年功序列制度廃止から成果主義へ移行するポイント

更新日:2023.06.02ビジネス豆知識

年功序列から成果主義

年功序列制度は、数十年にわたり国内企業で採用されてきた一定の合理性がある人事システムです。ただ、最近は激しく時代が変化し、不都合な部分が目立ち始めたため、成果主義へ移行する組織が増えています。年功序列制度の廃止を検討しているなら、この機会に何が問題か見直すと良いでしょう。そこで今回は、年功序列制度の概要や問題点、主なメリット・デメリット、成果主義へ移行する時のポイントなどをご紹介します

年功序列制度の概要や問題点

年功序列制度の概要や問題点

年功序列制度は、労働者の年齢に合わせて職場での待遇を変える仕組みです。最近は時代の変化もあり、多くの企業では廃止する流れが強まっています。

年功序列制度とは?

年功序列制度は、労働者の年齢が上がるとともに給与や役職も上昇する人事システムです。この制度のもとでは、主に年齢を判断基準として労働者の待遇を検討します。通常、労働者は年齢を重ねると同時に毎年の給与所得が増え、職場内で課長や部長へと昇進していきます。

戦後しばらく、大半の企業は終身雇用でした。労働者は年齢を重ねるにつれ仕事の知識や技術レベルを向上できたため、この制度には一定の合理性があると見られてきました。ただ、近年は雇用スタイルや働き方の変化もあり、時代のニーズに合わなくなり始めています。

年功序列制度の問題点

従来の年功序列制度が抱える大きな問題は、ビジネスシーンで起きている激しい変化に追いついていない点です。近年、多くの業種では世界規模で経済のグローバル化が著しく進みました。ほとんどの国内企業は、海外企業との競争を避けられない状況に置かれています。年功序列制度は、すぐに業績が認められない傾向から、スピード感のある世界市場での競争には不利と見られています。

世界市場で勝ち残るには、優れた人材の確保が不可欠です。とはいえ国内では、数十年にわたり少子化の流れが止まりません。慢性的な労働力不足のなか人材確保は難しくなっています。そのため、たいていの職場では、年齢に伴い給与を上げるより、採用時に好条件を示すことが求められています。

さらに最近は働き方が多様化し、入社してから間もなく転職する労働者も増えました。以前に比べると企業が終身雇用するケースは減り、かつて評価されていた年功序列制度の合理性は失われつつあります。国内外でビジネスシーンの状況が著しく移り変わるなか、年功序列制度は時代の変化から取り残され始めました。この現状をふまえ、多くの企業は成果主義に注目しています。

年功序列制度と成果主義の違い

年功序列制度と成果主義の違い

年功序列制度と成果主義は、メリットやデメリットに大きな違いが見られます。それぞれの差異を示すと、おおよそ以下の通りです。

年功序列制度のメリット・デメリット

これまで国内企業に広く導入されてきた年功序列制度は、次に挙げるメリットやデメリットが知られています。

主なメリット

  • 年齢は誰にでも共通する要素
  • 給与や昇進を判断するのに面倒がない
  • 終身雇用なら従業員を育てやすい

年齢は、すべての従業員に共通している要素です。給与や昇進について検討する際、性別や国籍などを問わず、誰にでも適用できる判断基準です。終身雇用の場合、長期的な人材育成を計画しやすいところも大きな特徴です。入社時に即戦力として十分な能力を備えていない労働者も、将来性を見込んで採用となるケースは多く見られます。

勤続年数が長くなると企業への愛着は強まり、職場への定着率が高まるメリットもあると考えられています。

主なデメリット

従来型の年功序列制度に伴うデメリットをいくつか示すと、主に以下の3点です。

  • 能力や業績が基本給に反映されにくい
  • 同じ業務内容でも年齢により基本給に差異がある
  • 経済のグローバル化に対応できない

この制度は、給与や役職の基本的な判断基準が年齢です。従業員が一定の年齢に達していないと、優れた能力により仕事で多くの業績を上げても基本給に反映されにくい傾向があります。一方、年齢が高くなると能力や業績に関係なく給与は増えていくのが普通です。この仕組みは、業務内容が同じでも年齢の違いで基本給が異なる事態を生み出しています。

また国際市場では仕事の結果が重視されがちであり、とくに従業員が何歳であるか問われません。その意味で、年齢を重視する年功序列制度は経済のグローバル化にも対応できていないと指摘されています。

成果主義のメリット・デメリット

成果主義は、年功序列制度と異なり従業員の能力や業績を重んじる評価方法です。この特徴は、労働人口が少ないなかでの人材確保につながり、若い従業員のモチベーションが向上するメリットをもたらしています。ただ、成果主義も、いくつかのデメリットを伴います。とりわけ頭を悩ませる問題は、評価基準の設定が簡単とは限らない点です。実際、給与や昇進の仕組みが複雑化するケースは増えています。

それぞれの従業員が結果を求めるあまり、職場のチームワークが低下する事態も発生しがちです。また即座に評価しないと早期退職を招くことがあり、長期の人材育成は難しくなったと指摘されています。これから年功序列制度を成果主義に切り替える時は、それぞれの良し悪しを十分に把握しておく必要があるでしょう。

成果主義へ移行する時のポイント

成果主義へ移行する時のポイント

職場の人事システムを年功序列制度から成果主義へ移行する場合、時間に余裕のある期間設定が大切なポイントです。切り替え作業を急がずに済むと、従業員への説明や問題点の見直しに時間をかけられます。

余裕のある移行期間の設定

年功序列制度から成果主義への移行は、期間設定に余裕があるとトラブルを防ぐのに効果的です。人事システムを短期間で全面的に変更すると、従業員によっては大幅に給与が減るケースも生じます。急激な収入減は、これまで通りの生活が維持しにくくなるトラブルを招きます。

できるだけ従業員の生活への影響を小さくするには、移行時期を数段階に分ける方法が得策です。初年度は成果主義による評価を3割、次年度は5割など段階的に進めると、トラブル防止に効果があります。移行期間を長めに設定すると、社内が新しい人事システムに慌てて慣れる必要もなくなります。

従業員には詳しく状況説明

従業員には、なぜ年功序列制度から成果主義へ移行するのかといった、詳しい状況説明を行います。かつて年功序列制度は、高年齢の従業員に多額の給与所得をもたらしてきました。この点を期待していた若手や中堅の従業員は、成果主義への移行を不利益な変更と不満に感じる可能性があります。

社内からの反発を避けるには、不満を抱いている従業員の同意を得ることが不可欠です。なぜ年功序列制度を廃止するのか事前に詳しく説明すれば、成果主義への移行をスムーズに進めやすくなります。十分な説明のないまま移行すると法律に抵触する恐れもあるため、その意味でも注意する必要があります。

これまでの問題点も見直し

新たに成果主義を導入する際には、これまでの問題について見直すことも大切です。年功序列制度廃止の背景には、相応の問題があったはずです。何も見直さないまま移行しても、根本的な解決には至らないかもしれません。

あらかじめ年功序列制度が抱える問題点を見直したうえで成果主義に移行する目的を明確にすれば、同じ問題を繰り返さずに済むでしょう。ここでも、時間に余裕があると何が問題であったか慎重に検討できます。移行期間は余裕を持って、段階的に設定しておきましょう。

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