進む受動喫煙防止対策。企業が取り組むべきこと
更新日:2023.03.23スタッフブログタバコに含まれる発がん性物質や有害物質の存在が知られて以降、全国的に受動喫煙防止対策への取り組みが広がっています。とくに、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定してから、その取り組みはさらに拡大中です。今回は、受動喫煙に関して設けられた新しいルールを解説したうえで、オフィスや店舗を分煙する際のポイントをご紹介します。
目次
受動喫煙とは?
タバコの煙には2種類あります。喫煙者本人が吸い込む「主流煙」と、タバコから立ち上がり周囲に充満する「副流煙」です。副流煙を意図せず吸い込んでしまうことを「受動喫煙」と呼びます。今、この受動喫煙を防止するべく、さまざまな取り組みがなされています。
受動喫煙の危険性
タバコに有害物質や発がん性物質が含まれることは周知の事実です。とくに、副流煙はニコチンやタール、一酸化炭素などの成分が主流煙と比べて多いといわれており、受動喫煙による健康被害が不安視されています。また、妊婦の方が副流煙を吸い込んでしまうと、お腹の赤ちゃんにも影響を及ぼす点も問題です。国や企業が総力を挙げて、受動喫煙の防止に取り組まなければなりません。
受動喫煙防止に関するルールとは?
受動喫煙による健康被害を防ぐべく、2018年7月には「健康増進法の一部を改正する法律」(以下「改正法」)が成立し、2020年4月1日から全面施行されることになりました。この法律では、喫煙者の「タバコを吸う権利」を認めつつ、望まない受動喫煙を防ぐための取り組みが規定されました。以下では、改正法の中身を中心に、受動喫煙防止に関して設けられた新しいルールをご紹介します。
改正法の3つのポイント
そもそも、改正法の元となる「健康増進法」は、2002年に受動喫煙対策に関する努力義務を求める形で制定されました。制定によって多くの場所で禁煙や分煙の取り組みは広がりましたが、諸外国と比べると対策が十分とはいえません。
そこで、東京オリンピック・パラリンピック大会を2年後に控えた2018年に、健康増進法の一部を改正したのです。改正法のポイントは以下の3つです。
□望まない受動喫煙をなくす
□健康被害の大きい子どもや患者にとくに配慮する
□場所に応じた対策を実施する
この改正法では、今までの健康増進法で「マナー」とされてきた取り組みが「ルール」へと変更されます。つまり、対象企業や施設では、取り組みを怠ると行政指導や罰則を受ける可能性があるのです。改正法は、2020年に向けて順次施行されていくため、はやめの対応が必要不可欠です。
具体的な新ルール
具体的には、改正法によって以下の3つの内容がルール化されます。
□多くの施設で屋内が原則禁煙
□20歳未満の方は喫煙エリアへの立ち入りが禁止
□喫煙ルームがある場合は標識を設置
改正法では、多くの施設や鉄道、飲食店などで屋内が原則禁煙となります。禁止場所で喫煙した個人には罰則も設けられました。また、学校や病院、児童福祉施設、行政機関などの屋内は完全禁煙となり、喫煙ルームを設けることもできません。喫煙エリアについて厳しい制限が加えられたといえるでしょう。
未成年者の受動喫煙による健康被害を防ぐ目的から、20歳未満の方は喫煙エリアへの立ち入りが禁止されます。たとえ従業員であっても立ち入ることはできないため、未成年者の従業員を雇っている企業は注意が必要です。
一方で、喫煙者に対する配慮も改正法では行われています。施設内に喫煙スペースがある場合は、施設の種類に応じた標識の設置が義務化されました。喫煙者のなかには、お店に入ってから「全面禁煙だった・・・」という経験をした方も多いでしょう。改正法によって、店舗の出入り口にある標識を確認するだけで喫煙スペースがあるか分かる様になりました。
施行スケジュール
前述の通り、改正法は2018年7月の成立以降、順次施行されています。具体的な施行スケジュールは以下の通りです。
□2019年1月24日から・・・喫煙する際の周囲の状況への配慮義務
□2019年7月1日から・・・「学校・病院・児童福祉施設等・行政機関の庁舎等」での敷地内禁煙
□2020年4月1日から・・・上記以外すべての施設で原則屋内禁煙
多くの施設では、条件を満たした喫煙スペースを設けた場合は、そのなかでのみ喫煙することが可能です。対象施設を運営する企業は、2020年4月1日の全面施行向けて、速やかに対応する必要があるでしょう。
オフィスや店舗を分煙する際に気をつけるポイント
受動喫煙を防止するために、禁煙や分煙の取り組みは全国に広がっています。しかし、飲食店の様に、全面禁煙とするのは難しい店舗も少なくありません。タバコを吸う方も吸わない方も快適に過ごせる空間を作るには、どんなことに気をつければ良いのでしょうか。以下では、オフィスや店舗を分煙する際に注意するべきポイントをご紹介します。
適切な分煙方法の選択
従業員やお客様にストレスを感じさせない分煙を行うには、場所や施設に応じた分煙方法を選択しなければなりません。具体的には、以下の3つの分煙方法から選ぶことになるでしょう。
□エリアによる分煙
□時間による分煙
□喫煙スペースの設置による分煙
「エリアによる分煙」は、ひとつの店舗の半分を禁煙席、もう半分を喫煙席とする様なケースです。飲食店やカフェなどで多くみられる分煙方法です。腰壁の設置といった簡単な準備で導入できるため、コストを抑えられるというメリットがあります。一方で、タバコの煙が壁や天井をつたって禁煙スペースへと流れる可能性が高く、完全な分煙は難しいでしょう。
「時間による分煙」は、午前中は喫煙可能だが午後から禁煙といった様に、時間ごとに分煙する方法です。「ランチタイムのみ禁煙」といったルールも、時間による分煙のひとつです。喫煙可能時間に関するルールのアナウンスのみ実施できるため、コストはほとんどかかりません。ただ、喫煙スペースと非喫煙者が利用するスペースは同じであるため、禁煙の時間でも非喫煙者が苦痛に感じる可能性があります。禁煙の時間帯には入念な消臭を行うといった配慮が必要です。
「喫煙スペースの設置による分煙」は、基本的にはすべてのスペースを禁煙とし、喫煙所を設けることで一部喫煙可能な場所を作るケースです。喫煙所は個室など専用のスペースをとることも多く、高い分煙効果が得られます。喫煙者も非喫煙者に配慮する必要がないため、快適といえるかもしれません。一方で、新たに喫煙所を設けなければならないケースでは、他の方法と比べて高いコストが必要です。需要が拡大もしくは縮小した場合でも、喫煙所の広さを変更しにくいというデメリットもあります。
排気装置の選定方法
分煙によって新たに喫煙所を設ける場合、排気装置には気を使いたいところです。喫煙者同士が多く集まることで、お互いに副流煙を吸い込むことになり、受動喫煙が頻繁に行われます。影響を最小限に抑えるためにも、排気装置の選定は大切です。
分煙コンサルティングに依頼する
「どうやって分煙したら良いのかわからない」といった分煙に関する質問やアドバイスを行っているのが、「分煙コンサルティング」という職業です。電話やメールでの対応はもちろんのこと、必要に応じて現地訪問も行っています。初めて分煙に取り組む企業や店舗などでは、一度検討してみても良いかもしれません。
禁煙や分煙に関する取り組みは、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、今後もさらに広がっていくと考えられます。今回紹介した改正法を基準に、喫煙者も非喫煙者も快適に過ごせる空間を作り上げましょう。ただし、自治体ごとに条例で別のルールが定められているケースもあるため、事前の確認が必要です。
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