ぬるま湯職場とは?心理的安全性に対する誤解点
更新日:2023.02.16ビジネス豆知識Googleがチームの生産性に影響を及ぼす要素として発表して以来、サイコロジカルセーフティ、いわゆる「心理的安全性」という言葉が大きな注目を集めています。「読者が選ぶビジネス書グランプリ2021」では、『心理的安全性のつくりかた』がマネジメント部門賞を受賞しました。著者である石井遼介氏は、企業が心理的安全性を誤解して「ぬるい職場」になってしまっていないかを懸念しています。今回は、心理的安全性の基礎知識をおさらいしながら、心理的安全性を職場に活用しようとする際に陥りがちな誤解点についてご説明します。
目次
心理的安全性とは?
まずは、心理的安全性の基礎知識をおさらいしてみましょう。心理的安全性の基本的な考え方、職場への活かし方についてご紹介します。
心理的安全性とは?
心理的安全性とは、1999年にハーバードビジネススクールのエイミー・C・エドモンドソン教授が提唱した心理学用語「Psychological Safety(サイコロジカルセーフティ)」を日本語に訳したものです。
心理的安全性とは、チームにおいて、誰も自分の発言を恥じたり、拒絶したりしないということに確信を持っている状態を指します。つまり、職場で上司や同僚の意見を恐れたり恥ずかしがったりせずに、チーム全員がありのままの自分の意見を言い合える状態です。このような職場は心理的安全性が高いといえます。
Google社が2012年からスタートした「プロジェクトアリストテレス」の成果報告で、チームの生産性を高める重要な要素として発表したことにより世界から注目される言葉となりました。
心理的安全性が低い職場
心理的安全性が低い職場では、チームメンバーは4つの不安から発言や行動をセーブするようになるといわれています。
- 無知
「こんなことも知らないのか」と思われる不安から、分からないことや知らないことを聞かなくなる。
- 無能
「こんなこともできないのか」と思われる不安から、失敗したことやミスを隠したり報告しなかったりするようになる。
- 邪魔
「そんな意見は議論の邪魔」と思われる不安から、発言をしなくなる。アイディアを出さなくなる。
- ネガティブ
「いつも否定ばかりする」と思われる不安から、問題を見つけても自分からは発言しなくなる
心理的安全性の低い職場では、チーム一人ひとりが自分の考えを自由に発言したり行動したりすることができなくなってしまうため、パフォーマンスや生産性が落ちると考えられます。
心理的安全性が高い職場
Googleが立ち上げたプロジェクトアリストテレスでは、優れた成果を上げるチームとそうでないチームの条件を明らかにするために調査を行いました。そのプロジェクトの結果、心理的安全性がチームの生産性を上げるために重要な要素であることを発表したのです。
心理的安全性が高い職場では、メンバー間のコミュニケーション時に余計なストレスがかからないため、メンバー同士が自然と協力し合えるようになります。メンバーそれぞれが自由にアイディアを出し合い、建設的な議論ができるので生産性の向上につながります。チームメンバーの心理的安全性を高めることは、組織の利益につながるのです。
ぬるま湯職場
職場の人間関係に不満はないものの、なんとなく仕事に物足りなさを感じてしまっている方もいるでしょう。毎日同じ仕事の繰り返しで仕事に張り合いがない、同僚に緊張感が感じられないなど、将来への不安を感じているなら、その職場は「ぬるま湯職場」かもしれません。
ぬるま湯職場とは?
ぬるま湯職場とは、上司をはじめ社員一人ひとりの仕事に対する意識が低く、成長意欲の乏しい職場環境のことです。ぬるま湯職場は、業務成績に応じて評価される成果連動型の企業よりも、大した成果を上げなくても給料が上がっていく年功序列制の企業に多く見られる傾向にあります。人によっては、このぬるま湯に浸かったような職場環境が心地よく感じ、抜け出せなくなってしまうこともあるようです。
ぬるま湯職場で働き続けるリスク
ぬるま湯職場に心地よさを感じて働き続けてしまうと、自分自身のスキルアップや成長のチャンスを逃してしまいます。入社時と変わらぬスキルのまま過ごしていると、いざ転職してキャリアアップしようという時、不利な状況になるといえるでしょう。次々に出世していく友人たちに、どんどん差をつけられてしまうかもしれません。
もちろんずっとその職場で働ける場合は良いかもしれませんが、歳を重ねた後に会社が倒産してしまったら、さらに転職が厳しくなる可能性が高くなります。自身の職場が「ぬるま湯職場だな」と感じたら、なるべく早い段階でその職場から脱する準備をしたほうが良いかもしれません。
心理的安全性の誤解点
「何でも言い合える居心地のいい職場」ということで、心理的安全性が高い職場とぬるま湯職場を混同してしまう企業が増えてしまっているようです。心理的安全性が誤解されやすい点をいくつかご紹介します。
仕事の基準が高い
心理的安全性の高い職場とぬるま湯職場の大きな違いは、仕事の基準の高さです。社員みんな仲が良く、意見の対立や衝突がないため心理的安全性が高いと誤解してしまうこともあるでしょう。しかし、心理的安全性が高くても、仕事の基準が低い場合はやりがいを感じられず、ぬるま湯職場になってしまいます。
意見が対立することもある
心理的安全性を「人間関係で全く対立しないこと」と誤解しているパターンもあるようです。心理的安全性は、互いの意見をぶつけ合い切磋琢磨して生産性を上げるのが目的です。意見をしてもそれを理由に不当な扱いをされないのが心理的安全性であり、意見の衝突が起こらないというわけではありません。
職場の雰囲気がよく社員同士が仲良しでも、生産性が上がらなければ心理的安全性が高い職場とはいえません。心理的安全性が高い職場では、メンバーそれぞれの仕事に対する意識が高いため、むしろ意見の衝突は多い可能性があります。
団結力がすべてではない
チームが団結して一つの目標を目指すことは、一見すると心理的安全性が高い状態のように思えます。しかし、その目標に対して意見したり疑問を持ったりする人が現れた時に、それを受け入れ歓迎できないようでは、心理的安全性が高いとは言い切れません。対立する意見にも排他的にならず、尊重してより生産性を高めることが心理的安全性の目的です。
メンバー全員の認識が重要
心理的安全性が担保された職場とは、メンバー全員が「我が職場は心理的安全性が高い」と感じていることが重要です。経営者やリーダーが「我が組織は心理的安全性が高い」と思っていても、社員やチームメンバーはそう思っていない可能性も大いにあります。
そのような場合は部下に直接本心を問いただしても、答えてもらえないことの方が多いでしょう。職場の心理的安全性を高めるためには、経営者やリーダー自身の意識改革が大切といえます。
まとめ
心理的安全性が担保された職場とは、心理的安全性と仕事の基準がどちらも高い状態の職場を指します。心理的安全性が高い職場でも、仕事の基準が下がってしまうとぬるま湯職場になってしまう可能性が高いため注意しましょう。
仕事の生産性を上げるには、心理的安全性の確保とメンバー一人ひとりにそれを実感してもらう必要があります。心理的安全性を組織やチームに浸透させるためには、経営者やリーダーなど、上に立つ者の意識を変えることが一番の近道です。職場の生産性についてお悩みの際は、ぜひご紹介した情報を参考にしてみてください。
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