社員の個人事業主化のメリットとデメリットとは?
更新日:2025.03.26コールセンター , ビジネス豆知識社員の個人事業主化とは、会社に勤務する社員が個人事業主になる方法です。勤務先で導入された場合、所定の手続きを済ませると、社員は個人事業主として仕事を続けることになります。この新しい働き方は、さまざまなメリットが期待され、ビジネスの場で話題となりました。ただし、デメリットも皆無ではありません。どのような問題があるか把握しておけば導入時の参考になるでしょう。そこで今回は、個人事業主化の概要や主なメリット・デメリットについて解説し、コールセンター業務を個人事業主化した場合の事例もご紹介します。
目次
社員の個人事業主化とは
社員が個人事業主になるとは、それまで社員として雇用されていた従業員が、個人事業主として会社と業務委託契約を結ぶことです。
勤務スタイル
職場の社員が個人事業主化した時は、フリーランスで働くスタイルが基本的です。従業員は、フリーランスとして活動するため形式的に退職し、まず会社との雇用関係を解消します。その後、新たに個人事業主扱いで業務委託の契約を交わし、かつての勤務先で仕事を継続します。厳密な意味で元社員は個人事業主になりますが、通常、実際の勤務状況は大きく変化しません。契約上は会社が個人事業主を雇う形に変わりますが、これまで通りに働き続ける特徴が見られ、社内フリーランスと呼ばれる場合もあります。
会社との関係性
会社と個人事業主化した元社員との関係性は、原則的に対等といえるでしょう。個人が会社と雇用契約を交わした場合、入社後は従業員として勤務することになります。従業員は勤務先で上司や先輩の指示を聞き、各自の担当業務を進めていく必要があります。
一方、個人事業主となった元社員は、勤務先となる会社と業務委託の契約を結ぶケースが一般的です。元社員はフリーランスの立場で仕事を引き受けるため、会社との関係性は対等になると認識されています。
大手企業の狙い
大手企業が個人事業主化を導入する主な狙いは、優れた従業員を支援することです。従来通りの雇用契約の場合、それぞれの従業員を希望する部署に配属できるとは限りません。昨今、職場や仕事のミスマッチは従業員の早期退職を招く主要原因となり、ビジネスの場で問題視されています。
それに対し、業務委託は、従来型の契約より自分に合った仕事を選びやすくなる契約方法です。大手企業は優れた人材が十分に力を発揮できると期待し、個人事業主化の仕組みを積極的に導入し始めています。
個人事業主化を導入するメリット
個人事業主化の導入がもたらす主なメリットは、仕事や働き方の自由度を高められるところです。
仕事の自由度が増加
仕事の自由度が増加する点は、個人事業主化で得られる大きなメリットです。個人事業主が業務委託を受ける場合、会社とは対等な契約関係になります。従業員と異なり職場の指示を確かめる必要はなく、契約条件や委託内容に事業主の考えを反映しながら仕事を進められます。社員が個人事業主化した時も、会社との対等な関係性は変わらず、自分の意向に沿った契約交渉が可能です。事業主が望まない業務は無理に引き受ける必要がなくなるため、仕事を自由に選べる範囲が広がります。
理想的な働き方を実現可
個人事業主化の導入は、理想的な働き方の実現にもつながる方法です。社員が個人事業主になった際は、会社に在籍している時と違い、社内規定を守る義務が発生しません。勤務場所や業務時間は職場の就業規則によらず、会社と交渉したうえで決められます。そのため、自宅やコワーキングスペースなど、好きな場所で働くこともできるようになります。
在宅勤務できるようになった場合、混雑した電車やバスに乗って通勤する必要はありません。また、時間的な束縛が減れば仕事と私生活を両立しやすくなり、理想的な働き方を実現できる可能性は高まると期待できます。
会社にとってのメリット
会社にとってのメリットは、仕事の創造性や業務品質の向上が見込まれる点です。社員が個人事業主となり会社を離れた後、仕事の進め方は、職場の指示や業務方法に縛られなくなります。多様な価値観に触れて視野が広がれば創造力が刺激され、独自のアイデアが生まれやすくなるでしょう。
また、フリーランスの立場であれば、従業員の時よりも社外のノウハウを幅広く学べる可能性があります。独自のアイデアや新たなノウハウが仕事に活かされた場合、業務品質は向上すると期待できます。これらのメリットをふまえ、企業によっては、新たな分野への挑戦を促すため社員の個人事業主化を導入するケースも見られます。
個人事業主化に伴うデメリット
社員の個人事業主化で懸念されるデメリットは、労働基準法や福利厚生の適用対象外になるところです。
労働基準法の適用外
労働基準法が適用されない点は、元社員の個人事業主にとって大きな問題です。現行の労働基準法は、原則として会社と雇用契約を結んでいる労働者が適用対象になります。個人事業主は会社の従業員とは見なされないため、同法で定める各種制度は適用されません。
個人事業主が適用外となる具体的な制度としては、残業手当や労災保険が挙げられます。いずれも労働者の保護が目的であり、法的な保護対象から外れると、個人事業主になった元社員は多大な不利益を受ける恐れがあります。
会社の福利厚生も対象外
