旧姓(旧氏)併記とはどのような制度?

更新日:2023.03.23スタッフブログ

戸籍

2019年11月より、マイナンバーや住民票の「旧姓(旧氏)併記制度(以下、旧姓併記制度)」が施行されました。婚姻や養子縁組、そして離婚などによって姓(氏)を変更する機会は意外に多く、利用を検討する方も多いのではないでしょうか。本記事では、旧姓併記制度の概要やメリット、利用後の生活の変化についてご紹介します

旧姓併記制度とは?

旧姓併記制度の正式名称は、「住民基本台帳法施行令等の一部を改正する政令」となります。2019年4月17日に公布され、11月5日に施行されました。正式名称で捉えると、やや難解な印象を受けるかもしれません。ここでは、同制度がどういったシーンを想定して検討されたものなのかご紹介します。

姓が変わるのはどういった場面?

日常生活において、姓が変わるのはどういった場面でしょうか。まず挙げられるのが、婚姻です。日本には「夫婦同氏の原則」という法律があり、婚姻後は夫婦どちらかの姓へと変更することになります。
養子縁組も同様です。養子縁組を行うことで、養子は養親の姓に変更されます。また離婚や養子縁組の取り消しを行うと、元の姓に戻ります。この様に、姓が変更するシーンは思いのほかあるものです。人によっては生涯のうちに複数回、姓を変更する可能性があります。

姓を変更することによる問題

通常、姓を変更することで発生する不利益はありません。しかし現実は、生活上で困るケースが多いようです。例えば、姓を変更すると身分証明書なども更新することになります。これにより、旧姓を名乗っていた頃と同一人物であることの証明が難しくなります。
日本では、婚姻により女性側が男性側の姓に変更するパターンが多く見られます。しかし、姓を変更すると上記の様な問題が起こることもあり、女性の社会進出を妨げる一因となると考えられています。

新制度によって旧姓が併記されるもの

2019年11月から施行された新制度により、さまざまなところに旧姓を併記することが可能となりました。これは上記の問題を解決するための施策です。具体的には、住民票の写しやマイナンバーカード・通知カード、署名用電子証明書、印鑑登録証明書などに旧姓を併記することができます。これらは身分証明にも使用できますので、姓を変更しても本人確認で困ることはありません。

旧姓併記の申請方法は?

新制度が施行されたからといって、姓を変更した人全員に自動的に旧姓併記が行われるわけではありません。旧姓併記制度を利用するには、国に申請する必要があります。
申請方法は決して難しくありません。必要なものは、運転免許証や保険証などの本人確認書類と通知カード・マインバーカード、戸籍謄本などです。いずれも常に持っているものや役場や市役所などで簡単に取得できるものなので、用意するのにそれほど時間や手間はかかりません。申請は市町村の役場で行うことができます。

旧姓併記制度のメリットは?

この新制度による最大のメリットは、姓を変更したとしても、以前名乗っていた旧姓を公証できることです。旧姓と現在の姓の紐付けが簡単になるため、本人確認時に発生する問題が解消されます。また、姓の変更にともなう金融機関や各種契約などの手続きも、より簡単になることが期待されています。

旧姓併記制度によって生活はどの様に変わる?

旧姓併記制度を利用することによって、日常生活にどの様な変化が訪れるのでしょうか。ここでは、具体例を出しながら同制度による生活面の変化を詳しくご紹介します。

旧姓のはんこで印鑑登録をすることができる?

従来、結婚などで姓が変更になると、これまで使っていた旧姓のはんこは使用できなくなります。よって婚姻の前には、新しいはんこを作るのが一般的でした。しかし、旧姓併記制度の施行に合わせ、旧姓のはんこで印鑑登録が可能となるケースがあります。

印鑑登録に関する条例は、自治体により異なります。各自治体に共通しているのは「印鑑登録できるのは住民票に記載された姓名のはんこ」という点です。以前は住民票に旧姓が記載されていなかったため、印鑑登録ができませんでした。
今回の制度によって、住民票に旧姓が併記されるようになりました。そのため、旧姓のはんこでも印鑑登録ができる可能性あります。ただし、すべての自治体で旧姓での印鑑登録が可能というわけではありません。旧姓のはんこでの印鑑登録を希望する場合、事前に自治体に問い合わせておくと安心です。なお、2019年11月の新制度の施行と同時に、多くの自治体で旧姓での印鑑登録が可能となっています。

従来、姓が変更される前に印鑑登録をしていた場合のみ、自動的に印鑑登録を抹消する自治体がほとんどでした。一方で、新制度の施行と同時に条例を改正し、以前の印鑑登録をそのまま継続できる自治体もあります。旧姓併記の請求を行えば印鑑登録に関する手続きは不要となりますので、一度問い合わせてみましょう。
注意点として、印鑑登録できるはんこは1本だけです。旧姓・新姓の両方を登録することはできません。実際のところ、はんこは縁起物や記念品といった側面があり、旧姓のはんこを使い続けたい方は少なくありません。そういった方にとって、旧姓のはんこを登録できるのは大きなメリットです。

運転免許証やパスポートには旧姓は併記できない?

2019年11月から施行の制度は、住基法の改正に基づいたものです。住民票やマイナンバーカードに旧姓併記できるようになりましたが、運転免許証は対象となっていませんでした。
しかし、1カ月遅れの2019年12月1日より、運転免許証に氏名と旧姓を併記できるようになりました。なお、パスポートに関しては、以前から旧姓の併記は可能です。ますます身分証明が便利になるでしょう。

銀行口座や保険の名義でも旧姓は使用できる?

旧姓での本人確認が可能となったことで、銀行口座や保険名義なども旧姓を使用できる可能性があります。ただし名義の取り扱いについては、各銀行や保険会社によって異なります。確実とはいえませんが、本人確認さえできれば旧姓を名義として利用できる可能性は十分にあります。
また、旧姓を利用できる場合、婚姻などによって姓が変更されても、以前から利用していた銀行口座をそのまま使い続けられます。

旧姓のまま仕事を続けることはできる?就職や転職は可能?

女性の社会進出を妨げる原因のひとつとして、「姓が変わることで仕事に支障が出る」点が挙げられます。今回、旧姓での本人確認が容易になったことで、旧姓のまま仕事を続けたり、就職や転職ができたりするケースが増えると予想されています。つまり結婚して姓が変わっても、旧姓のまま従来通り仕事を続けられるわけです。

ただし、旧姓の使用を認めるか否かは、企業の判断に委ねられます。法的な強制力はありませんので、事前に確認しておくべきでしょう。直近の傾向としては、旧姓併記制度の施行に合わせ、企業側の対応も柔軟になりつつあります。最大の問題だった本人確認の問題も解消されましたので、今後旧姓の使用を認める企業は増加すると考えられます。

まとめ

旧姓併記制度は、姓変更にともなう生活レベルの問題を解決するための施策です。これによって旧姓での本人確認が可能となり、さらに旧姓を使い続けることも可能となります。まだまだ施行されたばかりの制度ということもあり、未だ世間には浸透していませんが、これがきっかけとなって、旧姓の扱いも変化していくことでしょう。

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