定年制のメリット・デメリットや企業側の対応方法
更新日:2024.02.27ビジネス豆知識定年制の問題は、企業を運営する時に考えておきたい検討課題の一つです。とくに近年は少子高齢化の影響もあり、多くの職場は定年制を継続するかどうか判断を迫られています。これから結論を出すのであれば、この制度の種類やメリットを再確認しておいて無駄にはならないでしょう。そこで今回は、定年制の概要、今後も継続した場合のメリット・デメリット、その際に企業が定年退職者に向けて実施できる対応などをご紹介します。
目次
定年制について
定年制は、労働者が一定年齢に達すると雇用契約が終わる仕組みです。日本では、明治時代の終わり頃から一部の企業で導入が始まりました。現在は、いくつかの種類が知られています。
定年制の大まかな種類
定年制の法的な種類は、大まかに分けると定年退職制と定年解雇制の2タイプです。どちらも定年で契約終了になりますが、退職か解雇かの違いが見られます。
定年退職制は、労働者が定年を迎えると企業との契約関係は自動的に終了する制度です。いつ当該年齢になるかは、あらかじめ各々の職場が定めた労働協約や就業規則にもとづき設定されます。
それに対し定年解雇制の場合、企業と交わした雇用契約は自動で終わりません。その名称が示す通り、定年になった労働者が退職する時は職場による解雇の手続きが不可欠です。これらの特徴から、それぞれの仕組みは退職時に解雇の手続きが必要かどうかにより明確な差が生まれます。
定年制の歴史
日本の国内企業で定年制が導入されたのは、様々な分野で近代化が進められた明治時代とされています。一部の大企業が社内の職員層を対象として設置したのが始まりです。その後、導入例は大正時代の第一次世界大戦後から昭和の初め頃にかけて急速に増えていったといわれています。
1935年当時、定年と見なされる年齢は大企業の半分ほどで55歳でした。また現業労働者層の一部は、50歳に設定されています。第二次世界大戦が終わると、1950年前後には国内各地に定年制が広まりました。戦後しばらくは大企業が中心であり、1955年頃から高度経済成長期に入ると中小企業にも浸透していきます。
定年制が抱える問題点
現行の定年制が抱える大きな問題は、職場が人手不足でも労働力の減少を避けられない点です。近年、定年制を導入している国内企業は70%を上回ります。そのうち7割近くは定年になる年齢を一律に定め、80%以上は60歳が定年です。この年齢設定は、従来の年金支給が同年齢から開始されていたことと少なからず関係しています。
しかし国内では、すでに数十年前から少子高齢化の流れが止まりません。そのため定年制が現状のまま続くと、多くの企業で定年退職者が増えるなか新規採用は難しくなり人員の補充が間に合わなくなると予想されています。また、仕事の知識や業務経験の豊かな労働者が次々に職場を去ると、人材育成にも支障が出ると考えられます。このような現状から、国内企業は定年制の見直しを求められているのです。
定年制のメリット・デメリット
いま多くの企業にとって、定年制を継続するかどうかは重要な検討課題です。現行制度の問題点を見直すとしても、メリットだけでなくデメリットも伴うと考えられています。
定年制を継続するメリット
定年制の継続がもたらす主なメリットは、世代交代を進められるところです。さらに従業員がベテランから新人に入れ替わると、人件費も抑えやすくなります。今後も企業が定年制を続けた場合、定年退職者の代わりに新たな人材を補充する余地が生まれます。毎年、一定の割合で新人を採用できれば、社内の空気を定期的に変えられるでしょう。
一定期間ごとの従業員の入れ替えは、人件費の軽減にも有効です。たいてい勤続年数の長いベテランは、給与も高くなります。一方、これまで業務経験のない新人の初任給は低く設定できるため、人件費の節減につながります。
また若い労働力は、健康面の強さも大きな魅力の一つです。定年に達した高齢者に比べると全般的に運動能力や免疫力が高く、通勤中にケガする可能性や病気にかかるリスクは低いと見込まれます。以上のメリットをふまえると、まだ社会人経験のない若者であっても、高齢で退職する労働者の代わりに採用する意味は小さくないでしょう。
定年制に伴うデメリット
定年制を継続した場合に懸念される大きなデメリットは、職場が人手不足に見舞われるリスクの高さです。さらに、優れたスキルが失われる可能性もあります。現在の労働市場は、長年の少子高齢化により多くの分野で人員確保が容易でない状況です。世代交代を望んでも、定年退職する人数に見合うだけの新人を採用できる見込みは薄いと予想されています。
また、人員補充が間に合わないままベテランが職場を去った場合、優れたスキルが継承されないかもしれません。残された従業員の知識や技術がベテランのレベルに達していなければ、後々に新人が入っても上手に伝えられない可能性があります。
職場によっては、高齢になった労働者のモチベーション低下も悩みの種です。これまで一生懸命に働いてきた従業員も、定年が近づくと仕事に対する意欲が徐々に低くなる傾向にあります。そのため将来的に定年制を継続もしくは廃止する際は、いずれを選択するとしてもメリットとデメリットの双方について十分に検討する必要があると考えられます。
定年退職者に向けた対応
企業が定年制を続ける場合、人手不足などの問題が懸念されるなら定年退職者に配慮した対応を実施するとよいでしょう。具体的な選択肢としては、継続雇用やフリーランスとして新たに契約する方法があります。
継続雇用
継続雇用は、定年退職した従業員を再雇用あるいは勤務延長する形式で雇い続ける方法です。まず再雇用の場合、企業は定年になった労働者に退職してもらってから改めて雇用するパターンを指します。一方の勤務延長は、文字通り退職の手続きなしに雇用契約を引き延ばす方式です。
数年前に「高年齢者雇用安定法」が改正され、企業は従業員の希望があれば65歳まで雇用機会を確保する義務が生じました。人事院の調査によると、継続雇用制度を導入した職場の約9割が再雇用制度のみ実施しています。定年退職者にとっては、再雇用になると慣れ親しんだ職場で働けるうえ、退職後に仕事を探す手間も省けるメリットがあります。
フリーランス契約
フリーランス契約は、継続雇用と異なり退職した従業員がフリーの立場で企業と契約する方法です。この場合、あくまで定年退職者は独立した事業者として活動を展開します。これまでと同じ職場で退職前と変わらず働くことになっても、肩書のうえでは業務契約を交わした企業に在籍しません。
独立した事業者は、社内に所属する従業員と異なり企業とは対等な関係です。仕事を依頼された際、いくらで契約を結ぶか交渉できます。採用時に給与条件などが決められているわけではなく、商談であれば自分の希望を反映しやすくなります。
定年退職に限らず、新規に起業した方の多くは、仕事内容に特技や趣味を活かしているところも特徴的です。また、企業には退職者に再就職の道を提案する選択肢もあります。新たな職場への転職も、フリーランスと同じく労働者が定年になってから自分好みの仕事を探せるチャンスといえるでしょう。
これから定年を迎える従業員が別の業界にチャレンジしたいと考えているなら、継続雇用する代わりに再就職を促すのもおすすめです。
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