障害者雇用における企業の義務や助成金制度
更新日:2022.09.22スタッフブログ障害者雇用は、「障害者の雇用の促進等に関する法律」で定められた制度です。企業には障害者雇用に関する法的義務が課されています。この仕組みを通じて、国は障害を持つ方の安定的な雇用を目指しています。企業が採用活動を行うにあたって、障害者雇用の義務規定やサポート体制について理解しておくことは大切です。今回は、障害者雇用の基礎知識や各種助成・支援制度をご紹介します。
目次
障害者雇用の基礎知識
障害者雇用は、障害者の雇用を促すために生み出された仕組みです。一定の規模がある企業は、この制度にもとづき、障害を持つ方を雇用する体制を整えていくことが求められます。
国が掲げる雇用制度の目的
障害者雇用の主な目的は、障害者の安定した雇用の実現です。個々の希望やスキルに合わせ、さまざまな業種で活躍できる社会の形成を目指しています。国にとって、すべての国民は社会を維持・発展させるうえで大切な一員です。心身に障害があるかどうかは関係なく、誰でも自分の能力に応じ、希望する職場で働く機会を得られることが望ましいと考えられています。
この考えのもと、国が掲げる目的は「共生社会」の創出です。誰もが共生できる社会を具現化するため、こういった雇用の決まりが定められました。現在、民間企業をはじめ、地方公共団体や都道府県教育委員会などにおいて、障害者の雇用が推進されています。
民間企業に対する義務
障害者雇用の仕組みの土台は、「障害者の雇用の促進等に関する法律」(通称「障害者雇用促進法」)です。特に、以下の内容について把握しておきましょう。
障害者の雇用義務
従業員数43.5名以上の企業は、障害者雇用義務の対象となります。全従業員のうち一定以上の割合は障害者を雇用することが求められます。
雇用の分野における差別禁止や合理的配慮の提供義務
障害を理由として不当に差別することは許されません。事業主は、障害を持つ方も十分に能力を発揮できるよう、個別の対応や支援を行いましょう。
障害者職業生活相談員の選任義務
障害者の雇用数が5名以上の場合に適用されます。相談員を選任して、相談・指導を実施しましょう。
障害者雇用に関する届出義務
従業員数43.5名以上の企業は、毎年、障害者の雇用状況をハローワークへ報告することが義務付けられています。また、障害者を解雇しようとする場合はハローワークに届け出る必要があります。
対象者や雇用率の基準
障害者雇用枠の対象者は、各種手帳を保有している方です。身体障害者の場合は「身体障害者手帳」、知的障害者の場合は「療育手帳」、精神障害者の場合は「精神障害者保健福祉手帳」などの種類があります。
厚生労働省によれば、民間企業に課される「障害者の法定雇用率」は全従業員のうち2.3%です。従業員43.5人以上を雇用している会社なら、障害者1人以上の常用雇用義務が生じます。
実際に雇用する際は、上記の各種手帳の有無により「障害者雇用枠」および「障害者の法定雇用率」の適用対象になるかを確認します。また短時間労働では「0.5人」とカウントされるケースがあるため注意が必要です。なお、行政機関の法定雇用率は民間企業と異なります。国・地方公共団体は2.6%、都道府県等教育委員会は2.5%に設定されています。
障害者雇用の手順
民間企業が障害者を雇用する際の大まかな手順は、以下のようなステップに分けられます。
- 1.障害者雇用の制度や目的などに対する理解を深める
- 2.必要に応じてハローワークや地域障害者職業センターなどの支援機関に相談する
- 3.雇用人数や業務内容、配属先の部署などを考慮し、採用計画を立てる
- 4.社内体制を整備し、必要であれば研修も行う
- 5.募集・採用活動を行う
- 6.自社に合う人材を雇用する
- 7.雇用の継続や定着のためにさまざまな取り組みを実施する
無計画のまま早急に雇用すると、トラブルを招くかもしれません。就労現場で体制が整っていない場合、雇用された本人が戸惑うだけでなく、他の従業員が適切に対応できないケースも生じています。採用後のトラブル発生を防ぐには、まず障害者雇用について正しく理解してから、労働環境の整備を含めて計画的に準備することが大切です。
障害者雇用によって企業が得られるメリット
企業が障害者を雇用することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。以下で詳しく見ていきましょう。
メリット1:人材を確保できる
昨今、国内では少子化の流れが止まらず、人手不足が問題視されています。さまざまな企業にとって、労働力の確保が難しくなっているのが現状です。あらゆる立場の人々が大切な人材であり、貴重な戦力になるでしょう。こういった状況において見逃せないのが障害を持つ方の力です。自社に合う人材を雇用し、適切な配置で働いてもらうことで、さらなる生産性向上を目指すこともできるでしょう。
メリット2:各種助成・支援制度を活用できる
日本では、現在、障害者を雇用する企業に向けて各種助成・支援体制を用意しています。企業は職場の労働力不足を解消できるうえ、さまざまなサポートも受けられる状況です。安定した組織運営のために活用できる助成金や支援制度がないか調べてみましょう。
メリット3:業務の効率化につなげられる
障害を持つ方を新規採用する場合、就労環境の整備が必要になるケースがあります。どんな準備が必要になるかは、採用した方の状態や社内の状況に応じて異なります。これまで当たり前であった作業も、何かしらの改善が求められるかもしれません。新規採用した方の負担を減らすための合理的な配慮や、業務手順の調整が行われることもあるでしょう。
このように、障害者雇用は従来の業務方法を見直す絶好の機会となり得ます。長く見過ごされていた問題点が改善できれば、既存の従業員の負担軽減にもつながるでしょう。業務上の無駄が省かれて効率的になれば、職場全体の生産性が向上することも期待できます。
障害者雇用に関する主な助成金・支援制度
近年、障害者雇用の仕組みにもとづき、企業に対する各種の助成金や支援制度が設けられました。以下に、代表的な助成金などをご紹介します。
「トライアル雇用助成金」
トライアル雇用助成金は、ハローワークや民間の職業紹介事業者から紹介された障害者を採用した企業が適用対象になります。そこで一定期間にわたり雇用を継続した際、支給されるシステムです。トライアル雇用によって、求職者の適性やスキルを確認する期間を設けやすい点が魅力といえます。
助成金の種類は、勤務時間によって「障害者トライアルコース」と「障害者短時間トライアルコース」の2つに分けられます。前者の雇用期間は、原則3カ月です。一方、後者は個々の事情に考慮した短時間の雇用から始められます。
「キャリアアップ助成金」
「キャリアアップ助成金」は、企業による非正規雇用労働者のキャリアアップを促進するための制度です。この制度の場合、従業員の正規雇用化や処遇改善に取り組むと助成金を受け取れます。障害者正社員コースなら、所定の条件を満たすと年間に33万~120万円が支給されます。
当該コースの支給条件は、以下の2つです。
- 有期雇用の障害者を正規雇用労働者(多様な正社員を含む)または無期雇用労働者に転換する場合
- 無期雇用の障害者を正規雇用労働者に転換する場合
上記のいずれかの条件を継続的に行った際、助成金を受け取ることが可能です。条件に記載してある「多様な正社員」は、「一般的な正社員に比べて、勤務地・勤務時間・職務内容などが限定的な正社員」を意味します。
また、キャリアアップ管理者の設置やキャリアアップ計画書の作成・提出も必須条件のひとつです。これら以外にも、「特定求職者雇用開発助成金」や「在宅就業障害者特例調整金」などの助成金や支援制度があります。いずれも多彩なサポートを受けられるので、詳細についてチェックしておくことをおすすめします。
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