給与の不払いの相談は弁護士?社会保険労務士?

更新日:2023.03.15スタッフブログ

給与の不払いでお金がピンチ

近年、給与不払いによる労働トラブルが問題視されています。一定の労働に対価を支払うのは、会社の義務です。それにも関わらず、残業代を支払わなかったり、踏み倒したりする経営者は少なくありません。これらの請求は交渉が難しく、法律家のサポートが必要です。今回は、一般企業における給与不払いの解決法に加え、労働トラブルの最適な相談先を解説します

弁護士・司法書士・社会保険労務士の権限の違い

給与不払いなどの労働を個人で解決するのは困難です。弁護士や司法書士、社会保険労務士といった法律家に相談するのがベストでしょう。一方でこれらの職業は、対応できる労働トラブルの幅が異なります。「行使できる権限・業務範囲が違う」と言い換えると、分かりやすいかもしれません。それぞれの簡単な特徴は、以下の通りです。

□弁護士:行使できる権限と業務範囲が広い。あらゆる労働トラブルに対応できる
□司法書士:140万円までの請求に関わる簡易裁判まで対応できる
□社会保険労務士:労働関係の法律に精通しているが、裁判の代理人にはなれない

弁護士は裁判の代理人になれたり、会社側との示談交渉を請け負ったりと、幅広く対応できるのが特徴です。請求申請から交渉まで、すべてを一任できます。司法書士は、140万円までの請求に関わる簡易裁判のみ、代理人として出廷可能です。また社会保険労務士には、弁護士・司法書士の様な権利こそないものの、トラブルを「裁判以外で」解決したい場合に向いています。

未払い賃金請求の流れ

法律家に相談する前に、未払い賃金請求の流れを理解しましょう。まずは勤怠記録や給与明細など、未払い賃金の証拠資料を用意します。有力な証拠さえあれば、未払い賃金の請求は容易です。一方、会社側が適切な対応をしなかったり、勤怠記録が分からない状況だったりすると、個人で解決するのが難しくなります。どの様に未払い賃金の存在を証明するか、法律家の手腕が試されるでしょう。

資料が集まったら、内容証明郵便で会社側に送付します。会社が適切に対応した場合、交渉に進みます。個人で対応しても問題ありませんが、法律家に代行してもらう方が安心かもしれません。なお、和解交渉は裁判外での解決となるため、満額を取り戻させない可能性があります。想定される裁判期間や弁護士費用との兼ね合いも含め、和解するか法的手続きに移るか決めましょう。

弁護士に相談するメリットとデメリット

労働トラブルにおいては、弁護士に相談するのがおすすめです。弁護士が介入できる分野は広く、未払い賃金の請求から不当解雇の撤回なども依頼できます。単に請求するだけでなく、あらゆる労働トラブルの「是正」を訴える場合、弁護士の力を借りましょう。というのも、未払い賃金請求には残業代の計算・和解交渉・書類作成・法的手続きなどが必要です。

弁護士には、これらすべてを対応する権限があります。後述する司法書士および社会保険労務士は原則、書類作成までの対応に留まります。デメリットは特にありませんが、強いていうならば「労働関係の法律に強い弁護士」を選ぶことが大切です。一般に弁護士は、自分が得意とする専門分野を持っています。例えば、労働トラブルをはじめ、相続専門や離婚専門、登記専門などがあります。どれだけ優れた弁護士でも、すべての分野を網羅するのは困難です。近年は労働トラブル専門の弁護士も増えているため、まずは法律事務所に相談してみて下さい。

司法書士に相談するメリットとデメリット

司法書士とは、民法関連の書類作成を行う職業です。土地などの登記・供託に携わるイメージがあるものの、裁判で使用する資料の作成や、成年後見人などの業務も行います。労働トラブルにおいては、140万円以下の簡易裁判であれば、代理人として出廷することが認められています。

司法書士に相談するメリットは、残念ながらありません。なぜなら司法書士は、弁護士の下位互換であり、特定の条件下(認定司法書士かつ140万円以下の簡易裁判など)でしか対応できないからです。また費用面においても、弁護士と司法書士に差異はありません。それぞれ同様に報酬上限が設定されており、「弁護士に依頼するから高額になる」といったケースほぼないためです。権限や業務範囲を考慮しても、未払い賃金の請求は弁護士に相談するのがおすすめです。

社会保険労務士に相談するメリットとデメリット

社会保険労務士は、弁護士の様に裁判の代理人になることはできません。しかし、厚生労働大臣の認定を受けた「特定社会保険労務士」のみ、和解交渉の代理人になることができます。裁判以外でトラブルを解決したい場合、社会保険労務士に相談するのも手です。

また社会保険労務士は、労働関連の法律に精通するプロフェッショナルでもあります。裁判の代理人にはなれない一方、弁護士が社会保険労務士に依頼してタッグを組み、裁判に挑むケースは少なくありません。それだけ労働トラブルの解決においては、頼れる存在といえるでしょう。「裁判沙汰にはしたくない・・・」という方は、社会保険労務士に相談してみて下さい。

少額の場合でも払ってもらえる?

未払い金額が少額でも、会社側に請求することができます。例えば、「アルバイト先を勢いで辞めてしまい、給料を受け取っていない」などのケースが考えられます。そのまま泣き寝入りする方も少なくありませんが、退職後も請求できるので覚えておきましょう。ここでは、5万円程度の未払い賃金を請求する3つの方法をご紹介します。

支払催促

支払催促は、簡易裁判所を通じて支払債催促を行う請求法です。もっとも手軽な方法であり、弁護士や司法書士を雇う必要がありません。費用自体も安価であり、数万円程度の請求時に用いられます。具体的な請求手順は、以下の通りです。

1.簡易裁判所に未払い賃金の請求を伝える
2.指示通りに書類作成・提出
3.会社の対応次第で結果が変わる

会社が請求に従った場合、そのまま賃金を回収可能です。無視した場合は強制執行となるため、結果的に回収することができます。ただし、会社側が異議を申し立てると通常訴訟に発展するため、状況に応じて弁護士や司法書士を雇う必要があるでしょう。

少額訴訟

少額訴訟は、簡易裁判を通じて「60万円以下の未払い賃金を請求する」方法です。一度の審理で結論が出るため、できるだけ早くトラブルを解決したい場合におすすめします。法的な知識も必要なく、支払催促同様に個人でも行える請求法です。具体的な手順は、以下となります。

1.訴状を作成する
2.簡易裁判所に訴状を提出する
3.裁判所側が事実確認や事情聴取を行う
4.数時間以内の判決が出る
5.会社の対応次第で結果が変わる

会社側が異議を申し立てた場合、通常訴訟に発展します。弁護士を雇う必要が出てくるため、予め準備しておくと良いでしょう。

民事調停

民事調停は、裁判所での話し合いによりトラブル解決を目指します。裁判所での手続きが必要となりますが、個人対法人で話し合うよりもスムーズです。民事調停の手順を見ていきましょう。

1.調停申込書を作成し提出
2.定められた調停日に自身・会社・第三者で話し合う
3.合意の有無で結果が変わる

相手側が請求に合意した場合は、そのまま未払い賃金を回収できます。逆に合意しなかった場合、調停不成立で終了するか、裁判所側が別の解決策を提示することになります。あくまでも「話し合い」であるため、勝ち負けをハッキリ付ける裁判とは、性質が異なる点に注意しましょう。

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