マーケティングにおけるカスタマージャーニー
更新日:2023.03.15ビジネス豆知識近年のマーケティング分野において、「カスタマージャーニー」の重要性が増しています。カスタマージャーニーとは、顧客の動向や心理を“見える化”し、マーケティング施策に活かす考え方です。「ペルソナ」と似て非なるものですが、「One to Oneマーケティング」が重視される今日において、欠かせないものとなっています。本記事では、カスタマージャーニーの基礎知識とメリットに加え、具体的な作り方や注意点を解説します。
カスタマージャーニーとは?
カスタマージャーニーとは、顧客の心理や購買行動を「ジャーニー(旅)」に例えた考え方、あるいはフレームワークです。基本的には、顧客が自社製品やサービスを知り、他社製品と良し悪しを比較し、購入するまでにいたる「心理」「思考」「行動」を図示化していきます。
これを「カスタマージャーニーマップ」といい、マーケティング施策の一環で作成する企業が増えています。カスタマージャーニーの本質は、顧客の購買行動を「点」ではなく「線」で追うことです。例えば、打ち出した施策により「コンバージョンが増えた」「サイト訪問数が増えたなどのリアクション(点)に満足していては、いずれ頭打ちが来ます。「点」にこだわるのではなく、「なぜこのタイミングで商品を購入しようと思ったのか?」「なぜサイトを訪問しようと思ったのか?」と、顧客がリアクションを起こした背景(線)にフォーカスすることが大切です。
これにより、「どの顧客」に「どのようなタイミング」で、「どのような情報を提供すべきか」を“見える化”できます。カスタマージャーニーは、企画立案やコンテンツの運営方針を決める指針となります。一般的なペルソナ設定よりも深く、精度の高い顧客分析が可能となります。
カスタマージャーニーマップを作る6つのステップ
ここでは、カスタマージャーニーマップの作り方を解説します。
1.ペルソナ設定
まずは対象となるペルソナを明確にします。ペルソナとは、自社製品やサービスを購入する「理想の顧客モデル」であり、それを実在しそうな人物像に当てはめてデザインします。マーケティングの基本であるため、すでに作成済みの企業も多いのではないでしょうか。
2.ゴールの定義
ペルソナが決まったら、カスタマージャーニーマップのゴールを定義します。「新規顧客の開拓」や「リピーター購入」など、どの範囲でどれだけの成果を上げたらゴールなのか明確にしましょう。最終目的によって、集めたり分析したりする情報が変わってきます。
3.カスタマージャーニーマップのフレームを定義する
カスタマージャーニーマップにマッピングするフレームを定義します。一般的には、「認知」「比較」「検討」「興味喚起」「購入」などを横軸の購入プロセスに設定します。縦軸には、「行動」「タッチポイント」「思考」「心理」「感情」などを設定し、次のステップで課題や施策をマッピングしていきます。
4.顧客情報を収集・分析する
フレーム設定が完了したら、情報収集に移ります。社内の顧客情報を筆頭に、データ分析をはじめとする定量調査、ユーザーテストなどの定性調査、街頭でのユーザーインタビューの結果を収集します。顧客が法人であれば、サービス満足度調査やカスタマーサポートの対応履歴、展示会やセミナーで収集したアンケート調査結果などが参考になるでしょう。情報不足を感じる場合、改めて市場や顧客動向を調査したり、顧客インタビューを実施したりと、さらに情報を収集します。
5.カスタマージャーニーマップにマッピングする
予め設定したフレームに集めた情報をマッピングします。「心理」「行動」「感情」といったフレームに情報を当てはめ、顧客が製品の購入に至るまでの背景を探ります。その際、ひとりの担当者が作業を進めるのはおすすめしません。さまざまな部署や役職のメンバーを集め、ワークショップ形式で進めるのが理想です。
マーケターひとりがマッピング作業を進めた場合、顧客の動機付けに偏りが生じやすくなります。よって経営陣やマーケター、エンジニア、カスタマーサポート、外部パートナーなど、多角的な意見を出せるメンバーで作業を進めると、精度の高いカスタマージャーニーマップに仕上がります。
6.カスタマージャーニーを完成させる
完成したマップをもとに、グループワークで情報整理を進めます。「思考」「心理」「感情」などを一連のストーリーとして結び付け、顧客が検討〜購入に至るカスタマージャーニーを明確にします。テキストのみで情報整理するのも良いですが、そこにイラストを沿えると、視覚的に分かりやすくなるでしょう。
カスタマージャーニーを作成する3つのメリット
カスタマージャーニーを作成するメリットは、「One to Oneマーケティングの実現」「顧客目線での発想が可能となる」「マーケティング施策の精度が高まる」の3つです。それぞれ詳しくお話します。
1.One to Oneマーケティングの実現
インターネットやスマートフォンの普及により、顧客の購買行動が複雑化しています。それにともない、今日のマーケティング分野では、一人ひとりの顧客にフォーカスした「One to Oneマーケティング」が重視されています。「One to Oneマーケティング」の実現には、顧客動向・心理を時系列で“見える化”した、カスタマージャーニーマップが欠かせません。これをもとに顧客一人ひとりの動きを予測し、適切なタイミングで自社製品やサービスをアプローチできる様になります。
2.顧客目線での発想が可能となる
カスタマージャーニーを作成することで、顧客目線でのマーケティング施策を展開できる様になります。一般的なマーケティング部門では、Web担当、マス広告担当、販促担当、店舗接客担当という具合に、部門別で役割分担がされています。
しかし、それぞれの担当者が自身の役割から施策立案を行うため、非・顧客目線の発想にまとまりがちです。担当者全員がカスタマージャーニーへの理解を深めれば、自身の担当領域で顧客のニーズにマッチした施策立案を行う様になります。さらに担当者間のカスタマージャーニーの認識共有が進めば、部署内での連携がよりスムーズになるでしょう。
3.マーケティング施策の精度が高まる
カスタマージャーニーの存在により、マーケティング施策の精度が高まります。例えば、自社にメール配信システムを導入し、既存顧客向けのメールマガジンを定期配信するとします。カスタマージャーニーの理解が進んでいれば、いつ顧客がメールを開封するのか、どの様なコンテンツを好むのかが分かるはずです。それをもとに企画立案・検討することで、より顧客のニーズにマッチしたコンテンツを配信できるでしょう。
カスタマージャーニーを作成する注意点
カスタマージャーニーを作成する際には、ワークショップ形式かつファクトベースでマッピングすることが大切です。先述した通り、担当者ひとりでマッピング作業を行うと、顧客の動機付けなどに偏りが生じます。担当者の願望を反映し過ぎるため、マッピング作業はワークショップ形式で行いましょう。
また、実際の調査から得たファクトベースの情報をマッピングするのが基本です。事実確認が取れない情報をマッピングした場合、カスタマージャーニーの精度が下がります。情報のエビデンスが不足すると感じたならば、追加調査を行ったり、仮説検証ステップを挟んだりしましょう。
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