職業安定法が改正!企業の注意すべきポイントは?

更新日:2023.06.02ビジネス豆知識

職業安定法が改正!企業の注意すべきポイントは?

職業安定法は、労働者と企業の双方に適した職業・人材の紹介を目指す法律です。改正法は、2022年10月1日に施行されました。主な変更点は、ネット上で事業展開する求人サービスの規制強化です。求人情報の紹介業務などを手がけている場合、法改正の詳細について確認しておくことは大切でしょう。そこで今回は、職業安定法の概要や改正後の変更点、さらに事業者が確認したい注意点などをご紹介します

そもそも職業安定法とは

職業安定法?

職業安定法は、職業あるいは人材を紹介する業務などについて、法的規定を設けたルールのことです。法律に沿った事業運営を促し、労働者とビジネス界との適切なマッチングを目指しています。

職業安定法の目的

職業安定法が掲げる主な目的は、それぞれの労働者が各自の能力に合った職場で働ける機会を提供することです。労働には、誰にでも向き不向きがあります。どの分野でも、一律に優れた手腕を発揮できるわけではありません。そのため同法は、各人が自分の有する能力や特性にマッチした職業に就けるチャンスを用意することを主要目標に設定しています。

また、産業界に必要な労働力の確保を実現するとともに、労働者各人の職業が安定化することも、この法律が制定された重要な理由の一つです。各企業が求める人材も同じとは限らないため、様々なニーズに応じた人材紹介により、採用後のミスマッチが防げると考えられています。職業安定法は、上記の目標を成し遂げながら、最終的に経済・社会の発展に貢献することを目指しています。

「人材紹介」と「労働者派遣」との違い

職業安定法が関与する人材紹介と労働者派遣は混同されがちですが、法規制の対象となる事業内容や雇用関係の差異が大きな違いです。人材紹介は文字通り人材を紹介することが事業内容であり、職業安定法により規制されます。労働者と紹介者との間に雇用関係は発生せず、職業を紹介された人材は勤務先になる企業と雇用契約を結びます。

一方、労働者派遣は人材の紹介でなく、派遣することが基本的な事業内容です。そのため、「労働者派遣法」の規制を受けます。また、労働者は派遣事業を実施する業者に雇われるのが原則であり、派遣先の企業との間に雇用関係は成立しません。

これらの違いから、職業安定法の場合には労働者派遣と異なり、紹介者が労働者を必ず就職させる責任は負わないとの声も聞かれます。

職業安定法改正の目的

2022年10月から職業安定法が改正された主な目的は、インターネット媒体を中心とした求人メディア全体に対する規制の強化です。かつて多くの求人メディアは、人材募集する企業や求職者から依頼を受けると、新聞広告や各種の情報誌に求人情報を掲載していました。それに対し近年は、直接の依頼がなくてもネット上で集めた情報を紹介する運営スタイルなどが見られます。

新スタイルの求人メディアは、従来の法律では規制対象に含まれていません。しかし実際のところ、新方式の求人情報が企業や求職者に及ぼす影響力は強まりました。さらに昨今は、従来型を含め、業務品質の低下なども指摘され始めています。

そんな現状から、職業安定法は各種の求人メディアへの規制強化が必要と認識し、今回の法改正を進める結果となりました。

法改正に伴う変更点

法改正に伴う変更点

2022年10月施行の法改正に伴う主な変更点は、規制対象の範囲拡大です。また、「特定募集情報等提供事業者」を届出する制度を創設し、求人情報の的確な表示および個人情報を集める目的の明示を義務づけています。

規制対象の範囲拡大

今回の法改正により、職業安定法の「募集情報等提供」に該当する求人サービスの規制範囲は広がりました。旧法を見ると、募集情報等提供は「求人情報を求職者に提供すること」と「企業などに求職者に関する情報を提供すること」を意味します。新法では、以下の2つも加えられました。

      クローリングして求人情報・求職者に関する情報を提供すること
      他の求人系メディアに掲載されている求人の情報を転載すること

上記の改正により、募集情報等提供の定義そのものが変わります。今後は従来方式にとどまらず、新たなスタイルで事業を展開する各種求人サービスまで同法の規制対象になりました。変更後の定義にもとづく募集情報等提供事業者は、これから以下に示す新たな義務などが課されます。また、違反すると行政処分を受ける可能性も皆無でなく、十分に注意する必要があります。

届出制の創設

改正法が実施する2つ目の変更点は、「特定募集情報等提供事業者」の届出を求めるシステムの創設です。特定募集情報等提供事業者には、求職者(労働者になろうと志す人材)に関する情報収集する個人や組織だけが該当します。この点は、募集情報等提供に求人情報を掲載するサービスが含まれるのと明確に異なります。

法改正の実施以降、特定の事業者に該当する場合は厚生労働大臣に対する届出が不可欠です。同時に当該業者は、労働者からの報酬受領の禁止、事業概況報告書の提出義務、秘密保持義務などの規制を受けます。なお、すでに特定の事業を始めている時は、経過措置として2022年12月31日までに届出を済ませれば問題ありません。

新たな義務の追加

募集情報等提供事業者などは、新法の施行とともに求人情報の的確な表示を義務づけられました。旧法の場合、厚生労働省の指針にもとづき、的確な表示と考えられる基準のみ記されています。一方改正法では、的確に表示することが法的義務に格上げとなり、違反者は業務改善などを命じられます。

改正法の義務規定によると、募集情報等提供事業者をはじめ職業紹介事業者や求人募集する企業は、虚偽また誤解を招く情報の表示は禁止です。求人情報から企業情報や業務実績まで、常に正確性と最新の内容の保持・提供が求められています。また旧法と変わらず、各事業者は求職者の個人情報を収集する時に当事者へ利用目的を明示する義務も負います。

事業者が確認したい注意点

事業者が確認したい注意点

これから人材・職業紹介の業務を手がける事業者が注意すべき点は、改正法の変更部分に自分たちが該当するかどうかの確認です。とくに新規の求人メディアは、規制対象に含まれるかチェックを怠れません。

変更部分に該当するかの確認

人材・職業紹介に関わる事業者が確認しておきたい主なポイントは、上記した募集情報等提供の定義変更、新設された届出制、新たに加わった義務規定についてです。

なかでもネット上に情報掲載している求人メディアは、業務内容が変更後の募集情報等提供に当てはまるかどうかを調べる必要があるでしょう。求人情報をネット掲載するだけでも該当するため、早めに確かめることをおすすめします。

求人情報を集めるサービスのみ扱っているなら、所定の届出を期日内に済ませなければなりません。そのうえ、実際に情報提供する時は表示内容に問題がないかのチェックまで必須です。いずれのケースも、違反すると罰則規定が設けられているため、早めに確認しておきましょう。

募集情報等提供のチェックポイント

募集情報等提供の確認時に欠かせないと考えられるチェックポイントは、具体的な中身についてです。改正法が定める募集情報等提供は、以下の一号~四号に分類されます。

  • 一号:企業や紹介業者から依頼を受けた求人情報の提供(求人情報誌や求人サイト)
  • 二号:求職者のサポートを目的とした求職者や関係業者への情報提供(クローリング型の求人サイトなど)
  • 三号:求職者からの依頼による企業や関係業者向けの情報提供(人材データベースや求職者情報を登録したり投稿したりするSNS)
  • 四号:企業の人材確保を目的とした各種の関係機関への情報提供(クローリング型の人材データベースなど)

これらの事業に関わっている場合、法的に募集情報等提供を展開していると見なされる可能性があります。その際は、特定のケースに該当する場合とともに提供内容が適切かどうか見直しておくとよいでしょう。

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