生産性を向上「サイコロジカル・セーフティー」

更新日:2023.03.31ビジネス豆知識

それぞれの心理的安全性(サイコロジカル・セーフティー)

職場の雰囲気や人間関係は、業務の効率や生産性に大きく影響します。現在、仕事で思う様な成果が上げられていないのは、職場の心理的安全性が担保されていないからかもしれません。今回は、Googleが提唱した心理的安全性について、概要やメリット、不足した場合の弊害もご紹介します

心理的安全性(サイコロジカル・セーフティー)とは?

心理的安全性とは、「psychological safety」という英単語を和訳したもので、会社やチームなどの組織でメンバー一人ひとりが自分の思ったことを発言できる、自分らしく働くことができる雰囲気や環境を指します。
アメリカのGoogle社が2012年から取り組んだ研究結果として発表したもので、同社が心理的安全性が担保されている状態を「生産性向上のカギになる」と結論付けたことから注目を集めました。
心理的安全性を確保して生産性を向上させることは、超高齢化社会や生産年齢人口の減少などの問題に直面している日本の企業にとって、今後欠かせない視点になるはずです。

日本人と心理的安全性

日本人の国民性は、「おとなしい」「温厚」「周りに合わせる」「気を使える」などと表現されることがあります。この国民性は、仕事のさまざまな場面でプラスに働くでしょう。しかし、周りの目を気にしすぎるあまり、自分の意見を押し通すことができず心理的安全性を確保しづらいという一面も持ち合わせています。心理的安全性の担保は、日本人の国民性の良い面を活かしつつ悪い面を取り除くために、日本企業に課せられた重要な課題です。

心理的安全性不足に伴う4つの弊害

心理的安全性が不足している方の中には、4つの不安が渦巻いているといわれています。その結果、満足のいくパフォーマンスを発揮できないことにもなりかねません。

無知だと思われる不安(Ignorant)

心理的安全性が不足していると、疑問や質問が浮かんでも「こんなことも分からないのか」と思われることを心配し、口に出せなくなってしまいます。分からないことをそのままにして進めば、いつか問題に直面するのは想像に難くありません。

無能だと思われる不安(Incompetent)

心理的安全性が不足していると、「こんなこともできないのか」と思われるのを防ぐために、ミスや間違いを隠ぺいしようとします。後々になって大きな問題となるケースも少なくありません。

邪魔だと思われる不安(Intrusive)

心理的安全性の不足によって、新しいアイデアやヒントが浮かんでも「邪魔だと思われるかもしれない」と考えてしまい、自分の意見を述べられなくなることがあります。既存の手段や結果にとらわれていては、生産性の向上は望めません。

ネガティブだと思われる不安(Negative)

建設的な指摘であっても、心理的安全性が不足しているチームでは「あの人は否定ばかりだ」と思われないために、否定的な発言を控えてしまいます。間違った部分を指摘し改善できなければ、お客様やクライアントからの信頼は得られません。

心理的安全性が企業側にもたらすメリット

メンバー一人ひとりの心理的安全性が確保されることで、企業側にも大きなメリットがあります。

生産性の向上

心理的安全性が高まると、メンバーが充実した環境で業務に集中できるため、おのずと作業効率が上がり生産性も向上します。生産性が向上することで短い時間で利益を上げられ、残った時間で新たなイノベーションが生まれることもあるでしょう。事業の拡大にも一役買ってくれるかもしれません。

円滑なコミュニケーションの推進

心理的安全性が担保されると、自分の意見や主張をはっきりと伝えられ、メンバー間のコミュニケーションがさらに円滑に進みます。コミュニケーションが取りやすくなれば、「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)の徹底」「目的意識の共通化」「建設的な議論に基づく学習」などが可能になり、よりレベルの高い組織やチームになるでしょう。

企業リスクの低下

心理的安全性が担保された環境で仕事をしているメンバーは、「ここで仕事をし続けたい」「もっとチャレンジしたい」と考える様になります。その結果、優秀な人材が流出するのを防ぎ、企業リスクを低下させます。また、自分らしく働いているメンバーの姿を見て新たに優秀な人材が入ってくることも増えるでしょう。

心理的安全性がメンバーにもたらすメリット

心理的安全性が高まることで、企業側だけでなくメンバーにも大きな影響があります。

QOL(Quality of Life)の向上

QOLの向上は、より豊かな人生を送るために欠かせない視点です。心理的安全性が高まることで、仕事におけるストレスが格段に減り、QOLの向上を見込めます。仕事が順調にいくことでプライベートも充実するかもしれません。

メンタルヘルスの安定

心理的安全性が担保されることで、メンバー間の人間関係で悩むことが少なくなり、メンタルヘルスの安定につながります。精神的に安定することで集中して業務に取り組むことができ、パフォーマンスの向上も期待できます。

仕事のやりがいを感じられる

現代人が仕事を選ぶうえで大切にしている指標のひとつが、仕事の「やりがい」です。どれだけ給与が満足のいくものでも、やりがいを感じられなければ仕事に対するモチベーションは上がりません。心理的安全性が高まることで、自分の持つポテンシャルを最大限に発揮でき、仕事のやりがいも存分に感じられるはずです。

心理的安全性を高める方法

上記の様に心理的安全性を確保することで多くのメリットを享受できる一方、取り組み方を間違えると逆効果になりかねません。ここでは、心理的安全性を高めて自分らしく働くための環境を整える方法をご紹介します。

メンバー同士で対等な関係を構築する

メンバー間の関係に格差があればあるほど、立場が下の者は発言しにくくなり、結果的に心理的安全性が担保されにくい環境となります。組織に属している以上、ある程度の上下関係は生じますが、同じチームとして活動する限りは対等な関係であることをリーダーが積極的に唱えていくことが大切です。

発言機会を均等に与える

チームの中には、自ら積極的に発言できる方とできない方がいるはずです。しかし、より生産性を向上させるためには、どちらの意見にも耳を傾ける必要があります。発言機会の少ない人の意見も吸い上げるために、リーダーが各メンバーに問いかけを行い、均等に発言機会を与えましょう。発言を時間で区切ることで、より平等な環境が構築できます。

アイスブレイクの活用

張り詰めた空気を打破し、場を和ませる様な言動をすることを「アイスブレイク」と呼びます。特に、チーム結成当初や大きなプロジェクトに取り掛かる前などは緊張感も高まっているため、より高い効果が期待できます。
上司やリーダーなど、上の立場の方がアイスブレイクを行うことで、チーム全体の心理的安全性を高められるでしょう。

心理的安全性を高める際の注意点

心理的安全性を高めるために行動した結果、メンバー間で切磋琢磨することがなくなり、成長の見込めないチームになってしまう可能性があります。心理的安全性を確保するためには、以下の2点に注意して行動しましょう。

馴れ合いの関係にならない

心理的安全性が保たれることでメンバーはリラックスして仕事に臨めます。しかし、その状態は一歩間違えると「馴れ合いの関係」にもなりかねません。心理的安全性が確保された職場で働くことと、馴れ合いの関係でダラダラと働くことは根本的に異なります。
適切な指示やフォローがあるからこそ、自分の持つポテンシャルを最大限発揮し、自分らしく働くことができるのです。

上司としての注意や指示は忘れない

上司の中には、心理的安全性を確保するために部下への注意や指示に消極的になる方もいるかもしれません。しかし、適切な注意や指示がされなければ、部下は能力を満足に発揮できず、時には間違った方向に進んでしまいます。あくまで部下の気持ちや立場を尊重しつつ、適切なタイミングで注意や指示も行いましょう。

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