男性労働者の育児にかかわる「パタハラ」問題
更新日:2022.12.16スタッフブログ最近は、育児参加する男性が職場で不当に扱われるパタハラが問題化しています。その背景には、「育児は女性の役割」と考える古い固定観念や慢性的な人手不足があります。この問題を防止するには、男性の育児参加に対する理解や子育てを支援する社内体制の整備が必要でしょう。そこで今回は、パタハラの概要や主要原因をふまえ企業で取り組みたい対策などをご紹介します。
目次
パタハラの概要
パタハラは、「パタニティハラスメント」の略称です。男性が育児のため職場で休暇や時短勤務を希望・利用した際、嫌がらせを受けるケースが該当します。以下では、言葉の由来をはじめパタハラの概要を解説します。
言葉の由来
パタニティハラスメントの「パタニティ」は、英語の「paternity」に由来するといわれる言葉です。英語のpaternityは、「父性」や「父系」の意味があります。そこからビジネスの場では、父親として育児に取り組む男性従業員に対して嫌がらせが起きた場合にパタニティハラスメントと表現され始めました。
同様のケースで、女性従業員に対する嫌がらせは「マタハラ(マタニティハラスメント)」です。こちらは「maternity(母性などの意)」に由来し、妊娠・出産した女性が育児休暇や時短勤務を希望・利用した時の嫌がらせを指します。なお国や法令は、パタハラやマタハラを「職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント」と表現しています。
パタハラの現状
近年の調査を見ると、男性による育休の取得率は1割に届かない現状です。また男性が育休を取らない理由は、パタハラが約12%と伝えられました。厚生労働省は、「平成30年度雇用均等基本調査」のなかで男性の育休取得率を発表しています。調査対象は2016年10月~2017年9月の1年間に配偶者が出産した男性のいる事業所であり、2018年10月1日までの育休取得率は8.6%でした。
日本労働組合総連合会は、「男性の家事・育児参加に関する実態調査2019」で育児休暇を取らなかった男性の理由について報告しています。最多の回答は「仕事の代替要員がいない」(47.3%)であり、パタハラは12.6%でした。以上の結果をふまえると男性の育休取得は進んでいない状況にあり、少なくとも1割ほどはパタハラを経験していると判断できます。
パタハラの実例
実際に男性従業員が職場で受けたパワハラの具体例としては、次の5例が知られています。
- 育児のため勤務先の制度を利用したが、申請が認められなかった。
- 勤務先で育児休暇の取得を求めたところ、男性であるとの理由で叱責された。
- 子どもの送迎や看病で早退が続いた際、重要なプロジェクトから外された。
- 育児休暇から現場復帰したが、正当な理由なく仕事が取られ休職を命じられた。
- 育児休暇から復帰した後、会議の時間や懇親会の案内を知らされなくなった。
これらは実例の一部に過ぎず、男女ともに育児休暇を取得する権利があるとの意識はビジネスの場に浸透していないと考えられます。
パタハラの原因
職場でパタハラが起きる主な原因は、育児休暇に対する理解不足です。さらに多くの企業は社内環境の整備が進まず、人手不足が慢性化している影響も大きいといわれています。以下では、パタハラを引き起こす主要原因について解説します。
育児休暇に対する理解不足
育児休暇に対する理解不足は、昔ながらの考え方が根強く残る職場で多く生じているケースです。昔ながらの考え方とは、男性の育児参加を不自然と見なす固定観念を指します。かつて育児は女性の役割と考えられ、男性は子どもを授かっても家庭にとどまらず仕事に出るのが当たり前と認識されていました。
この考え方が根強い職場は、男性が育児休暇を申請・利用しても理解を得るのは難しい状況です。昨今は「育児・介護休業法」について知っている社員が少なくないものの、社内に根づいた風潮は変わりにくくパタハラの発生につながっています。
パタハラを受けたくない男性は育児休暇の取得を控えるケースもあり、古い固定観念は男性の育児参加を妨げていると問題視されています。
社内環境の整備不足
社内環境の整備不足も、職場でパタハラが起きている要因の一つです。この問題に関する意識調査によれば、回答者の半数以上が社内の環境整備は不十分と感じています。2014年1月、日本労働組合総連合会は「パタニティ・ハラスメント(パタハラ)に関する調査」の結果を発表しました。実施期間は2013年12月初頭の6日間、調査対象は20~59歳の男性有職者1,000人です。
発表内容を見ると、「自分の職場は男性も子育てをしながら働ける環境にあると思うか」との質問に51.0%が「あまり・まったくそう思わない」と回答しています。また「どちらともいえない」は27.1%、「非常に・ややそう思う」は21.9%でした。さらに職場の子育て支援制度やフォローの仕組みが機能しているとの回答は約4~8%であり、男性が育児参加しやすい社内環境の整備は十分でないと分かります。
人手不足の慢性化
職場のパタハラは、ビジネスシーンにおける人手不足の慢性化とも無縁ではない問題です。国内では長年にわたり少子化の流れが止まらず、幅広い業種で人材確保に苦労しています。職場の人手が少ないため、風邪や残業続きで体調が優れなくても無理に出勤するケースは珍しくありません。
育児休暇も同様であり、職場の人手が足りず申請しにくい傾向にあるといわれています。先の日本労働組合総連合会による調査では、男性が育児休暇を取らない理由について「仕事の代わりをほかの社員に頼めない」との回答が5割近くに及びました。
これらの状況から、人手不足は理由を問わず休みにくい職場環境を生み出しているといえるでしょう。育児休暇も歓迎されず、申請者や利用者に向けたパタハラが起きていると考えられます。
パタハラ対策
いま企業で取り組んでいただきたいパタハラ対策は、男性の育児参加に対する理解の周知徹底です。男女の区別なく育児休暇が利用しやすい体制を整えたうえ、パタハラ発生時に相談できる窓口の設置も望まれます。以下では、これらの対策を進める時に意識したい点や効果的な方法をご紹介します。
理解の周知徹底
企業が男性の育児参加について理解を周知徹底するには、日頃から研修を実施することが大切です。研修時には、「育児・介護休業法」に関する説明が欠かせません。現行法は、仕事と育児・介護が両立できる労働環境の実現を目指しています。この目的にもとづき、法律上は男女ともに育児休暇を取得する権利が認められています。
そのため男性が育児休暇を申請した際、企業が仕事か育児かの選択を迫るのは法的に誤りです。職場が人手不足でも、上司や同僚は嫌がらせをせず積極的にサポートする姿勢が求められます。研修では以上の点を強調し、多くの職場に根づく古い固定観念を改めることが不可欠です。
社内の体制整備
社内で育児休暇が利用しやすい体制を整える場合、子育て支援の仕組みを構築すると効果的です。仕組みづくりでは、育児休暇を取得できるケースや利用可能な期間について検討します。取得条件は、職場の人手が減っても仕事に支障が出ないレベルで設定するとよいでしょう。
誰かが休暇を取る時は、当人の担当業務を職場内で引き継ぐ体制も必須です。休暇前の引き継ぎがスムーズに済めば、休暇の取得者は職場に迷惑をかけてないか心配せず休めると考えられます。同時に各職場のサポート状況を評価する制度もあると、子育て支援の仕組みは機能しやすくなると期待できます。
ただし子育て支援を進めている企業でも、パタハラが起きないとは限りません。その備えとして、育児参加で嫌がらせを受けた男性が相談できる窓口を設置することは重要です。
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