弁護士の独立開業。立地・資金・手続きについて
更新日:2023.03.17スタッフブログ弁護士資格を取得し、ひとりの弁護士としてある程度経験を積んだ後、意識し始めるのが「開業」して自分の事務所を持つことではないでしょうか。しかし、「立地」や「開業資金」、「開業手続き」など、分からないことも多いはずです。そこで今回は、弁護士の独立開業の際に知っておきたい知識をご紹介します。
目次
弁護士が独立開業するまでの流れ
司法試験に合格し司法修習を終えた弁護士は、法律事務所に就職し実務経験を経た後に、独立開業するのが一般的です。しかし、司法試験制度改革によって弁護士数が増加し、就職口が見つかりにくくなったことから、司法修習修了後すぐに独立する、いわゆる「即独」する方も一定数存在する様です。
しかし、弁護士は経験や実績を頼りに依頼者が集まる職業です。即独する場合は法律事務所に勤めていたこともないため、ほとんど人脈もないでしょう。その状態で独立しても、うまくいく可能性は限りなく低いといえます。
業務内容や給与、福利厚生など満足のいかない部分があったとしても、まずはどこかの法律事務所で一定の経験を積み、人脈づくりをした状態で独立開業するのがおすすめです。
開業準備(1)開業資金について
弁護士として独立開業するには、開業資金を集めなければなりません。自宅で開業する場合は費用を最小限に抑えられますが、問題はテナントを借りて開業するケースです。事務所を開業する場合、最小限に見積もっても以下の費用は必要になるでしょう。
□物件の賃貸保証金
□机やイスなどのオフィス用品
□事務所の内装費
□パソコンやプリンターなどの事務機器
□電話機や周辺設備
□開業後の運転資金
このなかでもとくに費用が高額になる可能性が高いのが、「物件の賃貸保証金」や「事務所の内装費」「開業後の運転資金」です。どれも安く見積もって100万円程度費用が必要になり、開業資金をすべて合計すると数百万円にのぼるケースも珍しくありません。最低でも300万円、最高で1,000万円と考えておきましょう。
開業資金の調達方法
弁護士の開業には数百万円単位の費用が必要になるため、その調達方法が問題です。もっとも良い選択なのは、自己資金ですべてまかなうことです。開業後の利益を借金の返済に回す必要がなくなるため、開業当初売り上げが振るわなくても大きな不安にはなりません。まとまった開業資金を用意するためにも、即独ではなくどこかの事務所に就職するのがおすすめです。
どうしても自分で開業資金を準備できない場合は、銀行や公庫といった金融機関でお金を借りる必要があります。その他にも、日弁連の「弁護士偏在解消のための経済的支援」制度や各自治体の事業ローンなど、開業資金の調達方法は複数あります。
しかし、開業資金を借金した場合、その後の売り上げで返済しなければなりません。一定上の利益を上げ続けなければならないプレッシャーを感じることは覚えておきましょう。
開業準備(2)事務所の場所選び
独立開業する際、事務所をどこにするのかも重要な視点です。事務所はお客様に訪れてもらうこともあるため、立地や交通の便などさまざまな要素を勘案し決定しなければなりません。事務所を選ぶ際に考慮する点は以下の4つです。
□裁判所への交通の便
□郵便局への距離
□依頼人の交通の便
□事業用か住居用か
それぞれについて簡単に解説します。
裁判所への交通の便
弁護士といえば、裁判所に出向いて弁護を行うというイメージが強いでしょう。実際、民事事件でも刑事事件でも裁判所に行くことはあります。しかし、独立当初は裁判所で行ういわゆる「訴訟事件」を担当することは多くありません。裁判所は大きなターミナル駅付近にあることも多く、裁判所への交通の便を考えて事務所を選ぶと家賃が高額になる可能性もあります。独立したばかりのころは、必ずしも重視しなくても良いでしょう。
郵便局への距離
弁護士は、内容証明郵便を出すために郵便局を利用する機会が多いです。24時間対応可能な、本局に近い場所に事務所を構えると便利です。ただ、現在は電子内容証明郵便を利用してパソコンから24時間送信できるため、郵便局にこだわる理由は少なくなっています。
依頼人の交通の便
弁護士は、依頼者あっての仕事のため、依頼人が通いやすい場所がおすすめです。あまり交通の便が悪い場所に事務所を借りると、立地が原因で依頼人が集まらない可能性もあります。ただ、駅から近い物件は賃料が高くなるため注意が必要です。
事業用か居住用か
最後は物件を事業用として借りるか、居住用として借りるかです。事業用として借りることでさまざまな優遇を受けられるものの、敷金や保証金を10カ月分程度納めなければならないデメリットもあります。開業資金をどのくらい準備できるか、お金と相談ということになるでしょう。
開業準備③事務職員の採用について
事務所を開業するとなると、気になるのが事務職員を雇い入れる必要があるかどうかではないでしょうか。人件費は、独立開業した際もっとも負担の大きい固定費となります。そのため、事務職員を採用するか否かは慎重に検討する必要があるでしょう。
事務職員ではなく弁護士を雇う方法もありますが、弁護士が外出した場合に留守電対応となり、ビジネスチャンスを失うリスクがあります。資金に余裕があるなら、事務職員をひとりは確保したいところです。
社会保険への加入について
弁護士が独立開業した場合、事務員を雇うかどうかや、何人雇うのかで社会保険関連の手続きが変わります。以下で簡単にご紹介します。
社会保険事務所に「新規適用届」を提出する
弁護士事務所を開設する際、常時5人以上の従業員を雇用する場合は社会保険に加入しなければなりません。近くの社会保険事務所に「新規適用届」を提出しましょう。
従業員が5人未満で加入する場合は、上記に加えて「任意適用申請書」を提出します。
健康保険や厚生年金に関する手続き
新たに従業員を雇用した場合や退職者が出た場合は、健康保険や厚生年金に関する資格取得・喪失の手続きを行わなければなりません。従業員が安心して働ける環境を作りましょう。
その他弁護士が入っておくと良い保険
弁護士はトラブルに巻き込まれることが多いため、その他にも保険に入っている方は少なくありません。以下では、弁護士協同組合で取り扱っているおすすめの保険をご紹介します。
□弁護士賠償責任保険・・・弁護士が法律上の損害賠償責任を負担した場合の保険
□ロイヤーズマネーガード・・・業務に関わる紙幣や有価証券の輸送中・保管中の損害をカバーする弁護士事務所専用の保険
□弁護士所得補償保険・・・病気や事故で働けなくなったときの所得を補填する保険
□弁護士医療費用保険・・・病気やケガによる入院、手術の際に利用する保険
□弁護士大型補償保険・・・万が一の死亡や高度障害時に、最高3億円が支払われる保険
◆開業にあたっての税務署関連の手続き
弁護士が独立開業する場合、税務署にさまざまな書類を提出しなければなりません。主な書類は以下の通りです。
□所得税関連・・・個人事業の開業届、青色申告承認申請書、所得税の減価償却資産の償却方法の届出書
□源泉所得税関連・・・給与支払事務所等の開設届出書、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
□消費税関連(対象事業者のみ)・・・消費税課税事業者選択届出書、消費税簡易課税制度選択届出書
書類によって提出期限が異なるため、事務所開設後スムーズに仕事が進められる様、事前に準備しておきましょう。
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