士業のバッジの意味と込められた思い
更新日:2023.05.17スタッフブログ目次
士業の方がつけるバッジについて
日本では、末尾に「士」を付す専門職を「士業」と呼んでいて、以下の8士業の呼び名が有名です。
今回は、これらの士業が業務中に身に付けているバッジのデザインや意味をご説明し、着用に関する義務規定などについてもご紹介します。
8士業バッジの色やデザイン、意味など
8士業はそれぞれ専門分野があり、その業務内容に応じてバッジのデザインなどにも違いがみられます。
弁護士
弁護士バッジのモチーフは、「天秤」と「ひまわり」です。バッジの中央には銀色の天秤が配され、その周囲全体に金色のひまわりが花開いています。その意味は天秤が「公正」と「平等」、ひまわりは「自由」です。なお弁護士バッジは通称であり、正式には「弁護士記章」と呼ばれます。
司法書士
司法書士バッジのモチーフは、「五三桐(ごさんのきり)」です。バッジの中央に桐の花が浮き彫りされ、その数が「3・5・3」の順序で並んでいるため「五三」と称されています。五三桐は、もともと桐の葉や花を図案化した家紋「桐紋(きりもん)」の一種です。かつて皇室専用の紋章であった歴史を持ち、現在は菊花紋に準ずる国章になっています。
行政書士
行政書士バッジは、「行」と「コスモス」がモチーフです。バッジ中央に位置する「行」の周りを、コスモスの花弁10枚が囲んでいます。行はこの士業の頭文字であり、コスモスの意味は花言葉である「調和と真心」です。ちなみに行の文字は、古い漢字書体に分類され現在では印章などに多くみられる「篆書体(てんしょたい)」が用いられています。
税理士
税理士バッジは、「円」と「桜」がモチーフです。やや隆起した「円」がバッジの外縁全体を囲み、中央上部に桜が彫られています。外側の円は日本の「日」を示しており、「日本とともにどこまでも進行(隆昌)する」という意味があります。桜は5枚の花弁が開いたデザインであり、大蔵省のシンボルとしても使われた日本の国花です。
弁理士
弁理士バッジのモチーフは、「十六花弁菊」と「五三桐」です。16枚の花弁が並んだ菊の中央に司法書士と同様の桐花が表現されています。菊の意味は「正義」、桐は「国家の繁栄」です。菊の家紋「菊紋」のうち花を中心にデザインした場合には「菊花紋章」もしくは「菊花紋」と呼ばれ、16弁の他にも10弁の「十菊」などがあります。
社会保険労務士
社会保険労務士バッジのモチーフは、「SR」の文字と「十六花弁菊」です。バッジ中央に社会労務士を表したローマ字「S」と「R」が並び、その周りに菊の花弁が16枚広がっています。弁理士バッジに類似したレイアウトですが、花弁は二重になっており先端はとがっています。このデザインは、公募作品から生み出されたということです。
土地家屋調査士
土地家屋調査士バッジのモチーフは、「測」の文字と「五三桐」です。五三桐は司法書士や弁理士にも共通していますが、それらと異なりバッジ全体が円い形状でなく桐花の形を呈しています。また花の中央に位置する「測」は、この士業が専門的に扱っている業務のひとつ「測量」を意味しています。
海事代理士
海事代理士バッジのモチーフは、「菊」と「ラット(舵輪)」です。ラットを中心に置き、弁理士や社会保険労務士と同じく周りに菊の花弁が並びます。各々の意味は「菊の花」が「法律」、その花弁が「団結」、そして「ラット」は海事です。花弁は二重でなく先端も丸味を帯びているので、デザイン的には弁理士に近似しています。
バッジの多くは、それぞれの士業の特徴を示していますが、「五三桐」や「菊」は好んで用いられる傾向がみられます。
ほとんどの場合、バッジを付けて業務を行うのが義務とされる
士業では、多くの場合、仕事をする時にバッジを着用しなければいけません。例えば司法書士や行政書士に関しては、会則などにバッジ着用の義務規定があります。
まず、司法書士の場合、一般的に各自が所属する司法書士会の会則に「司法書徽章の着用義務」が記されています。例えば「東京司法書士会」であれば、会則の第112条の「司法書士会員は、業務を行う時は、会員証を携行し、かつ、司法書士徽章を着用しなければならない」という記載です。同様の記載内容は、神奈川県司法書士会会則の第103条でも確認できます。地域ごとに若干の違いはあるかもしれませんが、基本的には他の司法書士会でも同様の会則があるといわれています。
行政書士も、バッジの着用義務に関しては司法書士と大きく変わりません。こちらは、「日本行政書士会連合会行政書士徽章等規則」に目を通すと、バッジに関する義務規定が見つかります。その第3条に、「会員は、徽章を会員の身分を象徴するものとして認識し、行政書士業務を行う時は、常にこれを着用しなければならない」と定められています。そのため行政書士は、業務中常にバッジを付けていなければいけません。
一方、弁護士は少し事情が異なります。かつて、日弁連の会則のうち第29条には業務時にバッジを衣服に着用する義務があったといわれています。しかし、義務付けを批判する意見などが聞かれたため会則は改正され、今では「着用」でなく「携帯」を義務付ける内容に変わりました。日弁連会則第29条2項には、「着用」の文字が認められません。ただし、裁判所などで求めがあれば、弁護士記章の番号提示が必要です。
いずれの士業も、専門家としての独占業務があり、資格を持っていなければ扱えない仕事が存在します。依頼者の信頼を獲得するためにも、業務では有資格者の証明となる士業バッジの着用や携帯は欠かせないでしょう。
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