ワーケーションが普及しない理由と解決策について
更新日:2022.12.26ビジネス豆知識ワーケーションは、コロナ禍の影響で政府や企業に注目されました。ただし企業にとっては課題が多く、実際に導入するケースは増えていません。なぜ普及しないか、また課題を解決する方法が分かれば、これから導入する時に役立つでしょう。そこで今回は、ワーケーションが普及しない理由や課題解決のため企業で取り組める対策をご紹介します。
目次
ワーケーションとは
ワーケーションは、「ワーク:労働」と「バケーション:休暇」の2つの意味がある言葉です。この言葉通り、休暇を兼ねて働く労働スタイルを指します。以下では、ワーケーションの始まりや特徴、また国内で目を向けられた要因などをご紹介します。
ワーケーションの特徴や始まり
もともとワーケーションはネット上で登場したといわれ、働きながら休暇も楽しむところが特徴的です。この表現は、ワークとバケーションを組み合わせた造語として知られています。造語に含まれる2つの意味通り、リゾート地や観光地で休暇を兼ねつつ仕事する働き方を示した言葉です。
最初にワーケーションの言葉が現れた時期は、2000年代後半と見られています。それ以降は、ネット上でWorkation」の表現が確認されています。当時は、一部の人たちが使用するにとどまっていました。通常の勤務地に出勤しないためリモートワークに含まれますが、仕事と休暇が1セットになる点はテレワークや在宅勤務と異なります。
国内で目を向けられた要因
近年、ワーケーションが国内で目を向けられた要因はコロナ禍です。全国で働き方の多様化が推奨され、多くの企業から注目を集めました。ワーケーションの言葉自体は、コロナ禍が起きる以前から使われています。最近まで使用者は一部に限られ、広くは認知されていませんでした。この状況は、コロナ禍で通常の勤務スタイルが難しくなるなか変わります。
とくに政府が実施した「Go To キャンペーン」は、大きな影響を及ぼしたといわれる施策です。リゾート地などが勤務先になるワーケーションは、経済や観光地の復興につながると期待され行政の分野で積極的に取り上げられました。地域の活性化を見込めるため多くの自治体はワーケーションの支援制度を設け、ビジネスの場では認知度が高まっています。
ワーケーションの種類
観光庁によると、ワーケーションの種類は休暇型・地域課題解決型・合宿型・サテライトオフィス型・プレジャー型の5タイプです。それぞれ、以下のように定義されています。
- 休暇型:有給休暇を活用し、リゾート地や観光地の旅行中にテレワークする。
- 地域課題解決型:観光地などに出向き、地域課題の解決策を考えるとともに現地での観光や生活を楽しむ。
- 合宿型:通常の勤務地以外で合宿しながら、勤務時間外に観光などを楽しむ。
- サテライトオフィス型:サテライトオフィスやシェアオフィスに勤務し、勤務時間外は観光などを楽しむ。
- プレジャー型:地方へ出張する時に前後の日程で有給休暇を取り、休暇期間中は出張先を旅行する。
ビジネスの場では合宿するケースが多く見られ、地方にオフィスを移転するケースもワーケーションの一種に含まれています。
ワーケーションが普及しない理由
ワーケーションが企業に普及しない主な理由は、多くの業種でこの働き方が適さないと認識しているためです。ほかには、「仕事と休暇を切り替えにくい」などの意見もあります。以下では、言葉の認知度が高まったものの導入率が伸びない理由などをご紹介します。
ワーケーションが適さない
近年、観光庁が企業向けに実施した調査によると、「ワーケーションが適さない」との回答は6割を超えました。2020年12月~2021年1月、観光庁は「新たな旅のスタイル」に関する実態調査を実施しています。調査対象は無作為に選ばれた3,500社であり、回収サンプルは268、そのうち有効サンプルは266でした。
調査結果を見ると、ワーケーションの導入に関する課題を尋ねた質問に対し、「業種としてワーケーションが向いていない」との回答が61.7%に達しています。質問に答えた企業の約6割が、自社にワーケーションは適さないと認識している状況です。この結果をふまえた場合、多くの企業はワーケーションに不向きとの考えから導入を控えていると理解できます。
その他の主な理由
観光庁の実態調査では、同じ質問について「仕事と休暇を切り替えにくい」や「社内で不公平感が生じる」との回答も少なくありませんでした。回答割合の詳細を示すと、「ワークと休暇の区切りが難しい」は43.2%、「適用できる部署や従業員が限定的になるため、社内で不公平感が生じる」は42.1%です。いずれも、回答数の4割を超えています。
また「ワーケーションにあまりメリットを感じない」(35.7%)・「情報漏洩の可能性がある」(33.5%)・「労災適用の判断が難しい」(33.1%)は、回答数の3割以上を占めました。以上の結果からは、仕事と休暇を切り替えにくいことや公平な導入が難しいことなども企業へのワーケーションの普及を遅らせていると考えられます。
会社員が興味を示さない理由
同調査によると、会社員がワーケーションに興味を示さない主な理由は仕事する場所が決まっていることです。観光庁は、上記の実態調査で20歳~59歳の会社員に「ワーケーションに興味がない理由」を質問しています。最多の回答は、「仕事する場所が決まっているから(テレワークができない仕事だから)」(51.6%)です。
ほかには「休暇中や旅行中には仕事をしたくないから」が36.7%であり、「経費と自分で負担する費用の区別が難しいから」(17.3%)など残りの回答は2割に届きませんでした。これらの結果をふまえると、会社員の多くは仕事する場所を変えられずリゾート地で働くのが難しいためワーケーションに興味を示していないと考えられます。
企業で取り組める解決策
ワーケーションが抱える課題の解決に向け、企業で取り組める対策は労働環境や社内制度の整備です。以下には、企業がワーケーションを導入する時に実施できる具体的な方法をご紹介します。
通信環境の整備
社員がリゾート地などで働く時に会社と連絡が取りにくくなる場合、通信環境の整備が不可欠です。事前に用意したい必需品としては、以下の機材が挙げられます。
- ノートパソコン
- Wi-Fi機器
- 電源タップ
- 業務用の通信端末
これらの機材を揃えて通信環境を整えれば、社員がワーケーションした時も通常の勤務先と連絡が取りやすくなります。なお最近はコロナ禍の影響から観光業界で旅行者を増やしたい考えが強まり、ホテルや旅館はワーケーションに協力的です。多くの宿泊施設はWi-Fi設備を完備しているため、パソコンだけ携帯すれば仕事できるケースも珍しくありません。
勤怠管理の体制整備
社員がワーケーションする場合、企業は現地の勤務状況を把握する必要があり、勤怠管理の体制整備も求められます。現地での労働時間を正確に把握するには、使い勝手のよい勤怠管理システムを導入すると便利です。近年は多くのクラウドサービスがあるため、いろいろ試してみることをおすすめします。
労災制度の見直し
社員のワーケーション中には事故・災害が起きる恐れもあり、社内では労災制度の見直しも大切です。勤務中に事故・災害が起きた場合は、一般的に労災が適用されます。一方、休暇中は対象外です。ワーケーション中は通常勤務より労働時間が複雑になりやすいため、労災の適用範囲について理解を深めておくことも重要になります。企業で労働環境の整備や社内制度の見直しを進めれば、ワーケーションは導入しやすくなると考えられます。
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