繰下げ申出みなし制度とは?利用に際する注意点

更新日:2023.03.03スタッフブログ

繰下げ申出みなし制度とは?利用に際する注意点

現在、公的老齢年金では、受給開始時期を本来の65歳より遅らせる「繰下げ受給」が選択可能です。2023年4月1日から「繰下げ申出みなし制度」が導入されると、年金の請求時に繰下げ受給を申請しなくても、受給時期を遅らせた分の年金が受給額に加算されます。この制度について理解しておくと、年金請求時の正確な受給額を把握するのに役立つでしょう。そこで今回は、繰下げ申出みなし制度の仕組みや注意点をご紹介します

繰下げ申出みなし制度の概要

繰下げ申出みなし制度の概要

繰下げ申出みなし制度は、70歳以降(80歳未満)に公的老齢年金を請求した時点で、繰下げ受給を選択しない場合に「5年前に申出があった」と見なされる仕組みです。以下では、繰下げ受給の内容や新たに導入される理由をご紹介します

繰下げ受給の内容

繰下げ受給とは、公的老齢年金の受給が開始される時期を通常の受給時期より遅らせることです。現在、公的老齢年金の受給は、法的に65歳から始まるのが基本です。通常より受給時期を早める場合は、「繰上げ受給」と呼ばれます。繰上げ受給を申請すると、60歳から年金を受け取れます。

それに対し、受給時期を基本の65歳より遅らせるケースが繰下げ受給です。かつては70歳を限度に認められていましたが、2022年4月の法改正で適用範囲が75歳まで拡大されました。繰下げ受給の適用範囲が75歳に広がったため、2023年4月から繰下げ受給の申出が5年前にあったと見なされた場合は、80歳までに受給申請すれば80歳-5年=75歳までの年金を受け取れるようになります。

新制度が導入される理由

2023年4月から新たに繰下げ申出みなし制度が導入される理由は、現行法では70歳以降に繰下げ受給を選択せずに年金を請求すると、繰下げ増額が適用されないためです。2022年の法改正に伴い、現在は70歳を過ぎてからの繰下げ受給による年金請求が可能になりました。ただし現行法のままでは、請求時に繰下げ受給を選択しないと5年以上前の年金を受け取る権利が時効により消失します。

この法的な問題点を解消する仕組みが、2023年4月から導入予定の繰下げ申出みなし制度です。この新制度では、70歳以降の年金請求で繰下げ受給を選ばなかった時に5年前の申請があったと見なされ、5年前の年金から受け取れる権利が発生します。新制度の導入後は70歳以降で年金を請求した時に5年前の受給資格が認められ、年金の受給額は現行法より多くなります。

なお日本年金機構によると、2022年4月施行の改正法の適用対象は、2022年3月31日時点で70歳に達していない方(1952年4月2日以降生まれ)、または年金の受給権を取得してから5年が経過していない場合です。

繰下げ申出みなし制度のメリット

繰下げ申出みなし制度のメリット

2023年4月導入の繰下げ申出みなし制度がもたらす主なメリットは、75歳以降に年金を請求した場合に5年前からの受給額が追加される点です。以下では、実際の計算方法や75歳以降の受給者にとってのメリットをご紹介します

現行法による計算

現行法では、65歳を過ぎてから年金を請求した時に繰下げ受給を申請しない場合、請求時より以前の年金が受給額に含まれません。2022年4月施行の改正法によると、繰上げ受給を申請した時に1カ月あたりの受給額が基本額より0.4%減少します。改正前の減額率は0.5%であり、60歳から年金を受け取り始めても月々の受給額は旧法より0.1%増える計算です。

一方、繰下げ受給を申請した場合、1カ月あたりの受給額は0.7%増加します。繰上げ受給と基本通りの受給より年金を受け取れる期間は短くなりますが、月々の受給額は0.7%以上の増額になるメリットがあります。ただし、年金制度には5年の時効があり、現行法のもとで年金の請求時に繰下げ受給を選ばないと5年前までの受給分は受け取れません。

