司法書士の独占業務!相続登記とは?
更新日:2023.04.13業界関連情報遺産相続には様々な種類のものがあります。財産相続が発生するケースで忘れてはならないのが不動産の相続登記です。所有者が変わったことを内外に知らせるためにも、正規の手続きにしたがい名義変更するプロセスが必要です。今回は、司法書士の独占業務である相続登記についてご説明します。
目次
相続登記とは?
不動産の住所と名義を確定させるうえで必要不可欠な「登記」。この手続きにはいくつ種類があり、たとえば「商業登記」は株式会社などを設立する際に必要な登記です。個人でも、新築住宅を建てたり、マンションを購入したりした場合、不動産登記しないと所有者が誰にあるのか特定できません。土地・家などの不動産の所有権と名義が誰なのか、世間に公示するための手続きといえます。
そのなかでも相続登記とは、所有者死亡にともない被相続人から相続人へと名義変更するための申請手続きです。所有者が死亡すれば所有権は自動的に消滅しますが、名義はお役所に出向いて手続きを踏まないと変更できません。相続登記しなければ、その不動産はいつまでも死亡した誰かの名義のままになるのです。
現状、相続登記は義務ではありません。いつまでに申請しなければならないといった期限もありません。国内には、明治時代・大正時代から名義が変わっていない土地がたくさんあるといわれます。名義変更されていない不動産は売買ができないなどの不具合も多く、国レベルで義務化が検討されている段階です。
相続登記のメリット
相続登記をすみやかに行うことで、不動産取引もスムーズに運び、所有不動産が損害を受けた場合も賠償金の支払いに障害がないなどのメリットがあります。
不動産売却、担保設定が可能
相続不動産の所有権は、所有者名義の変更をしてはじめて、「この土地(家)は私のものです」と主張できます。所有権が明らかになったことで、不動産の売買や賃貸利用も可能になりますし、不動産を担保とする融資も受けられます。
損害賠償請求もスムーズに運ぶ
第三者によって不動産が何らかの損害を受けた場合、当該不動産の賠償を求める損害賠償請求がなされます。この時、誰に補償するかといえば、不動産の名義人です。つまり、名義変更しないままだとどんな理由で危害を加えられても賠償を受ける権利がないことを意味します。
相続登記しないことの影響
相続登記をしなくても罪に問われたり、ペナルティを受けたりすることはありません。ただし、名義変更しないことで起こる弊害や不利益などに注意する必要があります。
不動産の取引、担保設定ができない
上段でご説明したメリットの裏返しが、そのままデメリットです。被相続人名義のままの不動産は売却できません。手続き上の不備が原因で取引のチャンスを逃すことになります。また、当該不動産を担保にお金を借りたくても、金融機関は相続登記されていないことを理由に拒否するでしょう。所有者がはっきりしない状態の不動産は権利関係もあいまいで、後々トラブルを招く可能性が高いためです。
長期間放置すると相続人がどんどん増えて手続きが複雑になる
土地などの不動産は、所有者死亡後は法定相続人に継承されます。相続登記していない状態は、法定相続人全員に所有する権利がある状態です。そのまま登記せずに時間が経過し、法定相続人に家族ができれば、権利を主張できる人物がどんどん増えていくことになります。権利関係が複雑になれば手続きの煩雑さも増し、相続人を特定する作業すら困難になるでしょう。
第三者に差し押さえられるケースも
第三者に対し、「この不動産は私のものです」と権利を認めさせるには、相続登記が不可欠です。この効力を、「第三者対抗要件」といいます。つまり相続登記していない状況では、いくら権利があっても第三者に対抗できないわけです。
死亡した父親の都内マンションを、兄弟で相続したとしましょう。マンションには当時から兄が住み、弟は地方で生活基盤を持っていたため、実質的に兄が相続した様な状態でした。そのため登記をせず月日が流れます。ある日、突然マンションを差し押さえる令状が裁判所から届きました。実は弟に借金があり、債権者が兄のマンションに目を付けて差し押さえを申し立てたのでした。兄の不動産でも、登記が済んでいないために法定相続分を継承する権利が弟にはあります。この行為は適法であり、差し押さえ命令に対し兄は逆らうことができません。相続登記しないと、この様なトラブルを招く可能性もあるのです。
手続きの流れ
相続登記の手続きは、「登記事項証明書で所有者確認」→「戸籍を集めて相続人を特定」→「相続登記申請」の流れで進みます。
- 登記事項証明書で所有者確認
所有者が誰なのかの情報は、「登記事項証明書」で確認できます。法務局で交付申請書を提出しましょう。オンラインでの取得も可能です。
- 戸籍を集めて相続人を特定
登記申請では、相続人全員の戸籍が必要です。戸籍をつなげていくことで、法定相続人が誰なのか細かく特定できます。たとえば被相続人と愛人との間に子どもがいても、戸籍をたどることで存在が判明します。
- 相続登記申請
相続登記申請書を作成します。法務局ホームページからテンプレートをダウンロードもしくは手書きでの作成も可能です。記載内容は、主に登記目的と原因、相続人、相続する不動産に関する情報などです。作成後、必要書類を添付して法務局の不動産登記申請窓口に提出します。書類の提出は郵送でも構いませんが、不備があると送り返されます。戸籍が抜けているなどの不備は多く見られるため、窓口で直接確認する方法が無難です。
相続登記に必要な書類は?
法務局に相続登記申請書を提出する際、以下の書類添付が必要です。
戸籍や住民票
相続の事実や相続人を証明する書類です。戸籍謄本や改製原戸籍、除籍謄本などをそろえる必要があります。相続人の住所が分かる住民票も必須です。
固定資産税評価証明書
相続登記では、不動産登録免許税の支払いが義務付けられています。登録免許税の算出で必要なのが固定資産税評価証明書です。
登記事項証明書
土地建物に関するさまざまな情報を明記した書類です。所有者の氏名欄に記載された人物が被相続人であり、不動産所有者ということになります。
司法書士に頼む? 自分で登記?
時間がなかなか取れないと、自分で相続登記するのは難しいかもしれません。そんな時は司法書士への依頼がおすすめです。司法書士に頼む場合と自分で行う場合、それぞれのメリットとデメリットをお伝えします。
司法書士に頼むメリットとデメリット
司法書士に依頼すれば、膨大な書類集めもすべてお任せできます。相続人が何人もいるケースでは戸籍集めが非常に大変で、この時点で挫折する方も少なくないといわれます。また、すべて集めきったとしても法務局で戸籍の抜けを指摘されるケースも。プロにお任せならその様な苦労を一切せずに済むわけです。
唯一、費用がかかる点がデメリットです。相続登記の費用相場は6万~10万円ほど。地域や不動産の価格によって変わります。どの事務所がリーズナブルかリサーチしたうえで依頼しましょう。
自分で登記するメリットとデメリット
コストをできるだけ抑えられるのが最大のメリットです。かかる費用は戸籍や登記事項証明書など必要書類取得の実費のみで済みます。すべての取得に要する費用は高くても数千円程度でしょう。コストパフォーマンスの面で司法書士に頼むより断然お得です。
相続登記の大きなハードルは、集める書類が多いこと。ひとりで実行に移すとなれば、すべての書類を単独で集めなければなりません。苦労して集めた書類も抜けがあればまたやり直しです。何度も法務局や役所を行ったり来たりする事態も予想されます。忙しくて時間がない場合は無理をせず、専門家に任せましょう。
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