「肯定表現」を用いた指示が、職場環境を改善する

更新日:2024.04.05ビジネス豆知識

「肯定表現」を用いた指示が、職場環境を改善する

肯定表現は、否定表現に比べて聞き手に好印象を与えやすい表現方法です。職場のコミュニケーションに用いた場合、多くのメリットが得られると期待できます。社内の人間関係に不安がある時も、上手に肯定表現を活用すれば、職場環境を改善するのに役立つでしょう。そこで今回は、否定表現と肯定表現の違いを解説しながら、ビジネスのコミュニケーションで肯定表現を使う有用性などについてご紹介します

否定表現と肯定表現の印象の違い

否定表現と肯定表現の印象の違い

否定表現と肯定表現では、話の内容が同じでも、言葉の印象や受け取られ方に多少の違いが生じてきます

肯定表現の特徴と受け取られ方

肯定表現の大きな特徴は、最後に「~ます」と肯定して終わる点です。注意を呼びかける場合、「早く起きれば、電車に間に合います」「必要事項をすべて記入していただくと、書類を受理できます」といった具合に伝えます。指示・命令する雰囲気は弱まり、高圧的な印象を与えにくいところが特徴的です。

また、肯定表現には、人の気持ちを前向きにさせる効果があるといわれています。そのため、上司から部下に「君は〇〇すれば、△△できる」と肯定的にアドバイスすれば、部下のモチベーションは上がりやすくなると考えられます。

否定表現の特徴と受け取られ方

3否定表現は、結論部分で「ない」「ません」と否定するところが大きな特徴です。同じ注意を促す場合も、「早く起きないと、電車に間に合いません」「必要事項が記入されていないので、書類を受理できません」と否定的に忠告します。また、命令調になるケースもあり、威圧的と受け取られがちです。

一般的に、会話で否定表現を使うと、聞き手は萎縮しやすいといわれています。人によっては不安や恐怖を感じる可能性もあるため、否定表現を使う時は、相手の印象を下げてしまわないかに注意する必要があるでしょう。

肯定表現と否定表現の比較

肯定表現と否定表現を比較した場合、伝わりやすさ・聞き手のモチベーション・効果に差異がみられます。簡単に表で示すと、次の通りです。

肯定表現 否定表現
伝わりやすさ 具体的な行動をイメージしやすく、聞き手の理解を得やすい 聞き手と距離が生まれやすく、言葉の意図が伝わりにくい
モチベーション 聞き手の自主性や意欲を尊重するため、行動を促しやすい 聞き手を非難する印象が強く、反発を招きやすい
効果 成果に結びつく行動を促すのに高い効果がある 行動の抑制にとどまり、成果につながる行動を促しにくい

否定表現は聞き手と距離が生まれる傾向にあり、反感を招きがちです。一方、肯定表現は理解を得やすいため、有益な行動を促しやすく、成果を生み出すのに効果があります。

ビジネスコミュニケーションでは肯定表現を心がけよう

ビジネスコミュニケーションでは肯定表現を心がけよう

ビジネスシーンでコミュニケーションを取る場合は、基本的に肯定表現を心がけることが大切です。ここでは、ビジネスシーンで使える具体的な肯定表現を、シチュエーション別でみてみましょう

ビジネスシーンで活かせる肯定表現の例

職場で上司・先輩が部下に指示を出す時やミスした新人にアドバイスする場合、それぞれの場面に合わせて肯定表現を用いると多くのメリットを期待できます。実際にビジネスの場で活かせる肯定表現としては、以下の例が挙げられます。

●否定表現:社員証がないと、この部屋には入室できません。
〇肯定表現:社員証があれば、この部屋に入室できます。

肯定表現は威圧的でなく聞き手の心を開きやすいため、職場のコミュニケーションを円滑化するのにも役立つでしょう

上司から部下への指示

仕事中、上司が指示を出す時に否定表現を使うと、部下のモチベーションを下げるリスクがあります。主な原因は、否定表現の印象が高圧的であり、不安・恐怖や反感を招きやすいためです。それに対し、肯定表現は聞き手を尊重する印象が強く、仕事のモチベーションを高めるのに効果的です。具体的には、以下のように表現を変える方法があります。