新制度にもとづく計算

繰下げ申出みなし制度は、年金の請求時から5年前に繰下げ受給の申出があったと見なされ、受給額の増額率が計算される仕組みです。

2023年3月31日までは新制度が適用されず、従来通りに受給額が算出されます。71歳で年金請求した場合、同年齢の増加率で算出された金額を請求時から受け取るか、増額なしで時効を過ぎていない66歳の年金から請求する選択肢があります。

新制度では、同じケースで66歳からの5年間と71歳以降の受給額のいずれにも、66歳の増額率を適用できるところが主なメリットです。65歳より受給開始が1年遅れたと見なされ、月々の増加率0.7%×12カ月=8.4%が66歳からの受給額全体に加算されます。

従来と異なり、繰下げ受給を選択しなくても年金を請求した時点からの受給開始か、増額なしで5年前からの受給かを選ぶ必要はありません。5年前の年金から当時の増加率が適用され、これまでよりトータルの受給額は多くなると期待されています。

繰下げ申出みなし制度の注意点

繰下げ申出みなし制度の注意点

繰下げ申出みなし制度は、繰下げ受給を選択した場合と増加率が同じにならない点などに注意が必要です。以下では、受給額の増加率や適用年齢に関する注意点をご紹介します

繰下げ受給を選択した場合との違い

年金の請求時に繰下げ申出があったと見なされた場合、実際に繰下げ受給を選択した場合と増加率の計算方法が異なります。年金請求で繰下げ申出があったと見なされた際、受給額の増加率は本来の受給開始時期から遅れた年月をもとに算出される方式です。

75歳で請求すると繰下げ受給は65歳から5年遅れの70歳と見なされ、増加率は0.7×12カ月×5年=42%になります。

それに対し、年金請求時に繰下げ受給を選択した時の増加率は、受給開始時期から請求時までの年月により算出されます。同じ75歳であれば65歳からの期間は10年間になり、増加率は0.7×12カ月×10年=84%です。

新制度の導入以降は繰下げ受給の選択の有無により増加率が大幅に変わる可能性もあり、気をつける必要があります。

適用年齢に関する注意点

2022年4月の改正法と2023年4月導入の新制度については、それぞれ適用年齢についても注意が不可欠です。公的老齢年金の繰下げ年齢は2022年4月に改正され、現在は65歳に達してから10年後の75歳まで受給資格が延長されました。ただし、2022年3月31日で70歳に達しているか、受給権の取得日から5年が経過している場合は適用対象外です。

また2023年導入の新制度は、1952年4月2日以降生まれで2017年4月1日以降に受給権が発生し、2023年4月1日以降に年金を請求する場合に適用されます。これらの条件を満たせないと、適用対象外になります。さらに新制度の導入後も、繰下げ受給の適用範囲は80歳未満です。80歳になる前日以降に年金を請求すると受給資格は失われるため、年金の請求が認められる正確な日付をしっかりとチェックしておきましょう。

老齢基礎年金と老齢厚生年金との違いにも注意

公的老齢年金のうち、老齢基礎年金と老齢厚生年金にも適用対象の違いがあるため注意が必要です。老齢基礎年金は、受給資格期間が10年以上の場合に、国民年金や厚生年金の加入期間に応じて受給額が算出される年金です。この老齢年金は、国民年金か厚生年金に加入していれば受給権が発生します。

一方、老齢厚生年金は、老齢基礎年金の受給資格があることに加え、厚生年金に加入した期間があると65歳から受け取れる年金です。この老齢年金の受給権は、厚生年金に加入していた場合に認められます。公的老齢年金は、厚生年金の加入期間があれば老齢厚生年金が老齢基礎年金に上乗せされる仕組みです。そのため、適正額の年金を受け取るには、公的年金の加入状況によって老齢年金の受給資格が変わる点も理解しておく必要があると考えられます。

この記事を読まれている方へのオススメ

>>自分の年金はどうなってる?確定拠出年金を知ろう
>>定年制のメリット・デメリットや企業側の対応方法
>>アクティブシニアの特徴やビジネスのポイントは?

Pocket

The following two tabs change content below.
電話代行サービス株式会社では、電話応対のアウトソーシングを検討している方向けに、電話代行やビジネスに関する情報を発信していきます。 電話代行について相談する
お問い合わせ