「ハインリッヒの法則」でクレームをチャンスに

更新日:2023.03.31ビジネス豆知識

ハインリッヒの法則

安全管理のメソッド「ハインリッヒの法則」は、ビジネスの分野でも広く応用されています。大きな事故の背景には、多数の小さい事故や問題が潜んでいるという考え方がハインリッヒの法則の本質です。かつては日本でも国鉄(現・JR)が、労働事故防止運動の一環として取り入れたことで有名になりました。現在ビジネスの世界では、ハインリッヒの法則がクレーム防止に役立つといわれており、多くの企業でクレームへの対処法に応用されています。ハインリッヒの法則の詳しい説明や、クレームをビジネスチャンスに変える具体的な方法などをご紹介します

ハインリッヒの法則とは?

ハインリッヒの法則とは、アメリカの損害保険会社で働いていたハーバート・ウィリアム・ハインリッヒが導き出した労働災害における経験則のひとつです。「ハインリッヒの災害トライアングル定理」「傷害四角錐」「1:29:300の法則」などと呼ばれることもあります。1件の重大な事故の背後には29件の軽微な事故があり、さらにその背後には300件のヒヤリハットがあるというものです。重大事故・災害を防ぐためには、ヒヤリハットの段階で事故や災害を予測し対処していく必要があると考えられます。

ヒヤリハットとは、一歩間違えたら重大な事故になっていたが、幸い大事にはいたらなかった事象のことです。その名のとおり、ヒヤリとしたりハッとしたりした事例を指します。医療現場や工場など、小さなミスが大きな事故につながる現場には必ずといっていいほどヒヤリハットを啓発する様なポスターが貼られています。これはハインリッヒの法則に基づいて、小さなミス防止を促して大きな事故を未然に防ごうとしているのです。

1931年に発行された「Industrial Accident Prevention-A Scientific Approach」は、災害防止のバイブルとして多くの企業に影響を与え、ハインリッヒは災害防止のグランドファザーと呼ばれる様になりました。

ハインリッヒによると、機械的・物理的不安全状態が原因で起こる事故は全体の10%に過ぎず、人間の不安全行動が原因で起こる事故は88%と、機械の約9倍の頻度で起こっているといいます。そして人間の不安全行動と機械的物理的不安全状態が原因で起こる事故のうち、98%は未然に防ぐことができるとされています。事故を防ぐことができれば傷害はなくなるため、不安全行動と不安全状態をなくせば事故も、それによる傷害もなくなると結論付けています。

顧客からのクレーム防止に応用

ハインリッヒの法則を顧客からのクレームに当てはめると、1件の重大なトラブルから29件のクレームが発生し、その背後には300件の顧客の不満が隠されていることになります。たとえば、商品やサービスに対して「もう二度と買わない」というクレームが1件あったとしましょう。その背後には、「もう買わないとまではいわないが不満がある」というクレームが29件、「クレームをいうまでもないが不満がある」というクレーム予備軍が300件存在しているということになります。この時、「ひとり顧客を失う程度なら大した痛手ではない」と見過ごすか、「今のうちにクレームの原因をチェックしておこう」と改善しようとするかで未来は大きく変わるといえるでしょう。顧客の潜在的な不満を解消することで、クレームそのものを防止できる可能性があるのです。

クレームはビジネスチャンスでもある

ほとんどの顧客は商品に不満があった場合、企業に対して何もいわないままその商品を買うのをやめてしまうといいます。わざわざ時間と手間をかけてクレームを伝えてくれる顧客は非常にありがたい存在だといえるでしょう。また、ハインリッヒの法則に基づいて考えれば、1件のクレームはほかの潜在的なクレームにも気付かせてくれることになります。クレーム対応は非常に神経を使う仕事ですが、自社製品の改善点のヒントを伝えてもらっていると考えれば、感謝の気持ちを持って対応することができるでしょう。

たとえば、商品が故障してしまったというクレームが入ったとして、その原因が本来の使用方法とは異なる使用方法だったとします。この場合、たとえ企業側に非はないとしても、顧客のせいにして流してはいけません。クレームが入ったということは、同じ様な使用方法をしてしまう顧客が何人も存在しているかもしれないと考えられるのです。本来であれば企業側が想定して注意喚起しなければいけない点に、顧客が自ら伝えてくれたと思えば感謝に値するでしょう。

また、クレームを入れる顧客は黙ったまま不満を抱えている顧客よりも、その商品やサービスへの期待値が高い傾向です。改善されるならまた利用したいと考えている方が多いため、問題をすみやかに解決すればするほど顧客の維持につながります。顧客からのクレームに真摯に向き合い、迅速に対応することで顧客の不満を満足に変えることができるのです。

クレームへの対処方法

クレームの内容は商品やサービスによって変わりますが、クレームの対応時は顧客の気持ちになって対処することが大切です。クレーム対応の基本をご紹介します。

お詫び

クレームを受けた場合、まずは顧客に不快な思いを抱かせてしまったことに対して深くお詫びしましょう。クレーム対応は最初の印象が肝心ですから、この段階ではまだどちらに非があるかどうかは追及してはいけません。最初の対応を誤れば、顧客の不満はクレーム以外の部分にまで及んでしまいます。

ヒアリング

お詫びが済んだら、クレームの内容を確認しましょう。たとえこちら側に非がないとしても口を挟まず、顧客の話は最後まで聞きてください。ここでは、顧客の立場になって考えながら対応することが大切です。

解決策・代替え案を提示

話を聞き終えて内容が整理できたら、できるだけはやめに解決策や代替え案を提示しましょう。ここではマニュアル通りの対応よりも、顧客それぞれの気持ちに寄り添った対応が必要になります。

感謝

納得が得られたら、手間と時間をかけて貴重な意見を伝えてくれたことに対して感謝の気持ちを伝えます。もしクレームが商品やサービスの改善に役立った場合は、その旨もあわせて伝えましょう。自分の意見が受け入れられたことで顧客の満足度は高まり、再び利用してくれる確率も高くなります。

クレームは個人というより組織の問題でもある

クレームへの対応は、個人で対応するものではなく組織で対応するものです。クレーム対応時にもっとも心がけたいことは、顧客最優先の対応です。組織全体で情報共有ができていないと、クレーム処理のたらい回しなどの事態が発生し、さらなるクレームの原因になってしまいます。対応者によって顧客の満足度が違うことのないよう、クレームに対する意識や考え方は組織全体で共有する必要があるのです。

ハインリッヒの法則を踏まえてクレームをビジネスチャンスに変える方法などをご紹介しました。1件のクレームの背後には、たくさんの潜在的な問題が隠されていると考えられます。クレームの対処法を間違えば、顧客が大量に離れてしまう可能性がありますが、小さな問題を一つひとつ解決することで、クレームそのものを防ぐことができるかもしれません。ハインリッヒの法則は、クレーム以外にも仕事上の事故やトラブルなどに当てはめて考えることができます。仕事で何か問題が起きた場合は、その背後にある小さな問題の解決からはじめてみてはいかがでしょうか。

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