デジタル給与解禁!企業の対応や注意点は?
更新日:2023.02.17スタッフブログデジタル給与は、2023年4月から解禁される新しい給与の支給方法です。この仕組みでは、従来の銀行振込と異なり給与がデジタル方式で支払われます。デジタル給与の導入は、会社や従業員に多くのメリットをもたらすと期待されています。ただしデメリットも皆無でなく、導入時には注意が必要です。そこで今回は、デジタル給与の解禁理由・対応の流れや導入に伴うメリット・注意したいデメリットをご紹介します。
目次
デジタル給与の解禁理由・対応の流れ
デジタル給与は、給与が銀行口座でなくスマホの決済アプリなどを通じて電子マネーで支払われる仕組みです。以下では、この仕組みが解禁される理由や会社が給与をデジタル払いする時の対応の流れをご紹介します。
デジタル給与が解禁される理由
2023年4月から給与のデジタル払いが解禁となる背景には、デジタル給与の導入が労働基準法の改正案に盛り込まれ、厚生労働省に承認された経緯があります。同省が給与のデジタル払いを承認した主な理由は、次の通りです。
- 1.「新たな生活様式」に対応した規制改革推進の一環
- 2.外国人労働者の受け入れ拡充に向けた施策の一環
- 3.キャッシュレス決済の推進、およびフィンテックを活用した金融サービス提供の拡大、国際競争力の強化
- 4.給与のデジタル払いに一定のニーズがあると判断
厚生労働省が4の判断を示したのは、同省の「資金移動業者の口座への賃金支払について」の調査で、口座利用者の約4割がデジタル払いを「検討する」と回答したためです。デジタル給与はビジネスシーンでニーズがあり、外国人労働者の受容や金融サービスの拡充にもつながると期待され、厚生労働省により導入が進められています。
給与をデジタル払いする対応の流れ
会社が給与をデジタル払いする時の対応の流れは、大きく分けると次の3段階です。
- 1.給与のデジタル払いで利用する電子マネーなどのID情報を取得
- 2.デジタル方式で支払う給与額を計算
- 3.あらかじめ取得したID情報を用いてデジタル給与を振込
給与をデジタル払いする場合、事前に決済アプリの二次元コードや電子マネーのID情報などを取得しておく必要があります。また、いまのところ給与のデジタル払いには労働者の同意が不可欠です。誰にデジタル方式で給与を支払うかは、個々の従業員の意思を確認したうえで判断する必要があります。
一部の従業員のみがデジタル給与を希望した場合などは、給与計算や振込手続きが口座振込とデジタル方式の2通りになる可能性も皆無ではありません。
なお、作業効率を考慮すると、会社がアプリ決済や電子マネーの運営会社と直接に連携するのは現実的でないといわれています。給与データをアプリ決済・電子マネー用のデータに変換して運営会社のデータに連携する際は、専用システムを備えた事業者に仲介してもらうのが得策でしょう。
デジタル給与がもたらすメリット
会社がデジタル給与を導入する主なメリットは、新たに銀行口座を開設せずに済むところです。以下では、デジタル給与の導入が会社や従業員にもたらす代表的なメリットをご紹介します。
銀行口座の新規開設が不要
給与の支払方法がデジタル化された場合、会社・従業員による給与振込用の銀行口座の開設は不要です。かつて銀行で口座を開くには、印鑑や身分証を持参して窓口に足を運ぶ手間がかかりました。最近はネット経由でも手続きできますが、本人確認書類や顔写真の画像データを送信する必要があります。
いずれの方法も証明書類の用意は欠かせず、外国人労働者にとってはハードルが高いと指摘されています。デジタル給与は、銀行口座の開設に伴う手間が発生しません。従業員が新規口座を開設しなくても、給与の振込が可能になります。そのため、国内の少子化が進むなか重要な労働力として期待される外国人を受け入れやすくなると考えられています。
従業員のニーズに応えられる
従業員のニーズに応えられる点も、デジタル給与の導入がもたらすメリットの代表例です。近年、多くの会社では「給与の一部を二次元コードによるアプリ決済や電子マネーで支給してほしい」と希望する従業員の声が増えています。給与のデジタル払いを求める声に応えることは、従業員が働きやすい職場環境の形成につながります。
職場環境の改善は、従業員の労働意欲を高めるのに効果的です。デジタル給与の導入で仕事の生産性が上がれば、会社にとっては大きなプラスになります。さらにアプリ決済や電子マネーの利用が促進された場合、キャッシュバックやポイント還元も拡充すると見込まれています。今後、給与のデジタル払いに伴うキャッシュバックやポイント付与が実現すれば、従業員にとっても大きなメリットです。
コスト節減にも効果あり
給与を銀行振込からデジタル払いに切り替えた場合、振込手数料をはじめコストの節減にも効果があります。多くの銀行では、給与の口座振込に手数料がかかります。1件あたりは少額でも、件数が増えればトータルのコスト負担は軽くありません。同時に、全件を処理するまでに要する時間と労力も大きくなります。
デジタル給与の場合、支払い手続きにかかる手数料は銀行振込に比べると基本的に低額です。二次元コードのアプリ決済や電子マネーを扱っている事業者によっては、給与のデジタル払いに手数料が発生しません。さらに手続きの時間と労力も軽減されれば、デジタル給与の導入によるコスト節減の効果は大きいといえます。
デジタル給与の導入に伴う注意点
デジタル給与導入を検討する際は、デメリットについても考慮しておきましょう。以下では、デジタル給与の導入時に気をつけたい主なデメリットをご紹介します。
銀行振込と併用になる可能性
デジタル給与の導入には労働者の同意が欠かせないため、銀行振込と併用になる可能性があります。給与の支給方法をデジタル払いに一本化しにくいのは、多くの従業員が給与の一部のみデジタル払いを希望しているためです。この場合、従業員のニーズに反して全額をデジタル方式で支給すれば社内から不満が出てくるでしょう。
従業員によっては、給与のデジタル払いそのものを望まない可能性もあります。デジタル給与に従業員が同意しない場合は、すべての給与を従来通り銀行振込する必要があります。給与の支給方法がデジタル方式と銀行振込の2通りになれば、会社側の事務手続きの負担が重くなってしまいます。
セキュリティ面の不安
デジタル給与を導入する際は、関連データのセキュリティ面に対する注意も重要です。給与をデジタル方式で支払う場合、電子マネーに関する個人キー情報を従業員から提供してもらう必要があります。そのうえで、個人キー情報やデジタル払いした給与のデータは会社が一括管理することになります。
セキュリティ面の不備は、個人情報や給与データの漏洩を招く原因です。個人情報の流出や給与データへの不正アクセスを防ぐには、会社によるセキュリティ体制の整備が欠かせません。また、給与の改ざんや不正送金により従業員が不利益を受ける事態に備え、保障体制の構築も必要になるでしょう。新たに電子マネーの運営会社や給与システムなどを連携する時は、既存システムの改変や再構築も求められる可能性があります。
デジタル給与の導入は企業・従業員に多くのメリットをもたらす一方で、準備作業も簡単ではありません。2023年4月からのデジタル給与解禁に伴い給与のデジタル払いを実施するなら、会社と従業員が得られるメリットを最大限に活かすため、早めに導入体制を整えておくことが望まれます。
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