●否定表現:作業経過を報告しないまま、仕事を進めてはいけません。
〇肯定表現:作業経過を報告しながら、仕事を進めましょう。

上司が部下に期待している気持ちが伝われば、部下は指示を受け入れやすくなり、仕事の生産性は上がると期待できます。

上司や周りからのアドバイス

上司や周りの人々が部下や新人にアドバイスする際、表現が否定的になると、聞き手は不安や恐怖からストレスを感じがちです。アドバイスが適切でも、拒否反応を示される可能性は低くありません。一方、肯定表現は威圧感が和らぐため、好意的に受け取られる傾向があります。聞き手への期待感が伝わりやすい特徴から、部下や新人に聞き入れられる可能性は高いと考えられます。アドバイスに使える表現の1例を示すと、次の通りです。

●否定表現:この方法では、問題は解決しません。
〇肯定表現:この部分を修正すると、問題を解決できるでしょう。

部下や新人に肯定表現でアドバイスすれば、言葉の意図が伝わりやすくなるうえ助言した上司や同僚の好感度も上がり、職場の人間関係は良好になると期待できます

様々な否定表現を肯定表現に変換

ビジネスシーンで各種の否定表現を肯定表現に変えた場合、聞き手の印象は多少なりとも変わってくるでしょう。以下では、書類の提出期限や昇格に関する表現を比べてみます。

●否定表現:〇〇日を過ぎたら、書類は受け取れません。
〇肯定表現:〇〇日までなら、書類を受け取れます。

●否定表現:ミスが多いうちは、昇格は望めません。
〇肯定表現:ミスが減れば、昇格を望めます。

上記の例をみる限り、否定表現は、いずれも聞き手を高圧的な印象が強くなっています。この場合、部下や新人に書類提出や昇格を促しにくくなるかもしれません。一方、肯定表現は、聞き手に対する期待感が伝わってきます。こちらの言い方であれば、部下や新人は書類を期限内に提出しようと思い、昇格のためにミスを減らそうと考える気持ちも高まるでしょう。

肯定表現も万能ではない

肯定表現は、言葉の印象を和らげるのに効果的です。ただし、状況によっては話の意図が明確に伝わらないケースもあり、万能とはいえません。様々な表現を比べた場合、否定表現の「できません」「いけません」より肯定表現の「できます」「しましょう」のほうが、言葉の圧力は弱まります。どのような行動が望ましいか示しやすいため、適切な行動を促すのに効果があります。

とはいえ、あらゆる場面で有効に機能するわけではありません。職場で危険な薬品類を扱っている場合、薬の危険性を忠告するには、否定表現が適しています。実際、「混ぜると危険です」より「混ぜるな!危険!」のほうが、はっきり言葉の意図が伝わるでしょう。

肯定表現は仕事で指示・アドバイスする時に役立ちますが、否定表現も、有用になる場面は少なくありません。そのため、それぞれの表現は、使用する場面に応じて上手に使い分けることが大切と考えられます。どちらも適切に使えば、職場のコミュニケーションは、スムーズに進めやすくなると期待できます。

肯定表現を使いこなすための大切なポイント

肯定表現を使いこなすための大切なポイント

肯定表現を使いこなす場合、大切なポイントは、相手の立場に立って考える意識や具体的な行動を伝える姿勢です。

相手の立場に立って考える

相手の立場に立って考える意識は、聞き手に不安や恐怖を抱かせない配慮として重要なポイントです。単に表現を否定形から肯定的な言葉に変えても、相手の立場を考慮しないと、不快に思われる可能性があります。仕事が不慣れな新人に「この作業が早く終われば、もっと仕事を進められる」と話した場合、相手はプレッシャーに感じるでしょう。それより、「この作業に慣れればスピードが上がり、より多くの仕事を処理できるようになる」と伝えたほうが、聞き手は励みに感じると考えられます。このように、同じ肯定表現を使うとしても、相手の立場を配慮する意識は重要になってきます。

