軽減できます。スマホのアプリ上で手続きが済めば、銀行のATMへ移動する手間も省けます。
また、賃金のデジタル払いは、従業員の満足度向上にも有効です。近年はキャッシュレス決済が国内で普及し、デジタル給与のニーズも高まると見られています。企業がデジタル給与のニーズに応えれば、従業員の満足度は向上すると期待できます。
企業が外国人労働者を採用しやすいところも、賃金のデジタル払いがもたらすメリットです。日本語に不慣れな外国人労働者は銀行口座の開設にも苦労しますが、デジタル給与は口座開設が必要なく、企業は海外の人材を確保しやすくなります。
従業員にとってのメリット
賃金のデジタル払いで従業員が得られる主なメリットは、給与を受け取る方法の選択肢が増えるところです。2023年4月以降、企業で賃金のデジタル払いが導入された場合、従業員は電子マネーによる給与の支給を選択できます。現金を電子マネーにチャージして使う機会が多い場合、最初からデジタル給与を受け取れれば現金をチャージする手間は省けます。
そのうえ、賃金のデジタル払いを選ぶかどうかは従業員の任意です。電子マネーより現金のほうが使いやすければ、銀行振込を希望できます。従業員がニーズに合わせて給与の支給方法を選べる点は、デジタル払い解禁の大きなメリットと考えられます。
また、給与がスマホアプリで決済可能になった場合、従業員は現金を引き出すために銀行のATMへ行く必要もありません。これまで給料日当日のATMは混雑する傾向にありましたが、今後はATMの混雑から解放される可能性もあります。現在、以上のメリットにより、デジタル給与の解禁は国内で多くの企業から注目されています。
導入時に注意したいデメリット
企業で賃金のデジタル払いを導入する時、経理部門の負担増には注意が必要です。また、入金できる金額が制限を受けるデメリットもあります。以下では、デジタル給与の導入に伴うデメリットをご紹介します。
経理部門の負担が増える
2023年4月から企業でデジタル給与を導入する場合、経理部門の負担が増える可能性があります。賃金のデジタル払いを開始する時は、給与を支給するシステムの見直しが必要になると考えられます。既存システムを改修するか新しいシステムを構築するとなれば、経理部門の負担は増加します。
また、デジタル給与の選択は従業員の任意となり、企業はデジタル払いに一本化できません。従業員の希望は分かれる可能性があり、経理部門は銀行振込とデジタル払いの両方に対応した体制づくりが求められます。資金移動業者のアカウント情報も、適切な管理が不可欠です。セキュリティの不備は給与の不正利用を招くため、経理部門の責務は重くなると指摘されています。
入金できる金額が制限を受ける
企業が賃金をデジタル払いできる金額には制限があり、給与の支給額によってはデジタル方式を採用できません。今回のデジタル払い解禁に伴う上限額は、100万円です。デジタル給与の支給額が上限を超える場合、厚生労働省は「100万円以下にするための措置を講じること」と述べています。
100万円を上回る給与がデジタル払いされた時、超過分は資金移動業者の口座から銀行口座へ移すことが必要です。従業員が給与全額のデジタル払いを希望しても、法的には認められません。資金移動業者も超過分を別の口座に送る仕組みが必要になるため、デジタル給与の上限設定も企業や従業員にとってデメリットになると見られています。
以上のデメリットを理解せずに導入すると、システム運用やセキュリティ管理でトラブルを招くかもしれません。そのため、これから企業が賃金のデジタル払いを実施する時は、何に気をつける必要があるか把握しておくことが大切と考えられます。
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