年末調整に向けて基本事項をおさらいしよう
更新日:2024.01.25ビジネス豆知識多くの職場で欠かせない業務のひとつが年末調整です。11月頃から年末にかけて、さまざまな書類を準備する必要があります。手続きも複雑なため、どんな仕組みか分かりにくいかもしれません。この機会に基本事項だけでも把握しておくと、一通りの手続きを進めるのに役立つでしょう。そこで今回は、年末調整の概要や、必要書類、大まかな手続きの流れをご紹介します。
目次
年末調整の概要
年末調整は、1年間にわたって給与から源泉徴収した税金について、正確な所得税額を確定する仕組みです。
そもそも年末調整とは
そもそも年末調整は、あらかじめ給与から源泉徴収した税金が正しい納税額かどうかを計算する手続きを指します。会社に勤める給与所得者は、月々の給与から所得税を差し引かれるパターンが一般的です。毎月の給与から差し引かれた所得税が、源泉徴収税と呼ばれます。
源泉徴収される金額は、あくまで概算です。給与から徴収される時、扶養家族の有無や保険料の支払いをはじめ、各々の従業員の生活実態は反映されません。源泉徴収の合計と従業員の実情に即した納税額には、たいてい差異が生じます。正しい所得税額を計算したうえで差額を精算することが年末調整の主な目的です。
年末調整の対象者
給与所得のある従業員は、以下のケースに該当した場合に年末調整の対象者と見なされます。
- 1年にわたり継続勤務
- 途中入社で年末まで勤務
- 死亡退職
- 再就職が難しい心身障害で退職
- 12月分の給与を受給後に退職
また、パートタイマー勤務で退職時に年内の給与総額が103万円以下の場合や、海外転勤で年の途中から非居住者になった時は年末調整の対象になります。
ただし、上記の条件を満たしても以下のケースなどに該当すると年末調整は受けられません。
- 本業で給与による年内の収入額が2,000万円を超える
- 災害時に被災したため年内の給与について源泉所得税及び復興特別所得税の徴収猶予や還付を受けた
- 複数の勤務先から給与所得があり別の職場に扶養控除等申告書を提出済み
- 11月までに年内の給与が支払われた中途退職者
- 1年以上にわたり国内の住所がない非居住者
年末調整の手続きを始める直前に慌てないため、職場では誰が対象者になるか早めに確認しておくとよいでしょう。
確定申告との違い
年末調整と確定申告は、誰が所得を申告および納税するかに明確な違いがあります。いずれの手続きも、年内の所得額を計算したうえで税金を納めるところは変わりません。それぞれ、納税者本人が申告および納税するか勤務先が個人に代わり処理するかで差異が生じます。
年末調整は、職場が一連の手続きを個々の従業員に代わり引き受ける方式です。それに対し確定申告では、納税者が所得額の計算から申告書類の作成や納税まで、自分で一通り進めます。なお、職場勤務の給与所得者でも年末調整の対象外になると、個人での確定申告が必要です。
年末調整で必要な書類
年末調整の手続きを進める際に必要となる書類は、大きく分けると源泉徴収票、従業員からの各種申告書、税務署への提出書類の3つです。
源泉徴収票
源泉徴収票は、職場の従業員に配布するとともに税務署に提出する必要があります。従業員に配布する書類には、年内に支払った給与額および源泉徴収額の記載が不可欠です。税務署へ提出する書類については細かい提出条件が定められているので、事前に調べておくことをおすすめします。
途中入社した従業員は、同じ年内に以前の職場から給与を受け取っているかもしれません。その場合、いまの職場で年末調整するなら前職の源泉徴収票を回収する必要が生じます。すぐに書類が発行されるとは限らないため、該当する従業員には早めの準備を促しましょう。
従業員からの各種申告書
職場で年末調整の対象者となる従業員に作成してもらう申告書は、主に以下の3つです。
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 給与所得者の保険料控除申告書
- 給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書
「扶養控除等(異動)申告書」は、給与所得者が扶養家族を申告する書類です。「保険料控除申告書」では、生命保険料や地震保険料に関する保険料控除を申告します。3つ目の申告書は、年末調整で基礎控除、配偶者(特別)控除、所得調整控除について申告する書類です。
それぞれの書類の必要項目を給与所得者に記入してもらい職場で回収します。さらに従業員が住宅ローン控除の適用から2年目以降になる場合、「住宅借入金等特別控除申告書」なども必要です。
税務署への提出書類
年末調整の計算を終えた後、税務署に提出する書類としては源泉徴収票以外に以下の3つが挙げられます。
- 給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表
- 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
- 給与支払報告書
1つ目は、それぞれの源泉徴収票の内容をまとめた書類です。2つ目の書類は、業務を外部委託したケースで支払った報酬が一定額を超えた場合に用意します。3つ目は、従業員の住民税を計算するのに必要です。
従業員に作成してもらった申告書などから年末調整の計算を済ませ本来の納税額などを上記の書類に記入したら、税務署や自治体の受付窓口に提出します。
大まかな手続きの流れ
年末調整の大まかな手続きの流れは、源泉徴収票の回収、従業員からの申告書類の回収、年末調整の金額計算、税務署などへの書類提出の順です。
源泉徴収票の回収
職場で年末調整する際、最初に着手する手続きは従業員からの源泉徴収票の回収です。この手続きは、途中入社した転勤者が同じ年内に前職から給与を支払われている場合に必要となります。その際、どれほど受け取った給与が源泉徴収されているかは関係ありません。
たいてい書類の発行には一定の時間を要するので、回収作業が急がれます。ゆっくり作業を進めていると、その後の手続きが遅れる可能性があります。スケジュールの都合から、職場では11月上旬までに回収を済ませるケースが大半です。
従業員からの申告書類の回収
必要な源泉徴収票を回収できたら、次は従業員から各種の申告書類を回収します。ここで回収する申告書類は、基本的に上記の3つです。あらかじめ年末調整の対象者に必要項目を記入してもらい、手続きに差し支えない日程で回収していきます。
多くの職場で申告書を回収するのは、11月下旬から12月にかけての時期です。従業員は通常業務を進めながらの書類作成となるため、職場は余裕のあるタイミングで申告書を渡しておくケースがよく見られます。また従業員によっては記入方法などが分からない場合もあり、ほとんどの職場では記入箇所を事前に示しておくのが通例になっています。
年末調整の金額計算
従業員に作成してもらった申告書類を一通り回収したところで、年末調整の金額計算です。それぞれの従業員から1年にわたり源泉徴収した税金や申告書類に記入された各種の控除額をふまえ、年内の源泉徴収額のトータルと正確な所得税の納税額との差額を算出します。
年末調整の計算で源泉徴収額が本来の納税額を上回っていた場合、余計に徴収された税金は還付です。逆の場合、本来の納税額に足りていない不足金額は改めて徴収する必要があります。どれだけ差額があるか計算する時期は、たいてい12月です。年末調整の計算や過不足分の精算が終わると、税務署や自治体に提出する書類の準備に進みます。
原則として提出期限は1月末であり、すべて問題なく済むと年末調整の手続きは完了です。従業員からの書類回収には時間を要することもあるので、いずれの手続きも早めに始めることをおすすめします。
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