無駄なく効率的!リーン生産方式とは

更新日:2023.02.20ビジネス豆知識

自動車の生産ライン

リーン生産方式は、仕事の無駄を極力省いて利益の増加を目指す仕組みです。もともとトヨタ自動車の生産スタイルが母体であり、アメリカの大学による研究を通じて全米に知れ渡りました。この方式は自動車の製造以外でも適用可能といわれており、職場で採用すれば作業の効率化を期待できます。今回はリーン生産方式の基本的な知識や活用方法をご紹介します。職場で採用する際の参考としてお役立てください。

リーン生産方式の基本的な知識

リーン生産方式は、トヨタ自動車の製造プロセスを母体として体系化された生産スタイルです。

リーン生産方式の特徴

リーン生産方式の大きな特徴としては、プロセスの2本柱といわれている「自働化」と「ジャスト・イン・タイム」が挙げられます。この方式の「自“働”化」は、使われている文字が示す通り「自“動”化」とは異なる仕組みです。自動化を単純な機械化と認識したうえで、それと区別するため「動」でなく「働」と表現しています。

自働化が意味する仕組みは、製造段階で不良品を検知する手法です。ここで製造プロセスの問題点を改善すれば、それ以降は同じ不良品を生まずに済み、不良率の低減につながると考えられています。「ジャスト・イン・タイム」は、余分なものを製造しないとの考え方にもとづいた仕組みです。必要な製品を、必要性のある時に、必要な量だけ製造することで無駄を省き、生産効率の向上を目指しています。

リーン生産方式の母体

リーン生産方式の母体は、トヨタ自動車で考案されたTPSと呼ばれる生産方式です。TPSは「Toyota Production System」の略であり、もともとアメリカの工場やスーパーマーケットから着想を得たといわれています。1960年代には、この方式により低価格かつ高品質な自動車が生産されました。

1980年代に入ると日本車がアメリカに大量輸出され、現地の自動車産業業界から非難を受けました。そんななか、マサチューセッツ工科大学では日本の自動車産業業界について研究が進められます。研究において、とくに着目された部分がTPSの、できるだけ無駄を省く製造プロセスです。研究結果は1990年にまとめられ、アメリカ全体に広がります。リーンの名称は、「(ぜい肉がなく引き締まって)やせた様子」を意味するleanに由来します。

リーン生産方式の不可欠な要素

リーン生産方式に不可欠と考えられている要素は、無駄の排除、改善の意識、問題の見える化、根本原因の分析です。

無駄の排除

リーン生産方式の場合、製造工程で無駄の排除に努めます。自動車に限らず、何かを生産する作業は「無駄」と「付随作業(付加価値はないが現状では省けない作業)」と「正味作業」から構成されるといわれています。リーン生産方式では、可能な限りの無駄の排除と付随作業の改善により正味作業の比率を向上することに積極的です。

改善を意識

リーン生産方式は、いつでも現状の改善を意識しています。いま、「改善(KAIZEN)」は海外の製造業でも普通に使われている用語です。この状況から、リーン生産方式のもとでは国内外を問わず多くの製造業が、現状に満足せず「よりよい製品を、より早く、より安く」生産するスタイルを目指していると考えられます。

問題の見える化

仕事でトラブルが起きた際、リーン生産方式で大切となる姿勢は問題の見える化です。トラブルの発生時、見える化が実践されると問題が隠されず職場全体に知らされます。製造作業であれば、不具合が確認されたところで機械を止めることが、見える化に相当する対処法です。機械が止まれば周りは自然に問題が起きたと分かり、全員で問題解決を目指せます。

根本原因の分析

リーン生産方式は、問題の責任追及より根本原因の分析を重視します。この方式がとくに優先する事項は、無駄の排除による製造工程の改善です。何かトラブルがあれば、誰が悪いかより根本原因の解明を優先し、どこを改善すればよいか追究します。そのためリーン生産方式では、同じ問題が繰り返されなくなると期待できます。

リーン生産方式による無駄の定義

リーン生産方式は徹底的な無駄の排除に力を注ぎますが、なかでも典型的な無駄と定義している事例は以下の8つです。

つくり過ぎの無駄

「つくり過ぎの無駄」は、文字通り需要を上回るレベルの過剰生産を意味します。有形の商品の場合、つくり過ぎは在庫の増加につながる無駄です。無形のサービスなら、イベントで大きな会場を用意しても空席が目立つケースは無駄が多いと見なされます。

手持ち無沙汰の無駄

「手持ち無沙汰の無駄」は、作業が滞る状態を意味します。仕事では、すべての業務を同時進行できるわけではありません。個々の業務を順序立てて処理する際、先の作業が終わるまで次の作業に移れない場合には手持ち無沙汰の無駄と判断されます。

運搬の無駄

「運搬の無駄」は、とくに意味や目的のない荷物の移動です。職場で無造作に荷物を積むと、出入りを妨げる可能性があります。そこで安易に積み替えると、さらなる置き場所の変更が必要になるかもしれません。いつまでも荷物の移動が続けば、いずれも運搬の無駄です。

加工の無駄

「加工の無駄」には、商品やサービスに必要ないほど手間をかけるケースが該当します。商品・サービスを生産する際、すべての製造工程に価値が伴うわけではありません。付加価値につながらない作業は、加工の無駄です。新商品のプレゼンでも、資料に必要以上の手を加えれば無駄と見られます。

在庫の無駄

「在庫の無駄」は、余剰在庫と在庫切れのいずれも意味します。リーン生産方式の場合、「必要品を、必要時に、必要量だけ」が基本的な考え方です。理想的にはあくまで過不足のない生産体制が求められるため、余剰在庫と在庫切れともに在庫の無駄と認識されます。

動作の無駄

「動作の無駄」は、何も価値を生み出さない人の動きです。この無駄は、仕事と無関係の動作にとどまりません。とくに話し合うテーマのないまま定期的に開かれる会議、あるいは発表そのものを目的とした会議資料の作成は動作の無駄に含まれます。

不良品を生産する無駄

「不良品を生産する無駄」には、販売できない製品を生み出したケースが当てはまります。生産品が有形か無形のサービスかは、とくに関係ありません。さらに不良品そのものだけでなく、その製造や手直しに費やしたコストや時間も生産の無駄として扱われます。

ニーズと一致しない無駄

ニーズと一致しない商品・サービスの生産も、リーン生産方式で無駄と定義される一例です。最近はニーズに合わない製品を生産しても、なかなか売れ行きが伸びず在庫を抱える傾向が見られます。そのため、ニーズに一致しない商品・サービスは無駄になりやすいと考えられています。

リーン生産方式を活用するには

職場でリーン生産方式を活用するには、業種を問わず無駄の排除により生産性の向上を目指すことが重要です。

無駄の排除

リーン生産方式を活用するうえで、無駄の排除は怠れません。どんな製品を生産する場合も、リーン生産方式では自動車の製造と同じく無駄のない作業が求められます。実際の製造工程は業種ごとに異なるため、どの作業に無駄があるか現場での検討は大切です。適切に無駄を省けると、製造工程の効率化につながります。

生産性の向上

リーン生産方式の活用時には、生産性の向上を目指す意識も重要です。製造工程での無駄の排除は、リーン生産方式の目的でなく「よりよい製品を、より早く、より安く」製造するための手段といえます。無駄を排除するだけで十分ではなく、常に現状の改善も欠かせません。無駄の排除とともに現状の改善も心がけて生産性の向上を目指せば、リーン生産方式は高い効果を発揮するでしょう。

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