土地家屋調査士とはどういった仕事?

更新日:2023.03.15スタッフブログ

土地家屋調査士

法務省を監督官庁とする国家資格のひとつに、「土地家屋調査士」があります。法務省といえば、弁護士や司法書士といった“法律の専門家”を認定する機関です。それにもかかわらず、土地家屋調査士の認知度は、決して高くありません。ここでは、土地家屋調査士の特徴や主な業務内容、試験内容についてご紹介します

土地家屋調査士とは?

土地家屋調査士とは、不動産における「表題登記」と「測量」を担う専門家です。土地・不動産の登記には、その大きさや形を明らかにする表題登記と、権利関係を証明する「権利登記」の2種類で構成されます。

表題登記が土地家屋調査士の専門分野であり、第三者(例:土地の所有者)の不動産取引における代理申請が認められています。一方、権利登記の代理手続きが認められているのは、司法書士です。権利関係の登記に関しては、土地家屋調査士の対象業務となりません。土地の境界特定に必要な測量も、土地家屋調査士の仕事です。

土地・建物が「どこからどこまでが所有者のものなのか」「どの様な状況にあるのか」を明確にします。なお、土地家屋調査士は、司法書士などと同じ法務省が認定する国家資格です。知名度は高くありませんが、不動産取引やマイホームの新築時などでお世話になる専門家です。

土地家屋調査士の業務内容

土地家屋調査士の具体的な業務内容をご紹介します。表題登記と測量を中心に、以下の様な業務に取り組みます。

土地や建物の測量

土地や建物の大きさや境界特定は、表題登記に必要な情報です。土地家屋調査士には、測量によりこれらの情報の調査が認められています。ただし、「※土地の分筆」では業務内容が異なります。土地の文筆の場合、公的な地図や既存の登記書類を確認し、現地調査に赴きます。

続いて登記書類から土地の境界線を特定しますが、明確でない場合は周辺調査を行い、測量します。測量は土地家屋調査士の主な業務ですが、常に必要になるとは限りません。

※土地の分筆・・・登記上はひとつの土地を法的に分割すること。筆界が明確でない土地の分割は認められていない。

表題登記の申請手続き(代理)

土地家屋調査士は、不動産所有者などからの依頼を受けて表題登記の代理申請手続きが行えます。一般的に不動産の表題登記は、所有者本人による申請も可能です。しかし、申請には高度な専門知識が求められるため、土地家屋調査士に依頼するのが一般的です。

具体的な作業例でいうと、「床面積求積図から各階平面図を作成する」などが挙げられます。いわゆる図面作成ですが、これを専門知識なしで行うのは困難です。土地家屋調査士に依頼することで、CADによる図面作成から法務局への届け出を一任できます。

表題登記の審査請求手続き(代理)

申請した表題登記は、地方法務局の登記官が受理します。しかしながら、土地の境界線の関係から、受理されないこともあります。境界特定などに問題がない場合、土地家屋調査士は法務局に対して不服を申し立てることが可能です。これを「表題登記の代理申請手続き」といい、土地家屋調査士が代理で行えます。なお、申請した表題登記の却下は、頻繁に起こることではありません。土地家屋調査士の業務割合からすれば、低い部類に入ります。

境界特定の手続き(代理)

所有者の土地と、隣りの土地の境界線を「筆界」といいます。筆界の明確にするための手続きを「境界特定の手続き」といい、土地家屋調査士は代理申請が可能です。土地家屋調査士が測量によって筆界の位置を判断し、法務局に申請します。なぜなら、土地や建物によって筆界が不明確なことがあるからです。

主な原因として、筆界を示す杭がなくなる、書類作成のミス、測量の不備などが考えられます。もし境界特定の手続きを行わない場合、土地区画に関して、近隣住民とトラブルになる恐れがあります。裁判沙汰になるケースも多いため、境界特定の手続きは必要不可欠です。

裁判外紛争解決手続の代理

境界特定の関係からトラブルに発展した場合、当事者間で交渉する「裁判外紛争解決手続(ADR)」を行うことがあります。これは訴訟手続きによらない紛争解決方法の一種です。裁判に発展すると、多大な費用や期間がかかります。一方の裁判外紛争解決手続は、これらを大幅に低減可能です。

裁判外紛争解決手続は、法務大臣が認定した「ADR認定土地家屋調査士」のみ請け負うことができます。弁護士との共同受任となりますが、境界特定のプロフェッショナルを味方に付けて、交渉の席に付けるのがメリットです。

土地家屋調査士の試験内容

ここでは、土地家屋調査士の試験内容や合格率についてご紹介します。試験は法務大臣が行い、毎年10月に筆記試験が、翌年1月に後述試験が実施されます。受験資格に制限はなく、誰でも受験可能です。

主な試験内容

土地家屋調査士試験は、大きく分けて3つの試験で構成されます。

□筆記試験(午前の部)
□筆記試験(午後の部)
□口述試験

筆記試験は午前の部、午後の部で出題範囲が異なります。午前の部では、平面測量や作図といった問題が中心です。多肢択一式あるいは記述式で回答します。なお、測量士や測量士補、一級・二級建築士の資格保持者は、午前の部の筆記試験が免除されます。

午後の部では、土地家屋調査士法や不動産登記法などの問題が出されます。加えて民法や関連法案なども出題範囲となります。午後の部に試験免除はなく、受験者全員が受けることになります。口述試験は、筆記試験の3ヶ月後(翌年1月)に実施されます。筆記試験と出題範囲は同様ですが、土地家屋調査士に必要な知識を口頭で出題され、それに答える形式です。なお、筆記試験の合格発表は毎年1月上旬、後述試験は毎年2月中旬となります。

土地家屋調査士試験の合格率

過去5年間に渡る土地家屋調査士試験の合格率は、以下の通りです。

□2018年:9.54%(受験者数4,380人:合格者418人)
□2017年:8.69%(受験者数4,600人:合格者400人)
□2016年:8.82%(受験者数4,568人:合格者403人)
□2015年:8.81%(受験者数4,617人:合格者407人)
□2014年:8.76%(受験者数4,700:合格者412人)

受験者数がほぼ横ばいなのに対し、合格者数および合格率は向上しています。決して簡単な試験ではないため、年々受験者のレベルが上がっていると予測されます。

土地家屋調査士として認められるには

試験に合格したところで、土地家屋調査士を名乗ることはできません。土地家屋調査士会への登録を済ませ、初めて土地家屋調査士として認められます。登録後は、不動産販売会社や不動産管理会社にインハウスで勤めるか、独立開業するかの二択となります。事業会社でキャリアを積んでから独立開業、という流れが一般的です。

測量士や司法書士との違い

土地家屋調査士のメイン業務は、表題登記の代理申請手続きと測量です。これらは測量士および司法書士の業務範囲に近く、混合する人も少なくありません。まず測量士との違いですが、測量士は「測量法」に沿って基本測量し、土地家屋調査士は「土地家屋調査士法」に基づいて一筆地測量を行います。前者は地方公共団体などの官公庁から仕事を請負い、後者は個人から企業まで、幅広いクライアントを持ちます。

司法書士との違いは明白です。司法書士は権利登記の代理手続きを業務範囲とし、土地家屋調査士は表題登記の代理申請手続きを請け負います。一般には知られないものの、それぞれ棲み分けがはっきりとしています。

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