児童手当の所得制限撤廃は少子化対策になる?

更新日:2023.03.24スタッフブログ

児童手当の所得制限撤廃は少子化対策になる?

児童手当は、国による子育て支援を目的として創設された制度です。現行法は、予算の都合から所得制限が設けられています。ただし最近は、少子化対策を視野に入れて所得制限を撤廃する考えも与党内から出てきました。現在、国内の少子化は深刻であり、児童手当の所得制限撤廃が少子化対策に効果的か気になるところでしょう。そこで今回は、児童手当の現状や少子化対策への影響についてご紹介します

児童手当の現状

児童手当の現状

児童手当は、子育て支援を目的に生み出された制度です。現在は、支援条件として支給対象や所得額に制限が設けられています。以下では、児童手当の現状についてご紹介します

児童手当の目的

日本の児童手当は、子育てしている家庭の安定した生活や子どもの健全な成長を支援する目的で定められた制度です。現在、子育てには多くの費用がかかります。妊娠した際、医療機関などで無事に子どもを産むためには出産費用が必要です。出産後は、オムツ代やミルク代が欠かせません。子どもが成長すると、学費も発生します。

児童手当制度は、子育てする家庭の資金的な負担を軽くする目的で1972年に創設されました。内閣府によれば、同制度は子育てに関わる保護者や子ども自身に対する支援を主な目的に掲げています。ただし国家予算には限度があり、支給対象・支給額・支給時期などに条件が設けられています。

児童手当の仕組み

現在の児童手当は、中学生までの子どもがいる家庭に支給される仕組みです。支給額は、子どもの年齢に応じて変わります。支給対象は、中学校を卒業していない15歳までの子どもを育てている保護者です。子どもが15歳になった年度の3月31日が、支給期限になります。子どもの通学先となる学校は、国内に所在している必要があります。

子ども1人あたりの年齢に応じた支給額は、次の通りです。

3歳未満 一律15,000円
3歳以上(小学校卒業前) 第1・2子10,000円、第3子以降15,000円
中学生 一律10,000円

支給時期は、毎年2月・6月・10月です。基本的に、前月までの4か月分が一括で支給されます

原則や所得制限

児童手当は、原則として子どもが日本国内に居住している場合に支給される決まりです。留学のため海外で暮らしている時は、一定の要件を満たす必要があります。両親が海外にいる場合、日本国内で子育てしている保護者が支給対象になります。その際、国内の保護者が支給対象の資格を得るには、「父母指定者」として両親からの認定が必要です。

所得制限の限度額は、子どもの人数や配偶者の年収により変わります。子どもが2人で配偶者の年収が103万円以下の場合、年収ベースで960万円です。原則では、年収が限度額以上になると児童手当は支給されません。

ただし年収が所得上限の限度額未満であれば、月額一律5,000円の特例給付が支給されます。所得制限の限度額が960万円の場合、所得上限の限度額は1,200万円です。年収が960万円以上~1,200万円未満なら、特例給付の支給対象と見なされます。そのため、年収が所得制限の限度額以上である場合、特例給付を申請するには所得上限の限度額未満かどうか確認することが大切です。

所得制限をめぐる動き

所得制限をめぐる動き

児童手当の所得制限は、ここ10年ほど変化が目まぐるしい状況です。2009年からの政権交代に伴い撤廃と復活が繰り返され、2022年には法改正により所得制限が強化されています。以下では、これら所得制限をめぐる最近の動きをご紹介します

政権交代に伴う動き

日本の児童手当は、2009年と2012年の政権交代に伴い所得制限の撤廃と復活が続きました。2009年、当時の民主党は政権を獲得すると従来の児童手当に代わり「子ども手当」を創設します。かつてから民主党は児童手当の所得制限に反対する立場を示し、政権時代に「子ども手当」では所得制限を設けませんでした。

2012年、自民党は民主党から政権を取り戻し、児童手当を再開します。所得制限の撤廃には否定的な立場であり、児童手当を再開すると同時に支給対象の制限についても元通りに戻しました。一連の動きから、自民党が児童手当の所得制限を支持する姿勢は明確に示されたとも見られています。

2022年の法改正

2022年10月、児童手当法は改正され、それに伴い従来の所得制限に新しい条件が加わります。もともと、児童手当には所得制限があったものの、特例給付の所得上限は設けられていませんでした。同法の改正前は、家庭の年収が限度額以上になっても、子ども1人あたり一律5,000円の特例給付が支給されています。

特例給付の所得上限は、2022年10月の法改正に伴い新たに追加された条件です。改正法の施行により、特例給付の支給対象は、年収が所得制限以上になった家庭のうち所得上限の限度額に達しない場合に限られました。2022年の法改正により特例給付が支給されないケースも発生し、児童手当の所得制限は強化されたといわれています。

所得制限強化の要因

児童手当の所得制限が強化された主な要因は、社会保障費が著しく増えたうえ幼児教育・保育無償化が開始されたためです。社会保障費の顕著な増加は、国家予算の支出を見直す必要が生じた大きな要因に挙げられます。予算の調整が必要になるなか、児童手当に関する調査で「高所得の世帯ほど残っている」とのデータが得られ、支給を制限する流れが強まりました。

幼児教育・保育の無償化も、児童手当の制限強化につながった主な理由です。同政策は2019年10月に開始され、子育て支援は手厚くなりました。それでも、子どものいる家庭が保育施設を利用できない待機児童の問題は解決していません。

そのため、特例給付の縮小により得られた財源は、保育施設の確保など待機児童対策に充てると説明されています。児童手当の所得制限は、国家予算に余裕がないなか強化されました。その数カ月後に所得制限を支持してきた自民党内から撤廃の考えが示され、注目されています。

少子化対策への影響

少子化対策への影響

児童手当の所得制限の撤廃が少子化対策に好影響を及ぼすかについては、批判的な意見が目につきます。また、批判の理由は人によって異なり、一律ではありません。以下では、いくつか有識者の意見をご紹介します

社会学者の意見

報道番組でコメンテーターも務める社会学者は、「少子化対策に直結しにくい」との意見です。現行法で児童手当の所得制限と特例給付の所得上限を撤廃した場合、限度額以上の年収がある高所得者への支給額は増えます。一方、年収が限度額未満の家庭に向けた支給額は、これまで通りです。

児童手当の所得制限が撤廃されても、子育てしている家庭への支給体制が全体に変わるわけではありません。そのため、子どもを産みやすい・育てやすい環境にはつながりにくいと指摘されています。さらに、そもそも児童手当は少子化への懸念から考案されたものでなく、少子化対策の効果は小さいとも述べられています。

経済学者の意見

政治関係のコラムも手がける経済学者は、「国家予算を圧迫する恐れがある」との意見です。児童手当で所得制限が撤廃された場合、支給額のトータルは増大します。同時に支給対象や支給年齢も拡充されれば、児童手当にかかる国家予算は現在の3倍になる可能性があるといわれています。

児童手当の予算を増やすには、財源の確保が不可欠です。ただし、増税・社会保険料の引き上げ・国債発行などを実施した場合、経済活動に悪影響を及ぼすと懸念されています。そのため、児童手当の改正を少子化対策に結びつけるには収支のバランスを配慮することが必要と指摘されています。有識者の意見をふまえた場合、児童手当の所得制限撤廃が少子化対策に有効と考えるのは難しいのかもしれません。

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