社員が個人事業主化した場合、会社で設ける福利厚生も適用対象外です。近年、多くの会社は、社内の従業員を守る必要から各種の福利厚生制度を定めています。この仕組みも、労働基準法の諸制度と同様、基本的な適用対象は雇用契約を結んだ労働者に限られます。元社員は契約関係で見ると退職者であり、同じ勤務先で仕事を再開しても職場復帰とは認識されません。退職者は社内規定にもとづいた有給休暇や住宅手当などを受けられないため、個人事業主化した社員にとっては見過ごせないデメリットになります。
人材流出のリスクも
個人事業主化による人材流出のリスクは、会社のダメージにつながる問題点です。会社の従業員は、社内事業を支える大切な存在です。昨今は、国内で少子化の流れが止まらず、人手の確保が難しくなっています。会社にとって従業員の必要性は増しているといえるでしょう。
社員の個人事業主化で契約条件が悪化すると、大切な人材は、待遇のよい職場に移る可能性があります。元社員が以前の勤務先に戻ってくる保証はありません。人材流出のリスクは、個人事業主化に伴い会社が直面する懸念点となっています。個人事業主化は上記のようなデメリットもあるため、会社は、元社員が好待遇で働き続けられるように配慮することが望ましいと考えられます。
コールセンター業務の個人事業主化について
コールセンター業務も、個人事業主として働ける職種の一つです。一般的に同業務の個人事業主化は難しいといわれていますが、人によってはオペレーター勤務で力を発揮できる可能性があります。
コールセンター業務の個人事業主化の現状
コールセンター業務の個人事業主化は、基本的に難しいとの見方が有力です。現在、多くのコールセンターでは、オペレーターの業務内容や着信時の対応方法がマニュアル化されています。オペレーターがフリーの立場でも、マニュアルに沿った業務の遂行が求められるため、個人事業主化は容易でないと見られています。
また、セキュリティ面の問題も、コールセンター業務の個人事業主化が困難とされる要因の一例です。オペレーターが自宅勤務する場合、適切なセキュリティ体制を構築できないケースが目立ち、情報漏洩を防ぎにくいと指摘されています。これらの問題点をふまえ、現状、コールセンター業務の個人事業主化は厳しいとの声が多く聞かれます。
実際の事例
コールセンター業務を個人事業主化している実例としては、在宅コールセンターや専門性の高いコールセンターが挙げられるでしょう。在宅コールセンターは、オペレーターが自宅で電話対応や関連業務を進めていく業務スタイルです。従業員として雇用契約する場合のほか、個人事業主の立場で仕事を受けるパターンも少なからず見られます。専門性の高いコールセンターも、オペレーター業務を個人事業主化しているケースの代表例です。電話対応の高度な知識やスキルを有する人たちは、優れた専門性を活かし、個人事業主として活動する場合があります。
また、フリーランスのコールセンターオペレーターも、同業務の個人事業主化に該当する事例の一つです。通常、フリーランスは特定のコールセンターに所属しないため、個人事業者としてオペレーター業務の依頼を受けます。このように、コールセンターは、さまざまな方式でオペレーター業務を個人事業主化する事例が見られます。
個人事業主化を検討する際の注意点
コールセンター業務の個人事業主化を検討する際は、電話対応の品質や情報管理の安全性に注意が必要です。在宅勤務の場合、プライベート空間が作業スペースになるため、仕事と私生活を区別しにくいといわれています。オペレーターが緊張感を保てないと、電話の応対品質は下がる可能性があるため、気をつける必要があります。
また、自宅で業務を進める時は、各種情報の安全管理が難しくなるケースも珍しくありません。コールセンターは幅広い顧客情報を取り扱う業種であり、セキュリティ管理には十分な注意が求められます。コールセンター業務の個人事業主化は上記のような難点があるため、個人事業主として働くかどうかは、慎重に検討する必要があると考えられます。
キャリア形成
今後のキャリア形成を考慮した場合、コールセンター業務の個人事業主化は、さまざまなメリットを期待できる選択肢です。コールセンターの電話対応では、ビジネスの基本マナーに沿った受答えが大切になります。多くの応対業務を経験するなか、正しい敬語の使い方や丁寧な言葉遣いが身につけば、ビジネスの場で社会人としての評価は高まるでしょう。
また、幅広い問い合わせに対応すると、コミュニケーション能力を向上させることも可能です。難解な質問にも適切に回答するスキルが上達すれば、会議やプレゼンテーションでも役立つと考えられます。ビジネスマナーの知識や優れたコミュニケーション能力は、ビジネスの場で活かせる可能性があり、将来的なキャリアアップに結びつくと見込まれます。
以上のように、コールセンター業務の個人事業主化は、難点だけでなく上記のようなメリットもある就労方法です。人によって向いている働き方は異なるため、メリット・デメリットを比較してよく検討することが大切です。自分らしい働き方を見つけ、仕事もプライベートも充実させましょう。
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