こんなに違う?日本と海外の働き方
更新日:2023.02.17ビジネス豆知識世界一の単語収録数を誇る「オックスフォード英和辞典」。同英和辞典に収録される単語の一つに、日本語の「Karoushi(過労死)」があります。過労死とは文字通り、働きすぎて命を落とすこと。この衝撃的な言葉の意味に驚き、日本の労働環境に疑問を抱く外国の方は多いといいます。そもそも日本と海外では、職場環境や働き方、待遇にどのような違いがあるのでしょうか?今回は、日本と海外の労働文化の違いや、各国の問題点について考察していきます。
目次
日本とアメリカの労働制度の違い
ここでは、日本と海外主要国における労働制度の特徴をご紹介します。一例として、アメリカを例に解説していきます。日本とアメリカでは、労働環境にどのような違いがあるのでしょうか?
日本の労働制度の特徴
我が国の労働文化の2柱として、「終身雇用制度」と「年功序列型賃金制度」が挙げられます。いずれも高度経済成長期(1950~1960年)に考案・定着した経緯があり、戦後の貧困・混乱を経験した人々にとっては、「生活の安定」が保証された素晴らしい制度でした。しかし、両制度には弱点がありました。いずれも「右肩上がりの経済状況」を前提とするため、ひとたび景気が悪化すると、人件費の関係から「社員を雇い続けるのが難しい状況」になるのです。
1991年に起きたバブル崩壊、2008年のリーマンショックの影響を受け、日本経済は大きく低迷。終身雇用は事実上崩壊し、さらに同制度を前提に成立する年功序列型賃金制度も、いずれは撤廃される可能性があります。このような背景から2000年代後半、日本人の働き方は少しずつ変化してきました。年功序列ではなく、成果主義を打ち出す国内企業の増加。転職市場における人材の流動化、非正規雇用の増加などもあり、ビジネスパーソンの働き方も多様化しています。
アメリカの労働制度の特徴
日本のような「組織主義」ではなく、「個人主義」が根強いアメリカ。同国には、日本の「労働基準法」のような統一的法規制が存在しません。そのために雇用者は、被雇用者ごとに個別の雇用ルールを定め、双方が合意すれば雇用関係が成立する仕組みとなっています。日本との大きな違いとして、アメリカには「随意雇用の原則」が存在します。「随意雇用の原則」とは、雇用者・被雇用者双方がいつ、いかなる理由においても「雇用契約を自由に解除」できる原則を指します。
無論、明らかに不当な理由で解雇された場合、被雇用主はいつ、いかなる理由においても提訴可能です。いかにも自由の国・アメリカらしい制度といえるでしょう。ただし、何もかも自由に決められるわけではありません。残金代や最低賃金は「公正労働基準法(Fair Labor Standards Act)」と呼ばれる法律で定められています。
とりわけ週40時間を超える残業代について雇用主は、基礎賃金の1.5倍以上の割増賃金を支払う義務となっています。日本の場合、残業代は基礎賃金に1.25倍をかけて算出するため、必然的にアメリカの方が、残業代が高くなる傾向です。
日本とアメリカの働き方の違い
次に、日本とアメリカの働き方の違いを、労働時間や有休取得日数・取得率の観点から比較していきます。
日本人の働き方の特徴
日本人の働き方の特徴として、「長すぎる労働時間」と「少なすぎる有給休暇取得率」の2つが挙げられます。未だ日本人の「働き過ぎ問題」は深刻化しており、被雇用者の合意にもとづかない長時間労働が常態化しています。また、世界的にみて有給休暇の取得率が低いのも、日本の特徴です。
大手旅行会社である「エクスペディア」社が実施した「世界19ヶ国有給休暇・国際比較調査2019」によると、有給休暇取得日数および有休取得率は、世界19ヶ国最下位であることが分かりました。
調査では、日本の有給休暇取得日数は10日(平均支給日数は14日)、取得率は50%とのこと。最下位の要因として考えられるのは2つ、日本人の真面目すぎる気質と、有給休暇取得に非協力的な上司の存在です。「日本人が休みを取らない理由」として、1位は「緊急時のために取っておく」、2位は「人手不足」、3位は「仕事する気がないと思われたくない」が挙がりました。有給休暇はいざという時に使う・・・これが日本人の、有給休暇に対する価値観です。
同じく調査では、「上司が有給の取得に協力的」と回答した人の割合を集計。日本は53%で世界19ヶ国最下位でした。気軽に有給休暇を取らせてもらえない上司の存在、あるいは社風が、有給休暇取得率最下位につながる要因と考えられます。
とはいえ、2019年4月に「働き方改革関連法」が施行されて以来、日本の労働環境に変化が生じています。フレックスタイム制やテレワークの導入、育休制度の拡充などを採用マーケティングに活用する企業が増え、結果的に「働きやすい職場」が増えている印象です。
アメリカ人の働き方の特徴
日本人の「働き過ぎ問題」が深刻化しているとお伝えしましたが、アメリカ人は日本人以上に働き者です。「労働政策研究・研修機構」が公表した「データブック国際労働比較2019」によると、日本人就業者における年間平均労働時間は1680時間。対するアメリカは、1786時間でした。
しかも、アメリカは日本と違い、いわゆる「サービス残業」が蔓延していません。良い意味で雇用主・被雇用主ともにドライな関係なので、「お金にならない仕事はやらない」のが普通。労働時間が長くても、相応の対価を得られるため、特に問題視されないのです。
対する日本は、どうでしょうか。年間平均労働時間1680時間の内、一体何時間がサービス残業なのかは、誰も分かりません。企業側の人手不足などを理由に、対価がもらえないのに労働を強いられる・・・。それを“美徳”と考える雇用主がいるのも事実で、労働環境改善に歯止めをかける要因となっています。
一方のアメリカも、労働者を守る「労働基準法」が整備されていたり、終身雇用制度や年功序列賃金制度があったりするわけではありません。「随意雇用の原則」がある以上、日本に比べると「安定した暮らし」は保証されません。現にアメリカでは、今もなお約60万人の路上生活者(ホームレス)がおり、社会問題化しています。さまざまな事情で働きたくても働けない・・・。そんな人たちが、国中にごまんといるのです。
「日本の働き方はおかしい」は本当か?
海外ではたびたび、「日本人の働き方はおかしい」「非効率的だ」と揶揄(やゆ)されます。働きすぎて命を落とす「Karoushi(過労死)」が辞書に収録されるほどですから、事実として日本人の働き方は、「おかしい」と認めざるを得ないでしょう。ただし、日本の労働環境は「働き方改革関連法」の成立とともに、改善され始めています。
高度経済成長期から続いた「労働」への考え方が、今まさに変わろうとしています。「長時間労働の是正」「非正規雇用者における処遇差の解消」「多様な働き方の実現」といった3本柱により、誰もが“フェア(公平)”で働きやすく、適切な「対価」を得られる仕組みが、徐々に実現されていくでしょう。
まとめ
今回はアメリカを例に挙げましたが、労働環境や働き方は国ごとに異なります。たとえば、お隣の国である韓国。「エクスペディア」社の調査によると、韓国の年間平均労働時間は2008時間、平均賃金は日本の約3/4です。あまりメディアでは報じられませんが、日本以上に深刻な労働問題を抱えています。国の数だけ労働制度・労働文化があり、そして労働問題があるのは、揺るがない事実なのです。
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