司法書士の独立開業を成功させるには?事前準備や顧客開拓の方法について解説
更新日:2023.03.15ビジネス豆知識司法書士は、弁護士や行政書士と同じく、法務に係わる業務を行える資格の1つです。専門的な法律の知識に基づき、登記又は供託手続の代理や、法務局に提出する書類の作成などを行えます。難関資格の1つでもあり、独立開業をすることも可能です。「独立開業を目指してはいるが、成功するかどうか不安だ」という方もいるでしょう。この記事では、司法書士として開業する際、成功するためのポイントを詳しく解説します。司法書士の資格取得を目指している人は、ぜひ読んで参考にしてみてください。
目次
司法書士の独立開業した場合の年収はどれくらい?
司法書士が独立開業した場合、年収はさまざまです。「平成26(2014)年度司法書士実態調査集計結果」によると、2010年の司法書士の年収は、男性の16.6%、女性の10.8%が1,000万円以上、男性の25.8%、女性の40.5%が200万円未満というばらつきのある結果になりました。(※)
司法書士の主な業務は、不動産登記・会社登記・成年後見・相続・遺言・債務整理などですが、これらの仕事がコンスタントに入ってくるとは限りません。安定した定期収入を得るためには、不動産会社や銀行から、不動産登記の紹介先として指定されるなど、お得意様を作ることが重要です。
※出典:司法書士白書 2014年版|日本司法書士会連合会
https://www.shiho-shoshi.or.jp/association/publish/hakusho/%E5%8F%B8%E6%B3%95%E6%9B%B8%E5%A3%AB%E7%99%BD%E6%9B%B8-2014%E5%B9%B4%E7%89%88/
司法書士の開業前の9個の事前準備
司法書士として独立開業したら、司法書士としての業務だけでなく営業や経理など事務所の運営に係わる全てのことの責任者とならなければなりません。ここでは、事務所をスムーズに運営していくため、開業する前にやっておきたい事前準備を9個紹介します。
1:事業計画・開業資金計画
事業計画とは、どのような事務所を開設するかや、利益が出るまでにどのくらいの期間と費用がかかるのかなど、新規事業を推進していくために必要な事柄を文書化したものをいいます。司法書士の仕事は多岐にわたります。例えば、不動産登記・会社登記を業務の中心にしたい場合は、不動産業者とコンタクトしやすい場所に事務所を構え、顧客を紹介してもらうなどを計画します。
開業資金とは、事務所を開業する資金や必要経費、利益が出るまでの生活費などの総称です。自己資金で賄えることができればいいのですが、足りなければ融資を利用します。その利息も開業資金に組み込んで返済計画を建てなければなりません。これらの計画をしっかり立てておけば、先行きも分かりやすいでしょう。
2:事務所
事務所にはさまざまな形態があります。人数が少ない場合は自宅の一室を事務所にしてもいいでしょう。大きな事務所は見栄えもしてクライアントからの信頼も高まりますが、維持費が大変です。軌道に乗って利益が出るまでは自宅の一室を事務所にし、家賃が払えそうならばテナントを借りる、というようにステップアップしていってもいいでしょう。自宅を事務所にする場合は、私生活との区別をしっかりと付けることが重要です。
3:事務所内のデスクや家具
事務所にはデスクや家具が必要です。最初は必要なものだけを買い、少しずつ買い足していく方法もあります。事務所に配置図を書いてそれに合ったものを買ったりレンタルしたりしましょう。
4:パソコン・プリンター・電話
パソコンやプリンター、電話は事務所を運営していくために必須です。1人暮らしをしているなら、自宅の電話をそのまま事務所の電話に転用してもいいですが、家族と生活している場合は分けた方がいいでしょう。なぜなら仕事の電話とプライベートの電話を同じ回線にしてしまうと、場合によっては顧客からの電話に対して受電対応が失礼なものになってしまう可能性もあり得るからです。
5:名刺や文房具などの消耗品
司法書士事務所に限らず、事務用品は多く消耗されます。特に書類の作成が多い事業では、印刷用紙、プリンターのインク、印鑑などは常に備品の用意があるほうが業務が円滑に進められます。アスクルなど法人用の通販サイトなどを利用し、お得にまとめて購入してもいいでしょう。
6:Webサイト等のWebの広告費