具体的な行動を伝える

具体的な行動を伝える姿勢は、相手に何を求めているか明示するのに効果的です。仕事の納期が近い時、「急いで作業すれば、納期に間に合う」と伝えても、聞き手を焦らせるだけかもしれません。一方、「この作業が午前中に終わると、余裕が生まれる」と話せば、目標が明確になり作業効率の向上につながると考えられます。相手は何を求められているか明確に示されると行動に移しやすいため、具体的に伝えることは大切です。

相手の努力を認める

相手の努力を認める姿勢は、職場のコミュニケーションを円滑化するうえで不可欠といえます。部下や新人がミスした時、問題点だけ「この部分を修正する必要があります」と指摘した場合、相手は非難されたと感じて必要以上に落ち込む可能性があります。それに対し、「残りは上出来です」と認めれば、励みになるでしょう。肯定表現も相手が非難されたと感じるリスクはあるため、問題点を指摘するだけでなく努力の成果を認める姿勢も必須と考えられます。

肯定表現でポジティブな職場環境を築く方法

肯定表現でポジティブな職場環境を築く方法

コミュニケーションが取りやすいポジティブな職場環境を築くには、肯定表現を習慣化させるといった方法が有用です。ここでは、ポジティブな職場環境づくりに役立つ、肯定表現の取り組みポイントをご紹介します

肯定表現を習慣化させる

肯定表現の習慣化は、職場の風通しをよくするのに効果的です。ビジネスの場では、否定表現を多用する傾向があるといわれています。実際、無意識に否定的な言葉を使っているとの声は多く聞かれます。このような状況を改善する際、社内における肯定表現の習慣化は効果が期待できるでしょう。お互いを尊重する好意的な表現が定着し、コミュニケーションが活性化すれば、良好な人間関係が構築され職場の風通しはよくなると考えられます。

周囲の肯定表現にも耳を傾ける

ポジティブな職場環境を築くうえで、周囲の肯定表現に耳を傾ける意識は大切です。ビジネスパーソンは、仕事の進め方に問題を感じている時、周りのノウハウを参考にするケースが多くみられます。肯定表現も同様であり、周囲の言葉に耳を傾ければ、自分の表現を見直すのに役立つと考えられます。適切に肯定表現を使えているか不安に感じた場合、表現の質を向上する手段として、周囲の使い方も確認する方法は有効です。

肯定表現を学び続ける

肯定表現を学び続ける意識は、ポジティブな職場環境を維持・継続する時に欠かせないでしょう。仕事の手順と同じく、肯定表現も完璧な正解はないと考えられます。多くの社会人が日頃から業務スキルを磨くのと同様、肯定的な言い方についても、レベルを高めていく意味は大きいでしょう。そのため、ポジティブな職場環境を長く保つには、肯定表現を学び続けてレベルアップする意識が不可欠になると考えられます。

企業の取り組み例

肯定表現に関する企業の具体的な取り組み例としては、太陽薬局やアビットの活動が挙げられます。

太陽薬局
太陽薬局は、福岡県に本店があり保険調剤や薬局製剤を手がけている会社です。同社では、入社2年未満の従業員を対象に、「接遇集合研修」を実施しています。以前、研修テーマとして、肯定表現が取り上げられました。

アビット
アビットは、官公庁・企業向けの研修やリサーチ事業を取り扱う東京都所在の会社です。同社は、文章表現で誤解を避けるのに肯定文が望ましいと推奨し、有用なコミュニケーション術の一つとして肯定表現を紹介しています。

社内のコミュニケーションに不安があり円滑化したいと考えている場合、積極的に肯定表現を取り入れる方法はおすすめできます

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