今は、ほとんどの司法書士事務所がWebサイトを作成しています。Webサイトの作成は事務所の認知度を向上させるための重要な手段でもあるので、必ず作成しましょう。個人で作成も可能ですが、できるだけ見栄えがしてスマホでも見やすいページにするにはプロに依頼するのがおすすめです。
7:司法書士会への登録申請
司法書士法第8条の規定では、「司法書士となる資格を有する者が、司法書士となるには、日本司法書士会連合会に備える司法書士名簿に登録を受けなければならない」と定めています。そのため司法書士は司法書士会に登録することが必要です。また、司法書士名簿に登録を受ける際には、日本司法書士会連合会会則第50条の規定により、手数料として25,000円が必要です。
8:銀行口座開設とクレジットカード加入
事務所を開く場合、事務所名義の銀行口座を開設しクレジットカードに加入しておくと、税務処理が簡単になります。個人だけの事務所であっても、個人的な収支と仕事の収支は分けなければなりません。開業前に手続きしておきましょう。
9:保険や年金の切り替え
司法書士事務所に勤めていて独立する場合は、厚生年金を国民年金に、社会保険を国民健康保険に切り替える必要があります。家族がおり扶養している場合は、家族の保険も切り替えなければなりません。持病があって通院している場合は早めに、忘れずにやっておきましょう。
独立開業までに身に着けておくべきスキル
独立開業するということは、全ての仕事を自分で行なう覚悟が必要です。税務や経理など一部は外注できるものもありますが、コミュニケーションスキルや問題を解決するスキルは磨いておくに越したことはありません。1つの仕事の成功が次の仕事を連れてきますが、1つ仕事を失敗すると今まで築いてきた信用を失うこともあります。特に、お客様やパートナー企業とやり取りをするためのコミュニケーションスキルは必須です。会社勤めの方は、会社員のうちに磨いておきましょう。
独立開業後の顧客の開拓方法
独立開業したら、新規の顧客獲得が必須です。勤務時代にある程度コネを作っておくことも重要ですが、独立開業した後も新規顧客開拓のための努力を怠らないことです。司法書士の業務に関係がある仕事には、不動産業者や金融会社がまず挙げられます。
このほか、会計・税理士事務所や弁護士・行政書士事務所も一定の需要があります。相続・遺産承継業務や、遺言・成年後見・家族信託に関する業務の需要は、葬儀社や保険会社、福祉施設などもあるでしょう。機会を見つけては、今挙げた業務に就いている人達と交流を持っておきましょう。
独立開業に失敗しないために注意すべきポイント3選
独立開業はどうしても失敗するリスクもあります。ここでは、そのリスクを軽減するために注意すべきポイントを3つ紹介します。
1:営業スキル・人脈の確保
独立開業後は、顧客獲得のために自分で営業活動を行ったり、人づてに顧客を紹介してもらうなど、仕事を獲得していかなければなりません。開業前にある程度の人脈を構築しておく、営業スキルを身に着けておく、営業の糸口や支援を確立しておくなど、開業後すぐに仕事を受けられる準備をしておくことが大切でしょう。
2:競合事務所と差別化できる強みを作る
「この仕事は自分の事務所でしかできない」「この仕事を任せてもらえたら、他の業者よりも優れた結果を出せる」といった強みを作っておくことが重要です。「なんでもやります」ではかえってできることが曖昧になってしまいます。「相続や遺産継承業務ならお任せください」など、自分の強みを作りPRしましょう。具体的な事例をWebサイトに載せるのもおすすめです。
3:業務過多にならないように調整する
独立開業をした直後は、事務員なども少なくいろいろなことを自分で行わなければいけません。仕事を獲得することも大切ですが、業務過多になりすぎると質が落ち、信用下落につながります。1つひとつの仕事が丁寧にできるよう、調整をしましょう。
司法書士で開業して軌道にのるために
司法書士は独立開業しやすい資格というイメージがありますが、漠然と開業してもすぐに行き詰まってしまいます。自分がどのような事務所を開設し、どのようなコンセプトで事務所を運営していくかまずは計画を建て、当座は生活できるように資金を確保し、開業準備を進めていきましょう。同業者の話を聞く、人脈を築くなどを勤務時代にしておけば、開業がスムーズにいきやすくなります。
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